ガス用ポリエチレン管・継手に排除措置及び課徴金納付命令

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公正取引委員会は6月29日、ガス用ポリエチレン管及び継手の製造販売業者に対し、排除措置命令及び課徴金納付命令を出した。
2004年9月と2005年9月にそれぞれ価格引き上げで合意し、競争を実質的に制限したというもの。

化学業界では改正独禁法の最初のケースで、再犯企業(過去10年以内に独禁法違反があった企業)の課徴金5割増し、自主申告した企業の課徴金減免が適用された。
   2006/2/16
独禁法改正  

排除措置命令及び課徴金納付命令の対象と内容は以下の通り。(単位:千円)

  排除命令          課徴金納付命令 課徴金額合計
PE管 継 手   PE管   継手
三井化学  ○  ○  375,750 6%/15%  411,940 6%/15%   787,690
日立金属  ○  ○   59,080 6%/10%  607,950 6%/10%   667,030
三菱樹脂  ○  ○   64,930 6%/10%   62,420 (6%/10%)x0.7   127,350
積水化学工業  ○  ○   51,140 (6%/10%)x0.7   73,500 (6%/10%)x0.7   124,640
クボタシーアイ  ○  ○   53,790 6%/10%   16,700 6%/10%    70,490
日本鋳鉄管  ○  X   29,480 (6%/10%)x0.7    X      29,480
協成  ○  X   17,860 6%/10%    X      17,860
クボタ  -  -    3,520 6%/ー   1,240 6%/ー     4,760
富士化工    -   - (6%/10%) x 0    - (6%/10%) x 0     -
合計 7社 5社  655,550   1,173,750    1,829,300
 X は当該商品を販売しておらず,当該違反行為者ではない。
 金額の右は算定率で 06/1/4以前売上対応と同日以後売上対応

改正独禁法では課徴金の算定率がこれまでの6%から10%に引き上げられた。
今回のケースでは改正前の期間については6%で、改正後の期間は10%で計算された。

三井化学の場合は、2003年3月末にポリプロの価格カルテルでただ一社760,080千円の課徴金を支払っており、10年以内の「再犯」となるため、改正後の期間については15%が適用された。

ポリプロの価格カルテルでは住友化学、出光興産(当時は出光石油化学)、サンアロマー、トクヤマの4社は勧告を拒否、日本ポリケム、チッソは応諾したが課徴金に関して審決の手続きを要求し、いずれも審判が開始された。
  
2006/7/13 ポリプロ価格カルテル事件の現状  

昨年秋以降は、両ケースとも審判が行われておらず、公取委ホームページに何の記載もない。
どうなっているのだろうか。

富士化工は立ち入り検査の前に自主申告したため、管・継手とも排除命令と課徴金を免除された。
積水化学はと日本鋳鉄管はPE管で、また積水化学と三菱樹脂は継手で、それぞれ立ち入り検査後に自主申告を行い、30%減額となった。

改正独禁法では
公取委が立ち入り検査をする前に、
  最初に申し出た企業は課徴金を全額免除、
  2番目は課徴金額の50%を減額、
  3番目は30%を減額
公取委立ち入り検査後の場合は30%減額となっている。
いずれも先着順(指定宛先へのファックス)で、適用
は合計3社となっている。  

今回、三菱樹脂が継手で適用、管で不適用となっているのは、富士化工が先ず立ち入り前に申告し、立ち入り後に日本鋳鉄管(管のみ)と積水化学が申告し、その次ぎとなったためであろう。(管では4番目、継手では3番目)

なお、クボタは2005年4月1日付けでクボタシーアイにガス用ポリエチレン管事業を譲渡したため、それ以前はクボタ、以後はクボタシーアイが課徴金を支払う。

ーーー

三井化学は本命令を応諾する方針で、三菱樹脂も応諾する方向で検討しているとしている。

これまでと違い、自主申告で資料が出されているため、否認が難しいと思われ、この制度が有効であることが明らかとなった。

2006/11の日本経済新聞夕刊連載 「ドキュメント挑戦 法化社会 日本を創る」に、公取委の怒りの的となっていた弁護士の話が出ている。公取委の事情聴取にあたって否認するよう、多くの企業に助言していた。
減免制度が導入され、この弁護士の方針は、否認から早期申告へと180度切り替わった。
「事情聴取に応じるより課徴金の減免申請が先だ。早く申告しないと他社に先を越されるぞ」と電話している。

三井化学では、価格引上げに関する情報交換等が行われていた事実が確認されたとしている。

同社では、「独占禁止法遵守確認手続」など遵守のための対策を全社を挙げて実施してきたが、会社の指示に反し、かつ上司にも報告無く、担当者が価格引上げに関する同業者間の情報交換に加わっていたとし、今回の独占禁止法違反に関係した社員及びその上司の事業部長に同社規則に基づく厳正な懲戒処分を実施して社内に周知し、同時に会長、社長、グループ担当の副社長、リスク管理委員会担当の専務取締役、リスク管理委員会事務局担当の常務執行役員が役員報酬を一部返上する。

本件には該当しないが、三井化学は出光興産とのポリオレフィン事業統合(現在のプライムポリマー)の公取委審査の際に、公取委よりPPに関してはいろいろの理由で「当事会社が単独で又は協調して競争を実質的に制限することとなるおそれがあると考えられる」との指摘を受けた。
これに対して両社は問題解消措置を申し出て、それを基に統合を認められたが、その中のコンプライアンスについては 統合会社において以下の措置を取るとしている。

就業規則に,法令に違反するなど会社の名誉又は信用を傷つける重大な行為があったときは懲戒解雇に処する旨(情状により減給,出勤停止等)規定するとともに,全営業担当者等から,独占禁止法を遵守し,違反があった場合は就業規則に則り厳正な処分を受けても異存はない旨の誓約書をとること。
  http://www.jftc.go.jp/pressrelease/04.december/04120701.pdf  

三菱樹脂でも取締役全員について報酬の一部を返上するとしている。

 

付記

今後は自主申告をしなかった会社は株主総会で問題になる可能性がある。

今回の発表が6月29日というのは、公取委の配慮からかとも思われる。
29日は金曜のため、3月決算の会社の総会は既に終了している。

三井化学は公取委から5月25日に排除措置及び課徴金納付に関する事前通知を受けたことを5月30日に発表している。

付記2

公取委は2007年3月1日、ステンレス製ガス管のメーカー4社(下記)に立ち入り調査を行っている。

  日立金属協成、テクノフレックス・トーラ、JFE継手

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