米国の住宅市場調整長引く

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米国の1-6月の住宅着工件数(季節調節済み)平均は1,461千戸(年換算)となった。
2006年1月に過去最高の2,265千戸を記録した以降、急落し、2000年の平均を下回り、回復の兆しが見えない。

   参考 2007/4/21 ニュースのその後 米国住宅着工件数、低迷続く 

5月の主要20都市の住宅価格は昨年7月をピークに10ヶ月連続で下落している。
住宅販売も低迷し、6月の新築住宅は前年同月比22%減、中古住宅は11%減となった。
在庫比率も拡大し、在庫期間は新築で7ヶ月、中古は8.8ヶ月(過去最悪)となっている。

この数年の米国の住宅好調はバブルであったといえる。

過去12ヶ月以内の支払い遅延や、24ヶ月以内の住居の差し押さえ、収入に対しての過度の債務など、何らかの問題を抱えたクレジットの信用が低い借り手に対してサブプライムローンで住宅を販売した。
借り手は住宅価格の上昇により担保価値が増えると低金利ローンに切り替えができるし、貸し手は返済が滞ると担保を取り上げ売却すると利益が出た。

他方、富裕層は住宅の値上がり益の確保のため、居住目的ではなく転売目的で住宅を購入してきた。

すべてが住宅価格の値上がりを前提にしていた。

バブルの例に漏れず、一旦バブルがはじけると、全て逆転した。

米Moodysは7月10日、ローンの延滞率が予想を上回ったため、サブプライムローンを組み込んだ住宅ローン担保証券(RMBS:Residential Mortgage-Backed Securities)399件の格付けを引き下げると発表した。

米大手証券ベアー・スターンズの傘下のヘッジファンド2社が経営難に陥った。出資金の十数倍の資金を借入れRMBSなどに投資をしていた。

米連邦準備理事会(FRB)は7月17日、サブプライムローンの監督を強化するため、連邦と州の規制当局が試験的に連携すると発表した。

野村ホールディングスはサブプライムローン市場の悪化で、1―6月で累計約720億円の損失を出したと発表した。今後、RMBS事業からの撤退を検討する。
仏保険最大手のアクサもサブプライムローンに絡んだ投資で損失を出した。ドイツ産業銀行も同関連投資240億ドルのうち、20%程度が損失となる見通しで、金融機関が救済に乗り出している。

サブプライムの焦げ付き増加によりローン審査が厳格になり、需要低迷を通じて住宅価格の下落が強まりかねないとみられている。

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当初は景気全版への影響はないとされていたが、その懸念が出てきた。
ホーム・デポやシアーズなど小売り大手が、住宅需要の冷え込みでリフォームや家電製品の販売不振を理由に、相次いで業績を下方修正した。

DuPontの第2四半期が予想より悪かったとして株価が下落した。米国の住宅と自動車市場の悪化(および好調が期待された農薬の不振)が原因。最終損益は海外市場の好調によりなんとか前年比フラットとなった。
Coatings and colour事業では住宅と自動車用のペイントに使用される二酸化チタン需要の減少が響いた。
住宅用防水シートTyvek (PEの連続性極細繊維に高熱を加えて結合させたシート)や
ユニット・キッチンの天板等に使われる人工大理石Corean も住宅不振の影響を大きく受けている。
Holliday CEO は北米の住宅需要は来年のどこかの時期まで回復を見込めないと述べている。

住宅不振の影響を最も受けているのは塩ビ業界である。
本年上期の窓枠やサイディング(壁板)の出荷は前年比20%減となっている。
(逆にトルコ、西欧、中東、北アフリカの塩ビ需要が好調で、輸出は25%増となっている。)

信越化学の第1四半期の連結営業損益は電子材料の増益で前年を大幅に上回ったが、塩ビを含む有機・無機化学品は減益となった。
同社によると、PVCは、
北米住宅需要の低迷の影響を受け同業他社が大幅な減益や赤字を計上する中で、シンテックは高水準の操業を継続し、営業利益で前年同期を3割ほど下回る減益に留めたとしている。(欧州は好調を維持している。)

信越化学の金川千尋社長は昨年11月の日本経済新聞で、「米国の需給が回復しなければ、米子会社は輸出で補う。中南米、インド、中東に加え、11月からトルコにも出荷を始めた。2007年末には米国で増産設備を稼働させる。売り切るには相当な努力が必要だが、米子会社は最高益となる今期並みの業績を来期も確保したい」としていた。

Shintechの新工場(米国の第3工場)はルイジアナ州イバビル郡プラクミンの南の元アッシュランドケミカルの工場敷地に建設しているもので、総額10億ドルをかけて塩素 45万トン、VCM 75万トン、PVC 60万トンの一貫生産を行うもの。
第一段階として、塩素 30万トン、VCM 50万トン、PVC 30万トンを
当初は2006年末に完成させる予定であったが、1年遅らせている。

2006/5/16 世界一の塩ビ会社 信越化学 
2007/6/1 シンテック、テキサス州にVCM工場の建設許可を申請 

中東やインドには中国の需要の減少を受け、アジア勢が輸出を増やしている。(最近はコンテナーを取りにくい状況にまでなっている)
SolVin
はベルギーの能力増強を決めた。

住宅の回復の兆しが見えないなかで、新プラントの生産スタートは厳しいものとなろう。

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