英豪資源大手 Rio Tintoは12日、カナダのアルミ大手、Alcanを買収することで合意したと発表した。買収額は381億ドル。
買収に成功すれば両社のアルミ部門を統合し「Rio Tinto Alcan」を設立する。両社のアルミ地金生産量は合計で430万トン強に達し、統合後は世界首位に躍り出る。
アルミ市場ではロシアの二大アルミ会社とスイスの商社のアルミ部門が統合し、Alcoaを上回る世界最大のアルミ生産会社United Company RUSAL(ロシースキー・アルミニウム)が誕生したばかり。
2006/9/5 ロシアのアルミ最大手RUSAL、同国2位のSUALを買収
(Alcoa の能力も記載)
Alcanに対しては本年5月7日に、北米アルミニウム最大手の米Alcoa(The Aluminum Company of America)が買収総額269億ドル(債務引受を除く)の敵対的TOBをかけた。
AlcoaとAlcanは2年間にわたり合併交渉を続けてきたが、Alcanが拒否したため、AlcoaがTOBに切り替えた。
これに対してAlcanは5月23日にこれを拒否すると発表した。買収価格が低すぎるとともに、提案内容に魅力がないとし、TOBに応じないよう株主に呼びかけた。
今回のRio Tinto はAlcan がWhite Night (白馬の騎士)として選んだもの。
Alcoa は同日、TOBを撤回すると発表した。
「今回のRio Tinto のオファーはアルミ業界の未来が明るいという当社の見方を裏付けるものだが、この価格は高過ぎ、当社としては、株主価値を高めるのに、他にもっとよいオプションがある」としている。
これを機に世界の資源大手の再編が加速する可能性があり、BHP Billiton がAlcoaを買収するとの噂もある。
Rio Tinto自身、Alcanを買わなければ、BHPの標的になったとの見方も出ていた。
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Rio Tinto は英国と豪州の鉱業・資源グループで、銅、鉄鉱石、金、亜鉛、ダイヤモンドなどを取り扱っている。
1995年に英国のRio Tinto-Zinc Corp (現 Rio Tinto Plc.)と豪州のConzinc Riotinto of Austalia (現 Rio Tinto Ltd.)の二元上場会社(DLC =Dual Listed Companies)として設立された。
2つの会社は別個の会社として残り、それぞれロンドン、オーストラリア証券取引所に上場。
両社は同一の取締役会により単一の経済単位として経営され、両社の株主は同じ投票権と配当受領権をもつ。BHP Billitonも世界最大の鉱業会社で、鉄、ダイアモンド、石炭、石油、ボーキサイトをはじめとして金属や鉱産品を取り扱っているが、これもDLCである。
2001年にオーストラリアのBroken Hill Proprietary (BHP)とイギリスの会社で南アフリカで大規模に操業するBilliton の二元上場会社となることで設立された。
アルミについては、100%子会社で日本のメーカーとも関係の深い豪州のComalco (Commonwealth Aluminium Corporation )が担当している。
(2000年7月にRio Tinto のTOBで100%になった。それまでは72.43%を所有)
Alcan の2006年のアルミ地金生産量は344万トンで世界3位、原料のボーキサイト供給でも世界大手。
両社の現状および統合後の姿は下記の通り。
Rio Tinto | Alcan | 連結 | |
売上高 | 254億米ドル | 236億米ドル | 490億米ドル |
EBITDA (税引前利益+支払利息・減価償却費) |
126億米ドル | 39億米ドル | 165億米ドル |
アルミ生産量 | 80万トン | 340万トン | 430万トン |
アルミナ生産量 | 320万トン | 550万トン | 870万トン |
アルミ生産量は統合で世界一 | |||||||||||||||||||||||||
アルミナ生産量は世界4位だが、増設完了で世界一になる。 | |||||||||||||||||||||||||
原料ボーキサイトも世界一となる。 | |||||||||||||||||||||||||
参考 EBITDA 内訳 (億米ドル) | |||||||||||||||||||||||||
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資料:Rio Tinto presentation http://www.riotinto.com/documents/Investors/Alcan_120707.pdf
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Rio Tinto (Comalco ) のアルミ関連事業(2006/12/31現在:千トン)
Operations | Rio Tinto share | Aluminium | Alumina | Bauxite |
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Anglesey Aluminium Smelter, UK | 51.0% | 143.8 | ||
