全国人民代表大会の常務委員会は8月30日、反壟断法(独占禁止法)案を採択した。来年8月1日に施行される。
詳細は発表されていないが、日本経済新聞によると、ポイントは以下の通り。
反壟断委員会の設立(公正取引委員会に相当)
競争関係にある事業者の間で、以下の協定は禁止
・価格の維持や変更
・生産や販売量を操作
・新技術や新設備の導入を制限
行政権を乱用して競争を排除してはならない
支配的立場の乱用を禁止
・不公正な高値販売や不公正な安値購入
・原価を下回る価格で販売
・正当な理由無く取引先との取引を拒絶
・抱き合わせ販売合併・買収では以下の点を審査
・市場シェアや市場への支配力
市場独占の判断基準=1社で5割、2社で2/3、3社で3/4以上のシェア
・国民経済や消費者への影響
・国家安全への影響(外資の場合)◎イノベーションや技術強化を促進する場合は独占を承認
産業政策との整合性も考慮違法企業には最高で前年度の売上高の10%の罰金
今後、日本の進出企業にも影響が出てくる可能性がある。
(デジタルカメラではキャノン、ソニー、ニコンの3社合計で7割前後のシェアがある)
また、中国では地方政府が行政権を乱用して競争を排除するケースが多いが、この法律でそれが本当になくなるのか、見ものである。
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商務部反独占調査弁公室の尚明主任の解説は以下の通り。 (人民網日本語版)
1.独占禁止に向けた三大制度を確定
法制度の3つの柱は独占合意の禁止、市場における支配的地位の乱用禁止、経営者集中の抑制
このほか、中国の経済発展の現状に即し、行政権力乱用の排除、行政による独占行為の禁止規定を設定
これに対応する形で、独占合意免除制度、市場支配地位推定制度、経営者集中申告制度、経営者承諾制度などを設けた。
2.さまざまな企業の成長を支持
立法目的は、独占行為の予防と制止、市場競争の保護、経済の運営効率向上
市場の支配的地位を乱用する行為を対象としており、市場の支配的地位そのものには反対しない
競争システムの保護を通じ、企業規模の拡大を促進し、さまざまな企業が公平競争を通じて発展することを支持
3.外資による買収に関する特別条項はない
競争に関する審査は国内資本であれ、外国資本であれ共通
国家安全審査は国家安全保障上の配慮によるもので、国際的にも採用されている
4.合併買収案件の反独占審査を全ての企業種別に拡大
全国統一で開放的かつ市場競争と秩序が存在する現代市場体系の構築を目指す
企業の合併・買収に関する反独占審査は全ての類型の企業に対象を拡大
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新華社通信やAssociated Press は、今回の独禁法の眼目を「国家安全への影響」審査であるとしている。
立法の担当者は「独占禁止の観点に加え、national security に影響する外資の投資はその観点からレビューを受けねばならない」とし、「これは他国のやり方に合わせたものである」としている。
次の事例がこの決定の背景にある。
・2005年のCNOOCによる米国の石油会社Unocal 買収=実現せず
米国議会が米国の安全を損なうとして反対。
・2006年初めのドバイの国営会社による米国の6つの港湾のオペレーション企業買収=実現せず
米議会は外国企業による買収のレビュー強化の法律を作成、7月にブッシュが成立させた。
近年外国企業の対中直接投資に変化が見られ、国内企業を買収する形で中国進出を図る傾向が出てきた。
2004年以前は買収案件が外資の対中直接投資に占める割合は5%だったが、04年には同比率が11%、05年には20%に迫った。
一部の多国籍企業や投資ファンドは中国の一部産業の重点企業を買収している。
中国政府は昨年、国家独占を継続する戦略部門リストを発表した。
軍事関連、発送電、石油、ガス、石油化学、テレコム製造、石炭、航空などである。
また、2005年に米国の投資会社Carlyle Groupが中国の建設資材メーカーを買収しようとして大問題になったのを受け、外資による買収のチェックを厳しくする規則が昨年商務部と他の5つの政府機関により出されている。
以前は1億ドル以上の外資による M&A が商務部のチェックと承認を必要とするだけであったが、外資による中国企業の買収が国家経済のセキュリティに影響する場合、重要セクターでの買収の場合、有名ブランドの権利移転を生じる場合には、商務部の承認が必要となった。
今回の独禁法制定について、発展途上の中国の企業をグローバル企業との競争から守るものだとする意見がある。
(他方、国営企業の力を弱めることになるとする意見もある。)
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中国には既に、価格カルテルを禁止するPrice Law of China が存在している。
その第4条は次の通り規定している。
事業者は合意、決議、調整その他不正な方法で価格を決めたり、維持したり、修正したりしてはならない。
.その第14条は以下のような異常な価格設定を禁止している。
・他と共謀して価格コントロールを行い、他の事業者や消費者の利益を損なうこと
・価格を過度に上げるために、値上げ情報をでっち上げたり、広めること
・法や規則に反して暴利をあげること
・その他
最近、国家発展改革委員会(NDRC)は1ヶ月の調査のあと、中国ラーメン麺協会( China Ramen Noodle Association )の価格カルテルを有罪とした。
ラーメン麺協会は原料の油や小麦の値上がりを受け、2006年から2007年の6ヶ月間に3回の会議を行い、統一した値上げを決めた。
協会はその業界誌に会議の議事録を掲載、値上げのニュースが消費者にパニックを起こし、ラーメン麺の大量買い占めが起こったという。
NDRCは業界に対して値上げ撤回と合意の抹消を指示するとともに、他の業界にも遵法精神を高めるよう警告した。
詳細は China Business Law Blog (中國商法博客) August 24, 2007 参照
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* バックナンバー、総合目次は http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm
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