ダウは12月13日、クウェート国営石油の子会社 Petrochemical Industries Company (PIC) との間でグローバルな石化JV(50/50)を設立すると発表した。
2007/12/14 速報 ダウとクウェートのPIC、グローバル石化JVを設立
同社は11月6-7日に予定していた機関投資家向けの説明会を延期したため、買収するのか、JV設立か、買収されるのかとの憶測を呼んでいたが、本件が詰めの段階にきていたものと思われる。
同社は12月13日に機関投資家向けの説明会を開催した。
概要及び解説は以下の通り。
1)ダウの基本戦略
ダウの基本戦略は下図の通り、基礎化学品と機能性化学品のバランスが取れ、多角化し、上流から下流までの統合会社で、グローバルに活動し、生産性と信頼性が高い、技術優位の企業となることである。
Business Balance:Basic + Performance
Diverse Portfolio:Major Basics chains + Performance markets
Fully Integrated:Upstream + downstream
Global Reach & Geographic Balance:Customers in 175+ countries, operations in 37
Operational Excellence:Productivity and reliability
Technology Leadership:Process technology and product innovation
2)基礎部門の戦略
2006年3月、同社は原料価格変動の影響を受けやすい基礎部門をAsset light strategy(JV化)により進めることを明らかにした。
Liveris会長は本戦略のメリットとして以下の点を挙げている。
・ 低コスト原料へのアクセス
・ パートナーのローカルな力の利用
・ 設備投資減
・ リスク低減
同社は従来から各地で多くのJVを設立しているが、本年になってから、更に勢いを強めている。
2007/10/5 Dow、JV白書を発表
Asset light strategyは新しい事業をJVでやるだけでなく、従来のダウの事業を出してJVにすることも含んでいる。
これの最初が、今回のJV相手のPICとのMEGlobal(EG)、Equipolymers(PET)である。(後記)
本年1月に同社はPSとPPについて分社化を考えていることを明らかにした。
このうち、PSについては4月10日に、Chevron Phillips Chemical との間で北南米のSM/PSの50/50JV設立のMOUを締結したと発表した。
JV名は Americas Styrenics となった。ダウが出す予定であったブラジルのSMプラントは休止が決まったが、別途、事業撤退を決めたABSプラントをPS用にJVに出すこととなった。
2007/4/11 Dow、Chevron PhillipsとSM/PSのJV設立
今回のJVは当初考えていたPPだけではなくなった。
3)今回のJV
今回のWorld-Class Petrochemicals Company の範囲は以下の通りである。
PE、PP、PC、エチレンアミン、エタノールアミン、
関連技術
下記のオレフィンソース
Fort Saskatchewan, Canada (cracker)
Bahia Blanca, Argentina (cracker)
Tarragona, Spain (cracker and octene manufacturing facility)
なお、ダウの他のクラッカーとはエチレン供給契約を結ぶ。
新会社の売上高は108億ドルで、Fortune 250 に入る。
また、既存のPICとのJVのEQUATE / MEGlobal / Equipolymers と合わせると、
・売上高 140億ドル、
・14箇所の立地、従業員6,300名、
・PE、PP、PC、PETの幅広いプラスチックを供給する世界最大のポリオレフィンメーカーで、
・世界最大のEO/EG/EG誘導品会社の
World-Class Competitive Petrochemical Giant となる。
なお、既存のダウのJVが新しいJVに含まれるかどうか、明らかでないが、アジアのJVについては含まないことが12月17日に明らかになった。
4)PICとの関係
歴史
・1995 Union Carbide と PIC が Equate を設立
・2001 ダウがUnion Carbide を買収、 Equateのパートナーになる
・その後、Equate-2 建設開始
・2004 Equipolymers、MEGlobal 設立(ダウの事業を拠出)
既存JV概要
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5)ダウのPerformance分野
4つのメガトレンド(健康、エネルギー、インフラ・輸送、エレクトロニクス・通信)に対して、ダウの得意とする技術を利用して対応する。
Trend | Human health | Energy | Infrastructure & Transportation |
Electronics & Communication |
Dow の狙う分野 | Food Nutrition Wellness |
Alternative Energy solution Energy efficiency solution |
Construction Water treatment Transportation |
Advanced materials |
対応部門 | Dow AgroScience Dow Wolff Cellulosics Specialty Plastics & Specialty Chemicals |
Dow Building Solutions Dow Hydrocarbons Dow Epoxy |
Dow Automotive Dow Coating Solusions Dow Water Solusions |
Wire & Cables Polyurethanes & PU Systems Advanced Electronics Business |
得意技術 | Biotechnology Water Soluble Materials Advanced Packaging Materials Crop Protection |
Insulation Applied Energy Efficiency CO2 Management Building Integrated Photovoltaics |
Building Materials Advanced Materials Science Filter/Membrance Elements High Throughput Formulation Capability |
Optical Materials PCB Materials Advanced Materials Science Interlayer Dielectircs |
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* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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