アラブ首長国連邦アブダビの国際投資会社IPICはこのたび、カザフスタンの国営石油・ガス会社のKazMunayGas との間で、西カザフスタンで石油化学コンプレックスを建設する覚書を締結した。現在、FSを実施中。
IPIC (International Petroleum Investment Company) はアブダビ国営石油会社 ADNOC が50%、アブダビ投資公社とアブダビ国営銀行のJVが50% 出資する会社で、アブダビ政府の石油・化学分野での海外投資を担当する。
デンマークの石油会社 Borealis は当初はStatoil 50%、Neste 50% のJVであったが、現在は IPIC が65%、オーストリアのOMVが 35% 出資となっている。
カザフスタンには現在、KazMunayGas が15%、私企業で多角化したコングロマリットのSat & Company が85%出資する合弁会社 Kazakhstan Petrochemical Industries (KPI:旧称 Atoll ) のAktau Polystyrene Plant (SM 300千トン/ PS 54千トン) と Atyrau Polypropylene Plant (PP 30千トン)がある。
カザフスタン政府は世界市場でのプレーヤーになることを目指し、海外大手と提携して石油化学コンプレックスを建設することを決めた。
KazMunayGas とSat & Company のJVのKPI で、西カザフスタンの天然ガスを利用して大規模石油化学コンプレックスを建設することとした。
Shellや韓国のLG、中国企業などが提携相手として挙げられた。
第一期として、Tenghiz ガス田のドライガスからKulsary 近郊でエタン抽出を行い、Atyrau でエタンクラッカーとプロパン脱水素設備、PE、PPプラントを建設し、第二期ではKashagan ガス田のドライガスを利用してコンプレックスを拡大するというもの。
第一期はエチレン120万トン、プロピレン40万トン、HDPE 40万トン、LLDPE 40万トン、PP 40万トンを考えており、12億ドルの投資を想定、最終的にはPE 150万トン、PP 45万トンを計画している。
Tenghiz ガス田は1993年から開発されている。
開発会社はTengizchevroil で、株主はChevron (50%)、ExxonMobil (25%)、KazMunayGas (20%) とロシアのLukArco (5%) となっている。
KazMunayGas は現在、Chevron との間で、ガスの価格を交渉している。Kashagan ガス田はカスピ海北部にある海上ガス田で、Eni が主体で開発しており、日本の国際石油開発 (Inpex) も参加している。
出資比率は、Eni (18.52%)、Shell (18.52%)、Total (18.52%)、ExxonMobil (18.52%)、ConocoPhillips (9.26%)、KazMunayGas (8.33%)、Inpex (8.33%)。参考 2007/9/6 カザフスタンの石油開発中断
2008年1月14日、カザフスタン政府はKashagan 油田の持分変更で合意したことを発表した。17.8億ドルを支払い、KazMunayGas持分を倍増し、トップ4社に並ぶ。スタート時期は2011年末に延期された。
新比率 KazMunayGas、Eni、Shell、Total、ExxonMobil 各16.81%
ConocoPhillips 8.40%、Inpex 7.55%
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2005年12月、Foster Wheeler はKazMunaiGas との間で新しい石油化学コンプレックスの詳細FS実施契約を締結した。
2006年3月にBasell はKazMunayGaz とSAT との間でこの石化計画参加の覚書を締結した。2010年のスタートを目指すとした。
Sat がKPI の持株のうち35%をBasellに譲渡し、Sat 50%、Basell 35%、KazMunayGaz 15% 出資とすることも含まれている。
しかし、その後の進展は報道されていない。
今回の IPICとの覚書締結はこれに代わるものと思われる。
IPICは現在 110億ドルの海外投資を行なっており、2007年初めには、世界の石油・エネルギー産業での戦略的投資者として5年間で海外投資を200億ドルまで増やす方針を明らかにしている。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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