枯葉剤Agent Orange のベトナム人被害者による裁判の事前ヒアリングが6月18日、米国第二巡回控訴裁判所で行われた。
Dow Chemical、Monsantoのほか、35社の農薬メーカーを相手取って、300万人以上のベトナム人被害者を代表して「ベトナム・Agent Orange/Dioxin 被害者協会」が行った集団訴訟で、これを却下した下級審の決定を不服として控訴したもの。
これら化学会社はベトナム戦争中にagent orange を米軍に供給し、広範なダイオキシン被害をもたらした直接の責任があるとし、補償と浄化、医療検診、支援を求めている。
米軍は1961年から1971年までに南ベトナムの550万エーカーの土地に繰り返し枯葉剤Agent Orangeを散布した。この結果、米軍とベトナム人双方に多くの被害が出ている。
1984年の和解の結果、Dow Chemical、Monsanto など7社は被害を受けた米軍人に対して180百万ドルの補償を行った。米政府も毎年15億ドルの予算で対象者に補償を行っている。
しかし、ベトナム人については全く補償のないままである。
控訴裁のヒアリングでは裁判官は、戦争で使われた毒物が直接人を殺すためではなく、数年後に被害が出たという場合、国際法に違反していないのではないかと発言した。
ナチスが死のキャンプで使ったガスZyklon B の場合はメーカーが有罪となっているが、それとは異なるケースではないかとした。
会社側の弁護士も戦争での毒物の使用で罰せられた前例はなく、判事が本件を取り上げた場合、戦場での意思決定に影響を与えると警告した。イラクでの劣化ウラン弾の使用に触れ、現実の外交に影響を与えるとした。
戦争中に毒物の使用を承認した大統領の責任も問題になるが、原告側は国家主席の免責特権により訴訟の対象としていない。
判事は本件を取り上げるかどうかを数ヶ月かけて決める。取り上げられた場合も判決が出るまでに数年はかかると見られている。
付記
アメリカ側もようやく、この問題で動き出した。
6月22日、1960年代以降初めてベトナム元首として訪米中のNguyen Minh Triet大統領はBush大統領と会見した。
席上、ダイオキシン問題が取り上げられた。Bush大統領は議会が最近、ダイオキシン問題援助の予算を承認したことを伝えた。
また、Ford Foundationがベトナム大統領の訪米に合わせ、「U.S.-Vietnam Dialogue Group on Agent Orange/Dioxin」を立ち上げた。
両国の政治家、科学者、事業家を集め、Agent Orange の人間及び環境に与え続けている影響への具体的対応を行う。
旧米軍基地のダイオキシン除去と周辺住民の健康対策、ダイオキシン関連患者の治療・教育センター、ダイオキシン試験ラボなど、5つの優先度の高い分野を2年間で対応する。
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