12月21日(金)午前11時32分頃に、茨城県神栖市の三菱化学鹿島事業所第2エチレンプラントにおいて、火災事故が発生し、協力会社従業員4名が亡くなった。
1 発生日時 2007年12月21日(金) 午前11時32分頃
(午後11 時13 分に鎮火)
2 発生場所 三菱化学社 鹿島事業所第2エチレンプラント内
分解炉(2F-208)クエンチフィッティング元弁フランジ部
付記 同社中間報告資料(12月27日)から
事故の詳細は以下の通り。(同社発表)
第2エチレン製造設備では、原料ナフサを分解炉(管式)で熱分解し、水素、メタン、エチレン、プロピレン、ブタジェン、ベンゼン、重質燃料油等の分解ガスを生成する。
分解炉からの高温(840℃)の分解ガスは急冷熱交換器で一次冷却され、更に急冷油により約200℃まで直接冷却される。
漏洩は、このクエンチフィッティング(直接冷却)装置へ急冷油を送る配管のフランジ部で発生した。
当該分解炉(2F-208)は12/17から12/20まで灯油分解を行い、12/20 16:45 から12/21 03:10 までデコーキング(系内の炭素分の除去)を行なった。
その後、11:20から通常運転に復帰させるため、縁切弁(AOV)の仕切り板の抜き出し作業を行なっていた。
その作業の最中に何らかの原因で縁切弁が開いて、急冷油が漏洩し、何らかの原因で着火、火災に至った。
第2エチレンには分解炉が8つあり、事故のあった分解炉 2F-208 は2006年稼動の第8炉。能力は最大150千トンで、ナフサのほか、灯油や軽油、コンデンセート(天然ガス随伴原油)などが使用でき、価格が高騰しているナフサ以外の原料が20%まで対応可能とされる。事故前日まで灯油を使用していた。
三菱化学のエチレン能力は以下の通り。(2006/12/末時点 単位:千トン/年)
定修あり 定修なし 全国比
(定修なし)鹿島第1 375 410 5.1% 鹿島第2 476 516 6.4% (小計) (851) (926) ( 11.5%) 水島 450 496 6.2% 三菱合計 (1,301) (1,422) 17.7% 全国 〔7,289〕 〔8,023〕
*同社の四日市事業所のエチレンプラント(270千トン)は2001年1月12日に停止している。
三菱化学鹿島コンビナートは以下の構成で、多くの企業が多岐に亘る製品を製造している。
(能力の一部は若干古い数字 単位:千トン/年)
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事故を受け、第2エチレンは操業を停止、第1エチレンのみ操業している。
上記の各社の製品の原料であるエチレン、プロピレン、B-B留分(C4)、ベンゼン、トルエンなどの56%がカットされることとなる。
三菱化学では当面は他社への供給を優先し、自社グループに基礎原料を送るのを止めた。
このため、日本ポリエチレン、日本ポリプロなどは生産を停止した。
三菱化学では同業他社に応援を要請している。また、鹿島の稼働率低下で不要になったナフサを他のコンビナートが引取る。
しかし、各社とも高水準の生産を行なっているため、余力に限界がある。
化学業界の生産・製品供給への影響は避けられない。
付記
三菱化学は12月25日、同日現在のプラント稼働状況を発表した。
【現時点で停止中のプラント】
(1)第2エチレンプラント
(2)第2ベンゼンプラント
(3)ポリエチレン A,B,C 全系停止 →12/26 一部運転を再開
(4)ポリプロピレン B,C 全系停止 →12/26 一部運転を再開
【稼動調整中のプラント】
(1)酸化エチレン・エチレングリコール 60%稼動
(2)エチルベンゼン 60%稼動
(3)キュメン 60%稼動
(4)フェノール 60%稼動
付記ー2
同社は12月27日、経済産業省 原子力安全・保安院および茨城県に対し、中間報告資料を提出した。
http://www.m-kagaku.co.jp/newsreleases/2007/20071228-2.html#tmp1
参考 |
付記 2008/1/9 三菱化学鹿島事業所 火災事故 その後
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* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
三菱化学の今回の火災でパッケージメーカーや界面活性剤のメーカーにきちんと玉が供給出来るのか、きっちり公表していただきたい。我が社は、下の下の化粧品メーカーですが、きっちり、原料がサプライヤーさんから供給出来るのか不安に感じています。おそらく4月くらいからは、少しパニック状態になると、私は思っております。
逐一、状況は川上のメーカーさんに伝えてください。