Basell は8月2日、Shell France からマルセイユ近郊の Berre l'Etang の製油所とインフラ設備、事業を買収する提案を行ったと発表した。
Shell も買収提案に応じること、買収額7億ドルで合意したことを発表した。今後手続きを進め、2008年初めに買収が完了する予定。
同製油所ではナフサ、LPG、各種燃料、アスファルト、灯油などを生産している。
Basell はBerre l'Etang にナフサクラッカー(エチレン 470千トン)とブタジェン抽出設備、ワールドスケールのPP、PEを有し、近郊の Fos sur Mer にもPEプラントを有しており、現在Shell の製油所の最大の需要家である。
ナフサクラッカーは元々はBasell とShell (元の親会社)との50/50 JVのSociete du Craqueur de l’Aubette あったが、Basell が Shell 持分買収の交渉を行い、2005年12月にBasell 100% とした。同時にBasell は同地のShell のブタジェン事業も買収した。
今回の買収で更に上流を確保することとなる。
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オレフィン源であったBASF とShell から独立したBasell は川上志向を取っており、欧州のPE事業の場合には85%以上のエチレンを自社で確保する希望を持っている。
Basell の欧州のエチレン能力は以下の通り。
フランス Berre | 470千トン | SHELLとの50/50JV → Basell 100% |
ドイツ Wesseling | 1,043千トン | 増強(280千トン)計画 |
ドイツ Munchsmunster | 342千トン | Ruhr Oel から買収 Basell 100% |
2006/12/25 Basell、ドイツのナフサクラッカー買収
Basell の欧州の能力はJVを含め、PPは290万トン、PEは260万トン。
プラントは以下の各地にある。
France:Berre L’etang, Fos sur Mer, Notre Dame de Gravenchon
Germany :Frankfurt, Knapsack, Münchsmünster, Wesseling
Italy:Ferrara, Terni
The Netherlands:Pernis
Poland:Plock
Spain:Tarragona
United Kingdom :Carrington
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なお、Basell は7月17日に Lyondell の全株式を127億ドル(借入金込み 190億ドル)で買収することで合意したと発表した。
2004年12月にLyondell とMilleniumが、両社の合弁会社Equistarとともに合併したもので、合併時の各社の能力は以下の通り。(千トン/年)
その後、酸化チタンはサウジのNational Titanium Dioxide Company Ltd. (通称 Cristal) に売却した。
Lyondell | Equistar | Millenium | |||
PO | 2.050 | Ethylene | 5,270 | TiO2 (売却) Chloride Sulfate |
515 155 |
SM | 2,270 | Propylene | 2,270 | VAM | 385 |
MTBE | 58,500 bbl/日 |
Butadiene | 545 | Acetic Acid | 545 |
PG & PGE | 570 | EG | 455 | ||
TDI | 260 | EO | 500 | ||
Butanediol | 180 | HDPE | 1,450 | ||
LDPE | 640 | ||||
LLDPE | 500 |
2007/7/18 Basell が Lyondell を買収
Basell Polyolefins North America は米国・カナダで最大のPPメーカーで、メキシコでもAlpekとのJVを持っている。
Bayport (Texas 53万トン+22万トン)、Lake Charles (Louisiana 45万トン)、Sarnia(Ontario 10万トン、2008年休止予定)、Varennes(Quebec 18万トン)、Tampico(Mexico:JV Indelpro 24万トン+35万トン)にプラントを持つほか、Linden(N.J)のConocoPhillips のPP(35万トン)の独占販売権をもっている。
Lyondell 買収でこれにPEが加わることとなる。
(プロピレンは主にPO用に使用されており、当面はPPの原料遡及とはならないと思われる)
Basellの弱点はオレフィンの外部からの購入による原料の競争力のなさにあった。原料を自社でもつため、上流に遡るのは不可欠の戦略となる。下流だけでなく、上流も揃えて持たなければ競争力がつかないのがポリオレフィン事業の特徴。結局、BASELLはそのために多額の投資をすることになると思う。そんななかで、中東は余剰のポリオレフィンの捌き先として欧州を狙いたい。
この関係、競合がひとつの問題。
永尾様、以前に「Basellの蹉跌と欧米化学企業のゆくえ」拝読いたしました。バセルは、M&Aによる投資で、川上へのインテグレ-ションとS&Bの合理化し、また中東への投資もあるようです。BASF/Shellから切り離された頃に比べ、環境変化により収益が改善されているようですが、ライオンデル合併によって、更なる合理化が進むでしょう。オ-ナ-は、投資会社で、目的は、企業価値の向上です。適当なタイミングで売却されるかもしれません。ヘッドコ-チ