ノーベル賞委員会は10月12日、記録映画「An Inconvenient Truth」などを通じて地球温暖化防止を訴えているAl Gore 前米副大統領(59)と、温暖化防止研究を政策決定に生かすための国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)に2007年ノーベル平和賞を授与すると発表した。
ノーベル賞委員会は「人為的な気候変動に関する知識を広め、対策の基盤構築に努めた」と授賛理由を説明した。
Gore氏を「温暖化対策の理解を深めるため最も尽力した個人」とたたえ、IPCCの活動については「人間活動と温暖化の関連で共通認識を作った」と評価している。
Al Gore に対しては大統領選への出馬の要請が出ている。
2006/2/17 ドキュメンタリー映画「An Inconvenient Truth」
なお、“An Inconvenient Truth” はアカデミア賞(長編ドキュメンタリー賞)を獲得している。
気候変動に関する政府間パネル(lPCC) は科学、影響、対策の3つの作業部会に分かれ、最新の分析をまとめる国連機関。130カ国以上から約4000人の専門家が参画し、発表済みの成果を評価して確度の高い情報を提供する。温暖化をめぐる各国の政策に影響を及ぼしている。最初の報告書は90年で、今回が4回目。
第1作業部会(科学)は本年2月に、今世紀末の平均気温が1.1~6.4度上昇すると予測。
(http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-02-1.htm#ipcc)
第2作業部会(影響)は本年4月に、気温上昇が2~3度を超えれば、世界で経済的損失が生じると指摘した。
(http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-04-1.htm#ipcc-2)第3作業部会は本年5月に対策編を発表。
(http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-05-1.htm#ipcc-3)
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他方、英国ではこの記録映画が裁判沙汰になっている。
本年2月に英国政府は温暖化に関する授業の一環として 3,385 の中学校にDVDを配る計画を明らかにした。
これに対してある父兄が、この映画はプロパガンダであるとして、回収することを求める訴訟を起こした。
そして、その立場を述べるサイト Straight Teaching を開設している。
http://www.straightteaching.com/
裁判で High Court (民事第一審)の判事は生徒にこの記録映画を見せるのは政治的行為であるとし、映画の禁止はしないが、教育の中立を守るため、指導書付きで映画を見せることを求めた。
判事は、この映画は多くの部分が科学的調査や意見に基づいてはいるものの、単なる科学映画ではなく、政治的映画であると結論付けた。
裁判のなかで、11カ所の問題が議論となった。いずれも映画のなかの注目点である。
・Mount Kilimanjaro の雪解けが温暖化のせいであるとされている。
政府の専門家はこれが正しくないと認めざるを得なかった。
・ ice cores の証拠が、65万年に亘ってCO2の増加が気温上昇を引き起こしていることを示しているとしている。
裁判では、CO2と気温の上昇の間に800年から2,000年のラグがあることが明らかになった。
・Hurricane Katrina が温暖化によって引き起こされたとしている。
政府の専門家は単発の事象を温暖化のせいにするのは "not possible" と認めざるを得なかった。
・ Lake Chad が干上がったのが温暖化のせいとしている。
政府の専門家はそうではないと認めざるを得なかった。
・北極の氷がなくなり、北極熊が溺れ死んだという研究が示されている。
事実は、4頭の北極熊が特に激しい嵐のために溺れ死んだだけであった。
・温暖化でメキシコ湾流がとまり、欧州が氷河時代に入ると警告している。
これは科学的にはあり得ないとの証拠がある。
・温暖化でサンゴ礁の白化を含め、種の減少に繋がるを批判している。
政府はこの主張を支持する証拠を何も見つけられなかった。
・Greenland の氷が溶け、海面が危険なほど上昇するとしている。
Greenland の氷が数千年間溶けないとの証拠がある。
・南極の氷が解けているとしている。
実際には南極の氷は増えている。
・海面が 7m も上昇し、何百万もの人が移住を余儀なくされるとしている。
実際には次の100年での海面の上昇は40cm とみられており、大量移住のおそれはない。
・海面上昇で太平洋のいくつかの島の島民がNew Zealand に移住を余儀なくされたとしている。
政府はこれを証明できず、裁判所はウソであるとみなした。
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なお、デンマークの政治学者で「環境危機をあおってはいけない―地球環境のホントの実態」(The Skeptical Environmentalist)を書いた Bjorn Lomborg は、Al Gore のノーベル賞受賞について、"An inconvenient peace prize" と題して、次のように批判している。
IPCC は世界が気候変動の結果どうなるかを苦労してまとめたが、Al Gore は怖い怖いと言っているだけだ。
Gore の受賞は、世界が他にするべきことを放置して、ますます、気候変動のみに力を注ぐことになってしまう。我々は気候変動の遠い先の影響を心配しながら、現在直面している問題については放置している。
毎年、栄養不良で400万人が死亡し、エイズで300万人が死亡し、室内・室外の大気汚染で250万人が死亡し、微量栄養素やクリーンな飲み水の不足で200万人が死亡する。
金も注意能力も十分ではない場合には、先ず最善の解決策で問題に取り組むべきだ。
http://commentisfree.guardian.co.uk/bjrn_lomborg/2007/10/an_inconvenient_peace_prize.html
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* バックナンバー、総合目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm
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