本年3月にブラジル国営石油会社PetrobrasとUltra Group、Braskemの3社が共同で、同国の石油精製・販売、石油化学の老舗のIpirangaを買収することが発表された。
Ipiranga の事業は以下の通り配分される。
石油精製:Rio Grande do Sul の製油所はPetrobras、Ultra Group、Braskemが均等に出資し、
事業を継続する。
石油販売:ブラジル南部、南東部はUltra Groupが引き受け、引き続きIpirangaのブランドで販売する。
北部、北東部、中西部はPetrobrasが引き受け、5年の間に自社ブランドに順次変更する。
石油化学:Braskemが資産の60%を引き受け、Petrobrasが40%を引き受ける。
エチレンJVのCopesul は上場廃止とし、Braskemが支配権を得る。
南部のTriunfo にCopesulに隣接して5工場を持つ。同社の能力はPPが180千トン(手直し後)、HDPEが3プラント計 400千トン、HDPE/LLDPEが 150千トンとなっている。
千トン Start-up Technology Plant 1 HDPE 140 1982 Hostalen/Basell Plant 2 HDPE 120 1990 Hostalen/Basell Plant 3 HDPE 140 1996 Hostalen/Basell Plant 4 LLDPE/HDPE 150 1999 Spherilene/Basell 小 計 ( 550) Plant 5 PP 180 1999 Spheripol/Basell
なお、Petrobras、Ipiranga、Braskem が出資し、今後は上場廃止として Braskemが支配権を得るCopesul の能力は以下の通り。(千トン)
エチレン 1,135 プロピレン 581 ベンゼン 265 トルエン 91 m-キシレン 66 ブタジェン 105 MTBE 115 2007/3/23 ブラジルで石油・石油化学業界の再編
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8月3日、 Petrobras はSuzano Petroquimica を11億ドルで買収することで合意したと発表した。少数株主の持分のTOBを含め、100%を取得する。
Suzano Petroquimica はPPメーカーで能力は以下の通り。
PP 能力 (千トン) | ||||||||||||||||||||
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これに加え、Suzanoが出資する下記の企業の持分がPetrobras に加わる。
Company | Petrobras 持分 |
Suzano 持分 |
合計 |
Rio Polimeros (RioPol) | 16.66% | 33.33% | 50.0% |
Petroquimica Uniao(PQU) | 17.5% | 6.8% | 24.3% |
Petroflex | ー | 20.1%* | 20.1% |
但し、Petroflex に関しては、Suzano の株主が変わった場合は、Suzano の持分をBraskem と Unipar が購入するオプションを持っており、これに基づき、Braskem は13.4%分を取得し、33.5%とした。
Braskem は将来、これを売却する可能性があるとしている。
各社の製品と能力は以下の通り。( )は新増設中のもの。
Company | Product | Capacity(千トン) |
Rio Polimeros (RioPol) |
Ethylene | 520 |
LLDPE / HDPE | 540 | |
Propylene | 75 | |
Petroquimica Uniao (PQU) |
Ethylene | 500(→700) |
Propylene | 250 | |
Benzene | 200 | |
Solvents | 180 | |
Gasoline A | 170 | |
Butadiene | 80 | |
Petroflex | Elastomers | 411 |
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Petrobras によるSuzano Petroquimica の買収に関しては、民営化から再国営化への変更だと批判する声が出た。
しかし、Petrobras の拡張策はこれにとどまらなかった。
8月11日、Petrobras とUnião de Industrias Petroquimicas (Unipar) は両社のブラジルの化学品、合成樹脂事業を統合する協議を行っていると発表した。
新会社の名称は Companhia Petroquimica do Sudeste (CPS) で、Uniparが主導権を持つ。
Petrobras は「ブラジルの石油化学は国際的には規模が小さいため、統合してワールドスケールにしたい」としている。
Petrobras による Suzano 買収は年末に完了する予定だが、これにUnipar が加わることとなる。
Company | Petrobras 持分 |
Suzano 持分 |
合計 | Unipar 持分 |
再計 |
Rio Polimeros (RioPol) | 16.66% | 33.33% | 50.0% | 33.33% | 83.33% |
Petroquimica Uniao(PQU) | 17.5% | 6.8% | 24.3% | 51.0% | 75.3% |
Petroflex | ー | 20.1% → 6.7% |
20.1% | 10.1% | 30.2% →16.8% |
* | Unipar のPQU 持分は37.2%であったが、本年6月にDow Brasil から13%強を買収した。 これと同時に100%子会社のPE会社、Polietilenos UniaoがDow Brasil からSao Paulo 州のCubatao にある140千トンのLDPEプラントを買収した。(既存プラントと合わせ、LDPE能力は270千トンとなった) 2008年3Q にはCapuavaプラントの増設完成で能力は500千トンとなる。 |
Unipar とその(上記以外の)出資会社の製品と能力は以下の通り。( )は新増設中のもの。
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* Dow より購入(140) |
Petrobras では他の会社や投資家(例えばRioPol に出資する国営開発銀行のBNDES)にも新会社への参加を呼びかける。
両社は90日以内に契約を締結し、新会社の運営方法などを決めたいとしている。
各社の関連図は下記の通りとなる。
ブラジルの石化は、実質的に新会社とBraskem の二つとなる。
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