IPCC 第四次報告

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国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は17日、スペイン・バレンシアで開いた総会で最終報告を採択した。
  報告サマリー 
http://www.ipcc.ch/pdf/assessment-report/ar4/syr/ar4_syr_spm.pdf

lPCCは1988年に設立された国連の組織で、各国政府から推薦された科学者が3つの作業部会に分かれ、5、6年ごとに地球温暖化に関する科学的根拠とその影響、対策の3項目について評価を見直す。
今回は90年、96年、01年に次いで4回目。

今回の報告は今年前半に開いた3つのIPCC作業部会の評価報告を統合したもの。

第1作業部会(科学) http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-02-1.htm#ipcc 
第2作業部会(影響) 
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-04-1.htm#ipcc-2
3作業部会(対策) http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/2007-05-1.htm#ipcc-3

国連の潘基文事務総長は会見で、「世界の科学者は一致して、その考えを示した。各国の政策決定者が、12月にバリで開催される国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で同様に行動することを期待する」と述べた。

IPCC報告の骨子は以下の通り。

・温暖化は疑う余地がない
・気温上昇のほとんどは人間活動によってもたらされた
・現在の政策を続ければ温暖化ガスは今後20-30年増加する
・早急な対策がなければ地球の平均気温は今世紀末に最大で6.4度上昇する
・温暖化の進行を抑えるには2050年までに約300兆円が必要
・今後20-30年の努力と投資が温暖化ガスの安定化のカギとなる

まず、気温や水温の増加、雪や氷の溶解、海水面の上昇などから、温暖化は疑う余地がない(unequivocal)としている。

更に、気温上昇のほとんどは人為的な温暖化ガス上昇によることは very likely としている。

温暖化ガス濃度を抑えるなら早期に排出量の削減に転じなければいけないとし、温暖化の緩和策と影響への適応策をとれば、気候変動リスクをかなり減らすことができるとしている。
今後の対策に応じ、今世紀末の気温は
20世紀末比で 1.16.4度上昇、海面は 1859センチの範囲で上がると予測した。

Projected global averaged surface warming and sea level rise at the end of the 21st century
Case Temperature change
( at 2090-2099
relative to 1980-1999)
Sea level rise
( at 2090-2099 relative to
1980-1999)
Model-based range
excluding future rapid
dynamical
changes in ice flow
Best
estimate
Likely
range
Constant year 2000
concentrations
0.6°C 0.3 - 0.9°C Not available
B1 scenario 1.8 1.1 - 2.9 0.18 - 0.38m
A1T scenario 2.4 1.4 - 3.8 0.20 - 0.45
B2 scenario 2.4 1.4 - 3.8 0.20 - 0.43
A1B scenario 2.8 1.7 - 4.4 0.21 - 0.48
A2 scenario 3.4 2.0 - 5.4 0.23 - 0.51
A1FI scenario 4.0 2.4 - 6.4 0.26 - 0.59

温暖化による長期的な影響を5つ挙げている。

 ・Risks to unique and threatened systems
   地球の平均気温が1980-99年レベルの1.5-2.5°C を超えると 20-30%の生物種で
      絶滅リスクが高まる可能性がある。
 ・
Risks of extreme weather events
   旱魃、熱波、洪水が増加する可能性が高い。
 ・
Distribution of impacts and vulnerabilities
   経済的弱者が温暖化の影響を受けやすい。
 ・
Aggregate impacts
   気候変動の市場ベースの利点は温暖化の初期にピークになるが、デメリットは温暖化が進むとより大きくなる。
 ・
Risks of large-scale singularities
   グリーンランドや南極の氷が溶けることからの海水面の上昇のリスクは、モデルによる予想よりも大きく、
   (数世紀ではなく)
1世紀の間に起こる可能性がある。

気候変動の影響は対策により軽減や遅らせることが可能で、安定化のためには次の20-30年間の努力が大きな影響を与える。
温暖化進行を抑えるには
2050年までに全世界のGDPの最大5.5%(300兆円)のコストが必要である。

2050年にCO2換算で 710ppm 445ppm に止めるためのコストはグローバルなGDP -1%5.5%と予測した。
最も厳しい対策で、年平均のGDP成長率の低下は0.12%以下にとどまる。

Estimated global macro-economic costs in 2030 and 2050.
Costs are relative to the baseline for least-cost trajectories towards different long-term stabilisation levels.
Stabilisation levels
(ppm CO2-eq)
Median GDP
reduction (%)
Range of GDP
reduction(%)
Reduction of average annual
GDP growth rates (percentage
points)
2030 2050 2030 2050 2030 2050
445 - 535 Not available < 3 < 5.5 < 0.12 < 0.12
535 - 590 0.6 1.3 0.2 to 2.5 slightly negative to 4 < 0.1 < 0.1
590 - 710 0.2 0.5 -0.6 to 1.2  -1 to 2 < 0.06 < 0.05

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安井先生の「市民のための環境学ガイド」は早速これを取り上げている。 
 2007/11/18 「理想的な温暖化防止対策の枠組みとは」
 
   
http://www.yasuienv.net/LongMitigFW.htm

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* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

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