Bell Bay Smelter, Australia | 100.0% | 177.5 | ||
Boyne Smelters Limited, Australia *1 | 59.4% | 545.1 | ||
Eurallumina, Europe | 914 | |||
Queensland Alumina Limited, Australia | 38.6% | 3,871 | ||
New Zealand Aluminium Smelters *2 | 79.4% | 337.3 | ||
Wiepa Bauxite Mine, Australia | 100.0% | 16,139 | ||
Yarwun Alumina Refinery, Australia | 100.0% | 1,240 | ||
Rio Tinto 持分 | 844.7 | 3,247 | 16,139 |
*1 Boyne Smelters (グラッドストーン計画 ):残りを日本各社が出資、引取り
*2 New Zealand Aluminium Smelters(Tiwai Point, New Zealand)
当初、住友化学と昭和電工が25%ずつ出資
その後、昭和電工が撤退、住友化学比率は20.6%に。
Alcanの事業
アルミナ (千トン、%) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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アルミ精錬 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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参考 他社のアルミ関連事業
1)Chalco=Aluminum Corp of China Ltd.
2006/8/25 中国アルミ業界の拡大競争 参照
2)BHP Billiton
: | Primary aluminium smelters: | |
: | Hillside Aluminium, Africa (operator and 100 per cent) Bayside Aluminium, Africa (operator and 100 per cent) Mozal, Mozambique (operator and 47 per cent) Alumar, Brazil (40 per cent) | |
Alumina refineries: | ||
Worsley, Australia (operator and 86 per cent) Paranam, Suriname (45 per cent) Alumar, Brazil (36 per cent) | ||
Bauxite mining operations: | ||
Boddington, Australia (operator and 86 per cent) MRN Trombetas, Brazil (14.8 per cent) Coermotibo, Klaverblad and Kaaimangrasie, Suriname (operator and 45 per cent) |
3)Alumina Limited (previously WMC Limited)
1960年代に豪州のWMC Limited などがボーキサイト鉱を発見、開発のため Alcoa を招聘してパートナーシップをつくった。
1995年にWMC(その後 Alumina Limited と改称)とAlcoaはそれぞれのボーキサイト、アルミナ事業を統合してAlcoa World Alumina and Chemicals (AWAC) を設立した。Alumina Limited が40%、Alcoaが60% 所有。
4)CVRD (リオ・ドセ=Companhia Vale do Rio Doce)
: | 本 社 | :ブラジル・リオネジャネイロ |
主要事業 | :鉄および非鉄金属鉱山、鉄鋼、運輸、紙・パルプ | |
主要関連会社 | :Aluvale | |
Docegeo(Rio Doce Geologia e Mineracao SA) |
アルミニウム部門
アルミニウム関連事業は、100%子会社のAluvaleを通して展開されている。
Aluvaleは、90年にCVRD社が自社のアルミニウム関連権益管理のために設立したもので、MRN社(Minercao Rio do Norte:権益40%)、Alunorte (同55.32%)、Albras (同51.0%)などを通して、ボーキサイト、アルミナ、アルミニウムの生産を行っている。
MRN社はラテンアメリカ最大のボーキサイト・プロデューサーで、世界最大規模の生産量を誇るTrombetas鉱山(パラ州)を保有する。
Alunorteは95年7月に生産を開始したアルミナ・プロデューサーで、MRN社から供給されるボーキサイトを処理している。
Albrasはラテンアメリカ最大級のアルミニウム・プラントを所有し、Alunorte から供給されるアルミナを中心に処理を行っている。
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