塩ビ管カルテル調査

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公正取引委員会は10日、上下水道に使用される塩化ビニル管を巡り違法な価格カルテルを結んでいた疑いが強まったとして、三菱樹脂、積水化学工業、クボタシーアイの3社に強制調査に入った。

11日にはアロン化成、信越ポリマー、前澤化成工業、ヴァンテック、日本プラスチック工業、ダイカポリマーの6社とクボタシーアイの親会社クボタを、更に12日には日本ロール製造、旭有機材工業およびクボタシーアイの親会社で05年3月末まで製造・販売していたシーアイ化成に調査に入った。
強制調査の対象は延べ13社となり、シェアの合計は9割を超える。

* ヴァンテックは元は小松製作所の子会社の小松化成で、1997年に積水化学の子会社となり、改称した。
 ダイカポリマーはアウトサイダー最大手でクボタと提携している。

塩ビ管の市場規模は年間約 1,800億円と巨額で、公取委が過去に調査した案件の中でも最大級。

対象会社の中には、1991年の食品用ストレッチフィルムや1999年のダクタイル鋳鉄管で刑事告発され法人として有罪が確定した会社や、92年の塩ビ管カルテルで課徴金を払った会社、さきのガス用PE管・継手で課徴金を払った会社がある。

こうした経緯がありながら、同様の構図のカルテルが繰り返されたことや、国民生活に密着し、水道料金にも跳ね返る可能性のある上下水道管を巡ってカルテルが行われていた実態などを重くみて、公取委は刑事責任を追及する必要があると判断した模様。

また12日の朝日新聞によると、200510月に業界団体の塩化ビニル管・継手協会が市場縮小を見据えた今後5年間の需要予測や各社のシェアをまとめ、データを各社に伝えたり公表したりしても問題がないかどうか、公取委に相談した。
これに対して公取委は、「上位3社で7割のシェアを占める寡占市場」と業界の特性をふまえて、需要減少の数値予測を公表すれば「大手を中心に値上げに向けた協調的な歩調が取られかねない」とカルテルの危険性を口頭で伝えたという。

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今回は、原油価格上昇に伴う原料の塩ビの値上げに対して、過剰能力と公共投資削減による需給ギャップ拡大で価格転嫁が行えないために、赤字回避のために行ったものと思われる。各社にとり、10%(再犯の場合は15%)の課徴金と刑事訴訟による罰金は非常に痛いものになる。

問題再発を防ぐためには、他の業界と同様、過剰設備の処理が必要であろう。

少し古いが業界の状況は、経済産業省が2001年11月19日に発表した「塩化ビニル管産業の課題と将来展望に関する研究会報告書」で分かる。
  
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0002079/0/011119enkab.pdf

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各社の関連する業界の独禁法事件の主なものは次のとおり。

このうち、1991年のストレッチフィルム事件と、1999年のダクタイル鋳鉄管事件が刑事告発され、いずれも有罪となっている。
(企業に罰金、個人に執行猶予付き懲役刑)

                                               単位:千円
社名 1991 
ストレッチフィルム
1992
塩ビ管
2007
塩ビ管
1999
ダクタイル鋳鉄管
2007
ガス用PE
管・継手
2007
ステンレス
ガス管
課徴金 罰金* 課徴金 調査      課徴金 罰金 * 課徴金 調査
平成8年 平成9
三菱樹脂 91,480 7,000  7,150  ○        127,350  
信越ポリマー 78,210 8,000   790  ○          
クボタ      3,370  ○ 3,326,890 3,745,190 130,000   4,760  
クボタシーアイ        ○         70,490  
積水化学工業      5,720  ○        124,640  
アロン化成      2,710  ○          
三井化学
(三井東圧)
110,800 8,000            787,690  
栗本鐵工所         1,368,280 1.566,610  70,000    
日本鋳鉄管          518,020  535,520  30,000   29,480  
日立金属                667,030  ○
協成                 17,860  ○
富士化工                減免  
理研ビニル工業 51,540 6,000              
日本カーバイド 45,230 6,000              
電気化学工業 41,200 6,000              
日立ボーデン 20,520 6,000              
グンゼ 10,800 6,000              
その他        (1)          (2)
(1) 前澤化成工業、ヴァンテック、日本プラスチック工業、ダイカポリマー、
   日本ロール製造、旭有機材工業、シーアイ化成
(2) テクノフレックス・トーラ、JFE継手

* ストレッチフィルム     15名に懲役6月~1年(執行猶予)
* 
ダクタイル鋳鉄管  10名に懲役6月~10月(執行猶予)

公取委発表:

1991 ストレッチフィルム 
     課徴金   
http://snk.jftc.go.jp/cgi-bin/showdoc.cgi?dockey=H040326H04J03000071_
     罰金ほか 
http://snk.jftc.go.jp/cgi-bin/showdoc.cgi?dockey=H050521H03H02000001_ 

1992 塩ビ管 課徴金 http://snk.jftc.go.jp/cgi-bin/showdoc.cgi?dockey=H040722H04J03000115_

1999 ダクタイル鋳鉄管
     
平成8年課徴金 http://snk.jftc.go.jp/cgi-bin/showdoc.cgi?dockey=H111222H11J03000707_
     平成9課徴金 http://snk.jftc.go.jp/cgi-bin/showdoc.cgi?dockey=H111222H11J03000710_
     罰金ほか     http://snk.jftc.go.jp/cgi-bin/showdoc.cgi?dockey=H120223H11H02000001_

2007 ガス用PE管・継手 http://www.jftc.go.jp/pressrelease/07.june/07062901.pdf


* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm

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