シャープの「21世紀型コンビナート」

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シャープは12月1日、大阪府堺市の「21世紀型コンビナート」の起工式を行なった。

 

シャープは7月31日、新たに大阪府堺市に最先端の液晶パネル工場と、薄膜太陽電池を量産する太陽電池工場を併設することを決定したと発表した。

同社は「環境先進企業」を目標に、省エネの“液晶” 創エネの“太陽電池”を事業の柱として取り組んでいるが、同じ敷地内に関連するインフラ施設や部材・装置メーカーの工場を誘致し、「21世紀型コンビナート」として展開する。

TFT液晶と薄膜太陽電池は同じ薄膜技術をベースにしており、材料やユーティリティなどの共用化が可能で、薄膜太陽電池は液晶技術の応用により、一層の生産性向上が期待できる。

薄膜太陽電池では、液晶パネルと同様、ガラスの上に薄膜シリコンを形成する。
シランガスの供給プラントからガラス基板など、さまざまなハンドリングを共有化。

立地は新日本製鉄の堺製鉄所に隣接する遊休地で、面積は127万m2
(堺製鉄所が1961年に操業を開始、高炉増設や工場拡張をにらんで、大阪湾を埋め立てたが、埋め立て地の完成した1990年春、鉄鋼不況のあおりを受けて、堺製鉄所は高炉を休止。バブル崩壊も重なって土地の買い手が見つからないまま、遊休地となっていた。)

液晶パネル工場に隣接してインフラ関連施設や装置メーカーの工場に加え、マザーガラスやカラーフィルターなど複数の有力部材メーカーの工場を誘致する。

亀山工場で構築した、液晶パネルから液晶テレビまでの「垂直統合型」の事業展開をさらに川上まで推し進め、「企業の垣根を超えた垂直統合型」を目指す。
物流コストの削減、生産計画などのオペレーションの一元化などを行なうとともに、部材・装置メーカーと緊密に連携を図ることで、知識やノウハウを融合し新たな技術革新を図る。

 
                        同社発表から


液晶パネル工場
 ・投資額:約3,800億円(新工場の全土地代含む)
 ・着工:2007年11月
 ・稼動開始:2010年3月までに
 ・主な生産品目:40型・50型・60型クラスの大型テレビ用液晶パネル
 ・マザーガラスサイズ:2,850mm
x 3,050mm(第10世代)
   (60型クラスのパネルが6枚、50型クラスは8枚、40型クラスは15枚取れる)
 ・投入能力 :月72,000枚(稼動当初は月36,000枚)

太陽電池工場について
 ・投資額など:詳細検討中
 ・稼動開始:2010年3月
 ・生産品目:薄膜太陽電池
 ・生産量:年間1,000MW(100万kW)規模(世界最大)

液晶パネル工場の投資額は3,800億円で、部材やガス・電気などインフラ関連の企業の投資額が4,000~5,000億円,さらに太陽電池工場への投資額を加えると投資額は約1兆円といわれている。

大阪府の太田房江知事は、企業立地促進条例を適用して、上限額の150億円を補助する考えを明らかにした。
「10年間で600億円の税収が見込める」との見通しを示している。
大阪府では経済効果として3.9兆円と見込んでおり、総合的かつスピーディーな立地支援を行うため、知事を本部長とする全庁横断的な組織として「シャープ堺浜立地支援本部」を立ち上げている。
また、堺市も操業開始から10年間、固定資産税や都市計画税を軽減するなど優遇策を提示している。

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同コンビナートへの進出企業は次の通り。

ガラス基板 
 ・米 Corning 
   原料のケイ石を溶かす炉まで工場内に建設し,原料からガラス基板までの一貫ガラス工場
   投資額:875億円
   (同社は2006年にシャープとの長期供給契約を締結、三重の第8世代工場の主供給メーカーとなっている。
    2007年2月、静岡工場での1億6千万ドルの増設計画を発表した。)

 ・加えて、近くに工場がある旭硝子からも供給を受ける。

カラーフィルター
 ・大日本印刷
   2007年10月、進出発表
    投資額:435億円
    生産量:第10世代マザーガラス 月間36千枚(インクジェット方式)
    稼動:2010年3月
    (2006年9月からシャープ亀山の第2工場内でインクジェット式第8世代カラーフィルター生産)

 ・凸版印刷
   2007年11月、進出発表
    投資額:420億円
    生産量:第10世代マザーガラス 最大 月間36千枚 (フォトリソ方式)
    稼動:2009年度中
    (2006年からは第8世代を導入し、シャープ亀山工場向けなどに納入)

  * 両社でシャープの能力 月72千枚(稼動当初は月36千枚)に対応

産業ガス
 ・
大陽日酸とエア・ウォーターが合弁会社を設立して進出する。
   社名:堺ガスセンター(大陽日酸 51%/エア・ウォーター 49%)
   投資額:600億円程度(初期投資 約300億円)
   大陽日酸は窒素(酸化防止など)、ヘリウム(冷却)を供給
   エア・ウォーターは酸素(ガラス溶解用)、アルゴン(酸化、窒化防止)などを供給
   
 

超純水
 ・栗田工業
   投資額 100億円超

 他に、関西電力、大阪ガス(いずれもエネルギー供給)

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* バックナンバー、総合目次は 
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
  
項目別の索引も作成しました。

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