武田薬品工業は2月4日、Amgen Inc.との間で、Amgen が保有する癌、炎症、疼痛などの疾患領域における臨床開発品目に関するライセンス契約を締結すると同時に、同社の日本の100%子会社であるアムジェンK.K.の株式譲渡契約を締結したと発表した。
Amgen は、アムジェンK.K.の全株式を武田薬品に2008年3月末までに譲渡する予定で、譲渡後は、アムジェンK.K.は武田薬品の100%子会社としてAmgenからライセンスを受けた品目の開発業務を担当する。
アムジェンK.K.は1992年設立で、資本金475億円、従業員は派遣・契約社員含み161名。
今回のライセンスは、抗癌剤の Motesanib diphosphate と、Panitumumabを含む 12品目の抗体医薬などのバイオ医薬品(うち1品目は、今後、最終的に契約対象とするかどうかを決定)の合計13の品目が契約対象となっている。
抗癌剤 Motesanib diphosphateは、米国で2006年9月、欧州で2006年11月に承認を取得し、日本でも非小細胞肺がんの適応で承認申請準備中で、他のがんでも開発を続けている。
Panitumumabは、がん細胞が増殖するために必要な信号を受け取る受容体(EGFR)を阻害して、細胞の増殖を停止させたり、細胞死を誘導する薬剤で、分子標的治療薬あるいは免疫抗体療法と呼ばれる。
FDAは2006年9月、転移性大腸がん治療薬として承認した。
今回の契約内容は次の通り。
Motesanib diphosphate | Motesanib diphosphate 以外 | |
武田の権利 | 日本での独占的開発・販売権 海外でのAmgen との共同開発・販売権 |
日本での独占的開発・販売権 |
契約一時金 | 100百万米ドル | 200百万米ドル |
武田の開発費負担 | 日本における開発費全額 海外における開発費の60% |
日本における開発費全額 海外における開発費の一部(最大 340百万米ドル) |
マイルストン支払い (目標達成時) |
最大 175百万米ドル (1、2番目の効能取得にかかる開発の進捗に応じ) |
最大 362百万米ドル (開発の進捗に応じ) |
ロイヤルティ支払い | 日本での販売額に応じたロイヤリティ (10%以上:double digit royalties ) |
販売額に応じたロイヤルティ (10%以上:double digit royalties) |
海外販売から得られる利益 | 武田薬品とAmgen が等分 | ー |
Amgen 会長兼社長兼CEOの Kevin Sharer は、「今回の武田薬品との契約締結は、当社にとって今後10年間の成長を加速させるものである。当社の開発パイプラインが、日本ならびに世界中の患者にとって革新的な治療薬となりうると高く評価されたものと考えている」と述べている。
長谷川閑史武田薬品代表取締役社長は、「Amgen から導入した品目は、当社の重点領域である癌、骨・関節疾患領域などにおける研究開発パイプラインの強化に資するものである」と今回のライセンス契約を高く評価している。
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武田薬品はゲノム情報の活用などを通じて創薬ターゲットの探索力強化を図ってきた。
2003年8月にキリンビールのヒト抗体作製技術に関するライセンス契約を結んだのを皮切りに、数々の抗体作製技術の導入を進めてきた。
キリンビールは、独自に開発した巨大なヒト遺伝子を導入する技術を用いて、ヒト抗体産生マウスを完成させた。
1999年に米国 Medarex, Inc. と ヒト抗体産生マウス事業について全世界で包括的な提携を結び、KMマウス(両社の頭文字をとった世界最高レベルのヒト抗体産生マウス)を開発し全世界で完全ヒト抗体技術を提供している。武田薬品はキリンビールのヒト抗体産生マウス技術を用いて、武田薬品の選んだ抗原に対し完全ヒト抗体を作製し、全世界で治療薬および診断薬の開発、製造、販売を行うこととした。
2007年11月に同社は米国に Takeda America Holdings の100%子会社として、Takeda San Francisco, Inc. を設立した。
バイオ医薬産業の集積地であるサンフランシスコに設立した同社を武田グループの抗体医薬研究機能の中心と位置付け、同研究を加速することにより、抗体医薬の創製・開発・活性強化・製造などについて高い技術を備えた基盤の構築と早期上市を目指す。
長谷川社長は、「Takeda San Franciscoは当社の抗体医薬研究を加速させる重要なステップです。当社は、優秀な人材確保と積極的な研究投資を通じて、自社研究の推進および他社との共同研究・提携あるいは買収などあらゆる可能性を追求し、抗体医薬研究を加速してまいります。これと並行して、抗体医薬以外のバイオ医薬、核酸医薬や再生医薬などの新たな創薬技術を確立することにより、自社研究開発パイプラインのさらなる強化に取り組んでまいります」と、述べている。
今回のAmgen との提携はその基盤強化の一環である。
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Amgen は1980年にAMGen (Applied Molecular Genetics) として設立され、1983年にAmgen と改称した。
1983年と85年にAmgen は2つの製品を出した。
EPOGEN(R)(Epoetin Alfa):1983年開発、1987年特許
遺伝子工学のテクノロジーによって作られた蛋白質で、腎臓に障害のある患者に用いられ、赤血球の生産を刺激・制限することで、患者の貧血の比率を低下させるNEUPOGEN(R)(Filgrastim):1985年開発、1985年特許
癌患者のための新薬で、骨髄を刺激し、感染症に対する免疫機能を有する白血球細胞の増殖を促進する。
1992年に売上高が10億ドルを突破、1996年に20億ドル、1999年に30億ドルを突破した。
2001年12月、Amgen は抗炎症剤に強い生物薬剤メーカーであるImmunex を約160億ドルで買収すると発表、2002年7月、買収が完了した。
なお、バイオテクノロジーでAmgen と争っていたGenentech (Herbert Boyer らが1976年に設立、ヒトインスリンとヒト成長ホルモンの大量生産に成功)は1990年にRoche Holdingの傘下に入っている。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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