欧州委員会は12月5日、クロロプレンゴムの市場棲み分けと価格操作を理由に5社に総額 243.2百万ユーロ(約390億円)の制裁金支払いを命じたと発表した。
制裁金支払いを命じられたのは、バイエル、電気化学、旧DuPont Dow Elastomers、ENI、東ソーの5社。
1993年から2002年の間、各社はクロロプレンゴムの市場棲み分けと価格操作を行なったというもの。
Bayerからの情報提供で、2003年3月と7月に各社に立ち入り調査を行なった。
EU Competition Commissioner の Neelie Kroes は、「合成ゴム業界が過去の教訓に学んでいないことに失望する。株主や役員会メンバーがこのような違反行動を容認しているのは理解できない」とのコメントを出した。
各社の制裁金は以下の通り。(単位:千ユーロ)
本来の制裁金 | 減額 | 実際の制裁金 | |
Bayer | 201,000 | 100% | 0 |
東ソー | 9,600 | 50% | 4,800 |
DuPont/Dow (うちDow) |
79,000 (64,900) |
25% | 59,250 (48,675) |
ENI | 132,160 | 132,160 | |
電気化学 | 47,000 | 47,000 | |
合計 | 243,210 |
Bayer は過去にカルテルで摘発されているため制裁金は50%増しとなった。
ENI も同様に60%増しとなった。
但し、Bayerは、最初にカルテルの情報を提供したため、制裁金が100%減額となった。
東ソーと DuPont/Dow も調査への協力で、それぞれ、50%、25% の減額を受けた。
EUはDuPont/Dowのうち、Dow分を48,675千ユーロとしている。
(59,250千ユーロのうち、48,675千ユーロはDuPont Dow Elastomersの分で、10,575千ユーロは1996年のJV設立以前のDuPontの分だといわれる)
しかし、Dow は DuPont Dow Elastomers 解散の際の取り決めで、DuPont負担になるとしている。
両社の50/50JVのDuPont Dow Elastomers は2005年7月1日付けで DuPont 100%子会社の DuPont Performance Elastomers となったが、カルテル問題が起こった場合には、DuPont は150百万ドルまでと、それを超える分の75%を負担することになっているという。
DuPontは、同社が全面的に調査に協力してきたし、倫理と法を遵守してきたとして、今回の決定を批判し、控訴を検討しているとしている。
東ソーは6日、今後の対応については、本決定通知の内容を精査し、弁護士とも協議の上、適切な対応をとる所存と発表した。
電気化学は、今後その内容を精査した上で公正かつ適切に対処するが、欧州第一審裁判所へ提訴することも含め、慎重に対応する所存としている。
Bayerは過去の違反に遺憾の意を表し、1999年に法順守の方針を出したが、2004年にそれを強化したとし、このような法令順守違反は容認できないとしている。
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欧州連合が価格カルテルで制裁を強めるにつれ、企業が判定を不服として欧州司法裁判所に提訴するケースが相次いでいる。
YKK は12月7日、欧州第一審裁判所に提訴した。
欧州委が主にカルテルに関与していたとするのはYKKの独子会社のYKK Stocko Fasteners GmbH だが、1994年にYKKが資本参加し、1997年に全額出資の子会社とした。
カルテルはYKKが資本参加する以前に始まっており、情報開示の不足があったとして、旧オーナーに損害賠償請求をしている。
同子会社は欧州だけで事業を展開しているが、欧州委はYKKの全世界売上をもとに制裁金を科したことを不服としているもよう。
2007年の日本企業が受けた制裁は下記の通りだが、このうち、三菱電機は受け入れたが、送電設備カルテルでは全社が提訴しており、ビデオテープ、板ガラス、今回の合成ゴムについても、各社とも提訴も含め検討している。
EUによる2007年のカルテル制裁 | |||||||||||||||||||||
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参考 2007/12/1 欧州委員会、板ガラスカルテルに制裁金
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* バックナンバー、総合目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
項目別の索引も作成しました。
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