殺虫剤最大手のアース製薬が3位のフマキラーの筆頭株主になったことが、1月19日の日本経済新聞で報じられ、各紙がフォローした。
フマキラーの創業者一族の大下(おおしも)高明氏が8.5%を所有するが、アースは市場で買い進め、わずかだがこれを超えて筆頭株主になった。
国内の殺虫剤市場は成長が頭打ちで、販売促進競争が過熱気味となっており、これに対処するため経営統合を目指しているとみられている。また、フマキラーの海外の営業基盤もアースにとって魅力である。
アース製薬はこの報道を受け、フマキラーに正式に経営統合を申し入れした事実はなく、株式取得はあくまでも「純投資」が目的、としている。しかし、1997年ごろから取得を始めており、今後も買い進める方針。フマキラーに非公式に経営統合を打診したことも認めており、「統合する場合は合意のもとで行いたい」としているという。
フマキラーは、アースからの具体的な提案はなく、経営統合を検討したことはない、としている。
なお、フマキラーでは2006年5月に、買収防衛策を決めている。
特定株主グループの議決権割合を20%以上とすることを目的とする買付行為に対して、
1)大規模買付情報の提供を求め
2)取締役会による評価、検討を行なうというもの。
ルール遵守しない場合には、新株発行等の対抗措置を取る。
ルールを遵守した場合、反対意見の表明などはありうるが、原則として対抗措置とらない。
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フマキラーによると、国内の家庭用殺虫剤市場は約1,000億円となっている。
国内の家庭用殺虫剤市場(2007年:フマキラー推定)
- 種類別 電池式 75億円 マット式 18 リキッド式 139 線香 92 蝿・蚊エアゾール 113 ゴキブリ 〃 129 不快害虫 〃 155 医薬品(薬局扱い) 115 その他 158 (合計) 995 :
害虫別 蚊 388億円 蚊・蝿 113 ゴキブリ 209 ダニ 59 蟻・蜂その他不快害虫 154 ねずみ 42 その他 30 (合計) 995
アース製薬、大日本除虫菊(金鳥)、フマキラーが熾烈な競争をしており、これに、大正製薬の殺虫剤「ワイパア」の商標貸与を受けた白元、中外製薬の「バルサン」事業を譲受したライオンの5社で全国シェアの9割以上を占めている。
このほか、蚊取り線香の発祥の地の和歌山県有田市近辺などに多数のメーカーがある。
蚊取り線香の歴史については 2006/8/21 蚊取り線香物語 ピレスロイドの歴史
これに対して、同じくフマキラーによると、全世界の家庭用殺虫剤市場は約 6,000億円(小売ベース)で、アジアが50%を占めている。
世界の家庭用殺虫剤の地域別シェア(フマキラー推定)
: アジア 日本 17% インドネシア・ 4 インド 5 その他 24 合計 50% 北米 20% 中南米 13% 欧州・アフリカ 17% 合計 100%
フマキラーはインドネシア、インド、マレーシアに合弁会社を持ち、10カ国で現地ライセンス生産を行い、68カ国に輸出している。(77カ国で同社のブランドで販売している)
同社の2007年3月期の連結売上高201億円のうち、海外売上高は52億円で、25.7%を占めている。
フマキラー株式の4.8%を所有し、第3位株主のエステーは、フマキラーインドネシアで消臭芳香剤を生産している。
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フマキラーは1890年に大下(おおしも)回春堂(薬種商)として創業、1920年に専売特許殺虫剤「強力フマキラー」を開発した。
1924年に株式会社とし、1962年にブランド名をとって、社名をフマキラーに変更した。
(フマキラーの名は、Fly, Mosquito Killer 「ハエ・蚊・キラー」から取っている)
1967年に世界ではじめての電気蚊取「ベープ」を開発した。
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アース製薬は1892年に木村秀哉が大阪で創業、1916年に炭酸マグネシウムの国産化に成功した。
1925年に木村製薬所を設立、1929年に家庭用殺虫剤アースを発売、その後、蚊取り線香、エアゾールを発売した。
1964年にアース製薬と改称したが、その後倒産、1970年に大塚製薬が資本参加し、大塚グループに入った。
1973年に「ごきぶりホイホイ」発売で売上を伸ばし、1978年には水を注いで蒸散させる「アースレッド」を発売している。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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