資源大国 日本

| コメント(0)

独立行政法人物質・材料研究機構は1月11日、危惧されている将来の金属資源の利用に対して、「都市鉱山」(アーバン・マイニング)と呼ばれるこれまで国内に蓄積されリサイクルの対象となる金属の量を算定し、わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵する規模になっていることを明らかにした。

  「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」 
      
http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/pdf/press215.pdf

レアメタルやレアアースなど多様な機能を発揮する金属元素は枯渇性資源と呼ばれ、資源リスクは著しく増大している。
これに対し、「減量」、「代替」の重要性が指摘され、「希少資源・元素戦略」の研究プロジェクトが2007年から動き出している。
今回は、資源リスクを軽減させる、もうひとつの有力候補であるリサイクルの可能性を定量的に表した。

計算には貿易統計が用いられるが、産業連関表を用いて、部品や製品を通じて輸出される素材の割合を推定し、その割合を、工業統計から得られる部品などへの部材需要に掛け合わせることで、製品としての海外流出量を差し引いて計算した。

計算結果は以下の通り。

金属 世界の年間消費(A)
        (トン)
世界の埋蔵量(B)
       (トン)
わが国の
都市鉱山蓄積(C)
      (トン)
(C/B)
  (%)
(C/A) 埋蔵量
国別順位
 
アルミニウム Al     177,000,000  25,000,000,000     60,000,000   0.24   0.3   12  
アンチモン Sb        112,000      1,800,000       340,000  19.13   3.1   3  
クロム  Cr      20,000,000    810,000,000     16,000,000   2.08   0.8   4  
コバルト Co        57,500      7,000,000       130,000   1.87   2.3   6  
銅 Cu      15,300,000    480,000,000     38,000,000   8.06   2.5   2 ①チリ
金 Au         2,500        42,000        6,800  16.36   2.7   ①  
インジウム In          450        2,800        1,700  61.05   3.8   ①  
鉄  Fe     858,000,000  79,000,000,000   1,200,000,000   1.62   1.5   11  
鉛 Pb      3,300,000     57,000,000      5,600,000   9.85   1.7   ①  
リチウム Li        21,100      4,100,000       150,000   3.83   7.4   6  
モリブデン Mo       179,000      8,600,000       230,000   2.69   1.3   6  
ニッケル Ni      1,550,000     64,000,000      1,700,000   2.70   1.1   9  
白金 Pt          445       71,000        2,500   3.59   5.7   3 ①南ア ②ロシア
レニウム Re       123,000     88,000,000       300,000   0.35   2.5   6  
銀 Ag        19,500       270,000       60,000   22.42   3.1   ①  
タンタル Ta         1,290        43,000        4,400   10.41   3.5   3 ①豪 ②タイ
スズ Sn       273,000      6,100,000       660,000   10.85   2.4   5  
タングステン W        73,300      2,900,000        57,000   1.97   0.8   5  
バナジウム V        62,400     13,000,000       140,000   1.08   2.2   4  
亜鉛  Zn      10,000,000    220,000,000     13,000,000   6.36   1.4   6  

注 (A)、(B)は米国鉱山局 2006年データ

電子部品などに多用され今後世界的な需要増と供給リスクが予想される金、銀が、それぞれ、16%、22%と、世界の現有埋蔵量に比べても大きな影響を与える規模の都市鉱山が国内に存在している。
おなじく電子部品などに用いられるタンタルTaやスズSnも世界の現有埋蔵量の1割を超える蓄積量となっている。
なお、同じく比率の高いアンチモン Sbはプラスチックの難燃助剤として用いられる元素である。
また透明電極としてディスプレイや太陽光発電に用いられるインジウム In の比率が極めて大きいのも特徴的である。

多くの金属について、世界の2~3年相当の消費量に匹敵する蓄積がわが国の都市鉱山にはある。
特に、電池材料として期待されているリチウムLi 、触媒や燃料電池電極として不可欠とされる白金Ptでの蓄積量が大きい。

しかしながら、現状ではこのような国内の都市鉱山資源が、使用済製品の廃棄物処理で、本来得られる価値よりも安価に放出されている。

物質・材料研究機構では、都市資源をある程度金属を取り出しやすくした、天然資源で言う「精鉱」のようなかたちで付加価値をつけた取引にすべきであると考えられるとし、そのような「都市鉱山」からの「都市鉱石づくり」とでも呼べるようなシステムを今後提案していくとしている。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

コメントする

月別 アーカイブ