イグ・ノーベル賞(The Ig Nobel )の第17回授賞式が10月4日夜、米ハーバード大学サンダース・シアターで催された。
イグ・ノーベル賞は1991年、ハーバード大系の科学雑誌「ありそうもない研究」(Improbable Research ・・・Research that makes people LAUGH and then THINK)の編集者Marc Abraham が創設した。
Ignoble(=nobleでない)とNobel をかけたもので、「人を笑わせ考えさせてくれる研究」に対して贈られ、裏ノーベル賞といわれている。
本年は外資系医療機器会社勤務の山本麻由さん(26)が「牛糞からバニラの芳香成分 vanillin の抽出」で化学賞を受賞した。
山本さんは宮崎大学農学部を卒業後、牛のふんを簡単に廃棄する方法について研究を進め、国立国際医療センター研究所の研究員だった2004年に今回の抽出方法を開発した。
「酪農家の大変さを軽くしたい、不要と思われているものを役に立たせたいという気持ち」で、本業の高分子研究と並行して何百もの試料で実験を繰り返した。
牛糞1グラムに水4ミリリットルを加え200℃で60分間加熱すると、1グラムあたり約50マイクログラムのvanillinが抽出できた。
バニリンは樹木などの木質成分リグニンから生成するため、馬や山羊などの草食動物の排泄物も利用可能だという。抽出コストはバニラ豆を原材料にする方法に比べおよそ半分でシャンプーやロウソクの芳香添加物などの応用が考えられる。
トロフィー贈呈役を務めたDr. W.N. Lipscomb, Jr. (1976年ノーベル化学賞を受賞)は「一級の研究」と絶賛した。
壇上では、牛の糞から抽出した香料を使った「バニラ」アイスクリームが歴代のノーベル賞受賞者に配られ、教授らは食べるのをためらったが、会場からの Eat ! Eat ! の野次で、意を決して口にした。
(実際には普通のアイスクリームであったとのこと)
2006年のイグ・ノーベル賞とこれまでの日本人の受賞者(11件)については
2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
今年の他の受賞は以下の通り。
○医学賞:英国Gloucestershire Royal NHS Foundation Trustの放射線医師Brain Witcombeと、米国人協力者のDan Meyer
「剣飲みとその副作用について:The health consequences of swallowing a sword」
3カ月間で約2000本の剣を飲んで、その際の生体反応について調査した。
○物理学賞:米ハーバード大学のラクシミナラヤナン・マハデバンと南米チリのエンリケ・セルダ
「シーツの皺のつき方について:The problem of how sheets become wrinkled」
○生物学賞:オランダのDr Johanna van Bronswijk
「寝床で一緒に眠り、ムズムズ感を引き起こすダニ、昆虫、クモ、シダ類、菌類の全統計調査
Creepy crawly census of all of the mites, insects, spiders, ferns and fungi
that share our beds」
○言語学賞:A University of Barcelona team
「ラットは日本語の逆さ言葉とオランダ語の逆さ言葉を聞き分けられない
Rats are unable to tell the difference between a person speaking Japanese backwards and
somebody speaking Dutch backwards」
○文学賞:オーストラリアBlue Mountains のGlenda Browne
「アルファベット順に並び替える際に、英語の定冠詞『the』によって引き起こされる混乱
Her study of the word "the", and how it can flummox those
trying to put things into alphabetical order」
○平和賞:The US Air Force Wright Laboratory
「同性愛爆弾 "gay bomb"
Chemical weapon that would provoke widespread homosexual behaviour
among enemy troops 」
○栄養学賞:Brian Wansink of Cornell University
「底がないスープ皿で自動的に給仕される場合における、人間の食欲の限界について
The limits of human appetite by feeding volunteers a self-refilling,
"bottomless" bowl of soup」.
○経済学賞:台湾のKuo Cheng Hsieh
「銀行強盗を捕らえるネットの開発で特許を取得
Patenting a device that can catch bank robbers by dropping a net over them」
Hsieh氏の行方は数年前から分かっておらず、司会者は同氏についての情報提供を呼び掛けた。
○航空学賞:パトリシア・アゴスティーノとサンティアゴ・プラノ(National University of Quilmes, Argentina)
「バイアグラに時差ぼけ解消の効果があることを発見
Discovering that impotency drugs can help hamsters to recover from jet lag.」
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