旭硝子は9月28日、AGC Chemicals Americas, Inc.のBayonne Plant (New Jersey州)でのフッ素化学品PTFE (四フッ化エチレン)の生産を2007年末で停止し、同工場を閉鎖することを決定したと発表した。
AGC Chemicals Americas は3拠点を有している。
Bayonne Plant (New Jersey州):フッ素樹脂PTFE及びフッ素系溶剤 AK-225の製造・販売拠点
Thorndale Plant(Pennsylvania州):フッ素樹脂コンパウンド
テクニカルセンター(Exton, Pennsylvania):フッ素化学品の営業・サービス拠点
米国でのPTFE事業の収益悪化を受け、米国におけるフッ素化学事業の戦略を大幅に見直し、Bayonne Plantを閉鎖するもの。
Thorndale Plant のフッ素樹脂コンパウンドの生産は継続、Exton のサービス機能を向上させ、日本、英国の生産拠点で製造したフッ素樹脂「フルオン(R)ETFE」(エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体)やフッ素ゴム「アフラス(R)」(4フッ化エチレンとプロピレンの共重合体)などの輸入販売を強化する。
PTFEは耐薬品性・耐熱性に優れたフッ素樹脂で、シート、チューブ、テープ等に加工され、半導体関連製品・自動車部品などに使用される。
旭硝子は米国のほかに、日本及び英国にPTFEの製造拠点を有している。いずれも ICI から買収したものである。(日本はJV持分)
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旭硝子は1981年に、ICI社との間でPTFE(四フッ化エチレン)樹脂の50/50 JV、旭アイシーアイフロロポリマーズ(AIF)を設立し、旭硝子千葉工場内に工場を建設した。
1998年に旭硝子はフッ素化学事業拡大施策の一環として、AIFのICI持分を買収することで合意、1999年1月に買収を完了し、旭硝子フロロポリマーズと改称、従来から独自で製造・販売しているフッ素樹脂・フッ素ゴム事業をはじめとしたフッ素化学品事業と完全に一体化した事業運営を行なうこととなった。
(旭硝子は2004年1月1日付けで旭硝子フロロポリマーズを本体に吸収した。)
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旭硝子は1999年9月、ICIからFluoropolymers 事業を136百万ドル買収する基本契約を締結し、12月1日に買収を完了した。
ICIにとっては抜本的構造改革の一環である。
2006/3/7 ICIの抜本的構造改革
ICI Fluoropolymers 事業は1998年の売上高は110 百万ドルで、米国のBayonne (New Jersey) と英国の Lancashire 州 Thornton-Cleveleys にPTFEの工場を、また米国 Thorndale (Pennsylvania)にコンパウンド工場を持っている。
旭硝子はこの買収に際し、米英に2社を設立し、この事業を行うこととした。
米国: | Asahi Glass Fluoropolymers USA,Inc. =旭硝子アメリカの100%出資 (その後 AGC Chemicals Americas, Inc.と改称) |
英国: | Asahi Glass Fluoropolymers U.K. Ltd. =Asahi Glass Fluoropolymers USAの100%出資 (その後、AGC Chemicals Europe と改称) |
この買収により、旭硝子は生産拠点として英国、米国及び日本(市原)にPTFEの製造拠点を保有し、販売・製造・開発が一体化したグローバルな体制を持つことになった。
今回の米国拠点閉鎖で、英国と日本の2拠点となり、米国にはこれらから供給することとなる。
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なお、旭硝子はAsahi Glass Fluoropolymers U.K. に電線被覆材やフィルム原料として使われるフッ素樹脂フルオン(R)ETFE の生産設備を建設した。
フルオン(R)ETFE(エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体)は同社が1975年に世界で初めて商業生産を開始した高機能フッ素樹脂で、千葉工場と鹿島工場で生産している。
近年は自動車向け、建材向けなどの新用途を中心に需要が急増しており、ミュンヘンのサッカースタジアム「Allianz-Arena」や、北京五輪のメインスタジアム「国家体育場」の屋根部分と水泳会場の「国家遊泳中心」にETFEフィルムが採用されている。
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