JT、日清食品、加ト吉の冷凍食品事業の統合が、冷凍ギョーザ事件の関連で中止となった。
2007年11月に3社は「加ト吉、JT 及び日清食品における冷凍食品事業の統合について」の発表を行なった。
先ず、JTがTOBで加ト吉を100%子会社とし、
日清食品がこれに49%を出資し、
JTと日清の冷凍食品事業を加ト吉に移管するというもの。
これにより、売上高 約2,600億円の日本最大級の冷凍食品メーカーが誕生する。
加ト吉 1,960億円
JT 500億円
日清食品 150億円
合計 2,600億円2007年4月に、加ト吉が過去6年にわたって組織ぐるみで循環取引による巨額の架空売上を計上していたことが発覚した。
冷凍クリや健康食品を伝票上で売り買いし、実際には倉庫に保管されたまま名義変更だけが繰り返され、伝票上で数百億円の取引を行っていた。
このため社長がJT出身者に代わり(JTは2000年に加ト吉の株式5%を保有)、JTによる加ト吉救済が取り沙汰されていたが、即席めん以外の事業の拡大を模索している日清食品が加わることになった。また、これを機に、JTが日清食品に5%程度の出資をする交渉が進められた。
日清食品には米投資ファンドのSteel Partners が約19%の株式を保有しており、JTの出資はスティールにTOB を仕掛けられた時に、JTがホワイトナイトとして乗り出す大義名分にもなる。
その場合には、JTが日清食品を傘下に収める大型再編にも発展し得るとみられていた。
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今回のギョーザ事件を受け、日清食品は、「取引先などから日清食品がこの問題に主体的に取り組むべきだとの声をいただいた」ため、加ト吉への出資比率を当初予定の49%から過半に引き上げることをJTに打診した。
しかし、JTは「今回の問題を起こしたのは当社であり、問題を前に逃げるようなことはできない」とし、これを拒否、「統合解消が唯一の方策との結論に達した」という。
JTによる日清食品への出資構想も見直すことになる。
なお、JTは加ト吉株式を2007年11月28日から12月26日までに行った公開買付けにより、93.88%保有しており、早い段階で同社を100%子会社とする予定。
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JTはタバコ事業のほかに、医薬事業と食品事業の拡大を図っている。
医薬事業では1998年に鳥居薬品を買収した。
食品事業では「飲料・加工食品・調味料の三つの事業を柱に、綜合食品メーカーとしてトータルな“食”の世界を提案」するとしている。
飲料事業では1998年に(現)ユニマット・ホールディングスから自動販売機事業部門のユニマットコーポレーションの66.7%を買収した。
1999年に同社の社名をジャパンビバレッジに改称した。
JTの飲料事業では、コーヒーの「Roots」を基幹ブランドとし、ジャパンビバレッジ等を中心として事業を拡大している。
加工食品事業では、JTは1998年に米国 Pillsbury Companyとの協業による加工食品事業への本格参入以降、事業の拡大・強化を行なってきた。
1999年1月、JTは旭化成から同社の食品事業に係わる営業資産および関連子会社株式を買収する基本合意書を締結した。
譲渡対象は、旭化成の食品事業(冷凍食品、調味料、ベーカリー、製パン原料等)の資産、ならびに子会社8社(旭フーズ、サンバーグ、一品香食品、旭食材、ヨンゴー、日本食材加工、タイフーズ・インターナショナル、ハンス・コンチネンタル・スモールグッズ)である。
旭化成の食品事業は、昭和10年の調味料の事業化に始まり、その後、冷凍食品及び旧東洋醸造合併により加わったベーカリー・製パン原料、さらに豪州における畜肉加工事業等幅広く展開し、当時、年間売上高で約480億円(連結ベース)規模の事業となっていた。
旭化成では、新しい「事業ポートフォリオ戦略」に沿った事業構造の変革を推進しており、競争優位事業群を軸とした「選択と集中」が必須と考え、この観点から食品事業をJTに譲渡した。
ベーカリーの分野では、JTは2002年にサンジェルマンを100%子会社としている。
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今回のギョーザ事件では、JTは食品メーカーとしての対応を完全に誤った。
日清食品の安藤社長は2月6日の記者会見で、JTの中毒事件への対応について質問され、次のように答えている。
「あまりコメントすべきではないが、食品会社は中毒事件を起こせば即刻対応するのが基本。
(日清食品とJTでは)現状認識が全く違う」
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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