重慶ケミカルパークで2007年12月に、一つのメタノール計画が商業生産開始の式典を、他の一つの計画(三菱ガス化学が参加)が定礎式を執り行った。
いずれも原料は同地の天然ガス田からの天然ガスである。
国家発展改革委員会(NDRC)は2007年夏に、新しい天然ガス活用政策を発表した。
限られた天然ガスの消費を最適化し、省エネを推進することを狙い、2007年8月30日以降、天然ガスを原料とするメタノールの生産を禁止した。
2007/9/7 四川-上海の天然ガスパイプライン「川気東送プロジェクト」工事開始 後半部分
この結果、前者の第二期計画は実現不可能となった。
三菱ガス化学の計画は、8月30日以前に事業実施の承認を得ており、かつ、それまでに天然ガスの供給契約を締結しているため、禁止の対象外となる。おそらく、中国での最後の天然ガス原料のメタノールプラントとなる。
1)KingBoard Chemical Holdings (建滔化工集団)
香港のラミネート会社 KingBoard Chemical は12月17日、重慶ケミカルパークでメタノール工場の商業生産開始の式典を行なった。
2005年の第2四半期に建設を開始し、本年8月に完成した。
能力は45万トンで、運営は KingBoard 天然ガス化学 (重慶) 社が担当する。
原料の天然ガスは同地の天然ガス田から供給を受ける。
製品メタノールは揚子江の水運を利用して中国東部の市場に輸送する。
KingBoard では当初、第一期の完成後、市場の状況にもよるが、能力を135万トンまで拡大することを検討していた。
しかし、上記の規制により、増設は不可能となった。
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KingBoard Chemical Holdings (建滔化工集団)は1998年に香港で設立されたラミネートを製造する会社で、中国各地に工場をつくるとともに、ラミネート原料に遡及してきた。
メタノールについては、KingBoardは重慶計画に先立ち、中国海洋石油との合弁会社 CNOOC-KBChemical (CNOOC が60%、KingBoard が40%)を設立して、 2006年9月から海南島の東方市で 60万トン/年の天然ガスベースのメタノールを生産している。
184百万ドルを投じたもので、ルルギ技術を採用、CNOOCの東方市近辺のガス田からの天然ガスを原料とする。
KingBoard はまた、2007年3月に河北省Xingtai 市の内丘で100万トンの固焦炉コークス、10万トンのメタノール、12千トンのベンゼンの建設を開始した。第一期と同じ能力で、完成すればメタノール能力は合計20万トンとなる。
ここでは更に、河北省に本拠を置く上場会社、Jinniu (金牛)Energy Resources との合弁で大規模メタノール事業を計画している。
450百万ドルを投じて、年産180万トンの石炭ベースのメタノールを生産するもので、KingBoard が60%、金牛が40%を出資する。
現在FS中で、完成時期は未定。
これに加え、原料の石炭を確保するため、金牛51%、KingBoard 49%出資のJVの石炭会社を設立する予定。
同社は山西省呂梁でも、コークス180万トン、メタノール20万トンの石炭化学プロジェクトをもっている。
NDRC は2006年7月に通達を出し、小規模石炭化学を禁止した。(乱立防止)
年産300万トン未満の石炭液化、100万トン未満の coal-to-methanol とDMT、60万トン未満のcoal-to-olefin は禁止された。上記のKingBoard の河北省Xingtai 市(メタノール10万トン)、山西省呂梁(メタノール20万トン)は、いずれも、禁止対象の石炭液化によるメタノール生産ではなく、コークス炉のオフガスを原料とするため、規制から外れる。
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2)三菱ガス化学
三菱ガス化学と重慶化医集団の合弁のメタノール計画の定礎式が2007年12月26日、副市長その他の出席のもと、重慶市の重慶ケミカルパークで行なわれた。
投資額は21億人民元(約290百万ドル)で、公称能力は年産85万トンだが、重慶化医集団によると、実能力は100万トンになるという。
本年上半期に着工し、2010年の下半期のスタートを目指す。
2004年8月に国家発展改革委員会(NDRC)から詳細事業化調査を行う正式許可を得て、FSを続けていた。
当初の計画では、2005年上半期に三菱ガス化学 51%、重慶化医 49%出資で JV を設立し、投資額 2億ドルで、2008年建設完了を予定していた。
重慶化医集団によると、2007年7月5日に事業実施の承認を取得した。
(このため、8月30日からの天然ガス原料によるメタノール新規事業禁止から外れる)
注. 本件には不思議な点がある。
この記事は重慶ケミカルパークのホームページに記載されており、式の写真も載っているので、
式典が行なわれたことは事実である。
しかし、三菱ガス化学側は何も発表していない。
三菱ガス化学としては本事業をやるかどうかについて、まだ結論を出していないとしているとの情報もある。
中国側の今回の発表も、合弁会社の社名や出資比率などを明らかにしていない。
上記の天然ガス規制などに関連して(承認取り消しを恐れて)、中国側が実績つくりをしている可能性もある。
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なお、三菱ガス化学では南京市の南京ケミカルパークにメタノール誘導品の子会社を設立している。
2006年4月に建設を開始し、昨年9月に完成、11月から試運転に入っている。
社名: 菱天(南京)精細化工 Lingtian (Nanjing) Fine Chemical Company Ltd.
出資:三菱ガス化学 85.1%
伊藤忠ケミカルフロンティア 10.0%
伊藤忠商事 4.9%
製品:ジメチルアミン、ジメチルホルムアミド(40千トン)及びジメチルアセトアミド(10千トン)
第二期計画として、トリメチロールプロパン
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参考 2007/10/2 内蒙古で100万トンのメタノール工場竣工
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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