住宅着工件数 9月も大幅減

| コメント(0)

国土交通省が10月31日に発表した9月の新設住宅着工戸数は 63,018戸で、前年同月比 44.0%減、3か月連続の大幅減少となった。

平成18年度の住宅着工は1,285千戸であったが、9月の季節調整済年率換算値では 720千戸に止まっている。(7月は947千戸、8月は729千戸)。
特にマンションは 5,328戸で、前年同月比 74.8%減と大きく落ち込んでいる。

これは改正建築基準法の施行によるものである。
耐震偽装対策として申請時の添付書類を大幅に増やしたうえ、建物の構造、防火などにかかわる計画変更は原則として認めず、着工後の再申請は工事をストップした場合に限って認めた。

詳細は以下を参照。

   2007/10/1 日米住宅着工件数減少 

建築資材については既に影響が出ている。住宅を主需要とする塩ビについても間もなくこの影響が出てくると思われる。
7~9月期のGDPに対しても下押し要因になることは避けられないとみられ、景気への悪影響が懸念されている。

法改正で自治体や民間審査機関の責任を重くしたため、審査機関が慎重になりすぎた面があり、審査機関の多くは改正法をしゃくし定規に適用している。
審査の目安となる技術基準解説書が公開されたのは8月になってから。

マンション建設の審査に利用する「構造計算ソフト」の整備が間に合っていないという問題もある。

改正建築基準法では、中高層マンションなど高さ20m超の鉄筋コンクリート建築などには、建築物の安全性を測定する「構造計算書」の提出が求められ、自治体などの検査機関とは別に、「指定構造計算適合性判定機関」という第三者組織を設け、二重にチェックする体制を整えた。
審査をスムーズに進行させるためには、書類の申請側と審査側に共通仕様の計算ソフトが必要になる。
姉歯事件でのプログラム改竄を避けるため、不正防止機能を備えた認定構造計算ソフトをつくることとなっているが、施行から4ヶ月たった現在でも発売されておらず、年内発売も微妙という。

現在は、構造計算書は非認定プログラムによって計算されたものが使われているが、審査期間が長くなるし、着工後に建築基準法に違反していたことが判明すれば工事はストップし、完成後でも取り壊さざるを得なくなる恐れがある。

 

国土交通省では着工件数の激減について「予想以上の混乱」としており、改正法が円滑に運用されるよう、10月30日、「改正建築基準法の円滑な施行に向けた取組について」を発表した。11月中旬にも同法の施行規則を改正し、実施する方針。

国土交通省においては、改正建築基準法の円滑な施行に向けて、各般の関連情報の周知徹底等に努めておりますが、これまでに意見交換の場等であった実務者からの要望等を踏まえ、更に以下の取組みを行います。

(1) 実務者向けのリーフレットの配布
  従来から行ってきたホームページによる質疑・応答( Q&A) 等の公表に加え、新しい建築確認手続きの要点に絞って、設計者、施工者、デベロッパーなど主に事業者側の実務者を念頭に、わかりやすく説明したリーフレットを作成し、関係団体、商工会議所、地方公共団体等を通じて、幅広く、関係者に配布するとともに、確認審査の窓口等に備え置きます。
   
(2) きめ細かい個別の地域に対するアドバイスの実施
 
建築確認申請件数、あるいは建築確認件数が依然大幅に落ち込んでいる地域に対して、特定行政庁や指定確認検査機関から個別に状況をヒアリングした上で、具体的な改善策についてアドバイスを行います。
   
建築確認手続きの円滑化に向けて、特定行政庁や指定確認検査機関が講じている効果的な取組事例を整理し、各審査機関に対して周知を図ります。
   
(財) 建築行政情報センターのホームページ上に設置している「苦情箱」に寄せられた苦情のうち、特定行政庁や指定確認検査機関の不適切な取扱いの具体的な事例を整理し、各審査機関に対して注意喚起をします。
   
(3) 建築確認手続きに関する運用面の改善・明確化
  大臣認定書の写しの添付や計画変更に係る確認を要しない軽微な変更に関する取扱い等について、事務手続きの合理化や解釈の明確化を図る観点から、建築基準法施行規則等の所要の見直しを行います。

改善例
間仕切りや開口部の変更で、構造安全性、防火・避難性能が低下することのないもの等については、「軽微な変更」として扱い、計画の変更に係る確認申請を要しないこととする。

建築確認申請の際に、構造方法、材料に係る大臣認定書の写しについては、審査機関が認定内容を確認できる書類を有していない等の理由により、申請者に提出を求める場合に限って添付を要することとした。

 

付記

国土交通省が導入した建築確認の二重チェック制度が始まった6月20日以降、約25%の建築物が不合格になっていたことが11月1日、分かった。耐震強度不足の物件はないものの、構造計算書と設計図面の不整合などが多かった。

ーーー

* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

コメントする

月別 アーカイブ