独禁法改正案

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独禁法改正案の国会提出について、3月11日に閣議決定された。

2006年1月施行の改正独禁法で、施行後2年以内に、改正法の施行状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、課徴金に係る制度の在り方、違反行為を排除するために必要な措置を命ずるための手続の在り方、審判手続の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされている。

この規定を踏まえ、「独占禁止法基本問題懇談会」が2007年6月に報告書をまとめた。

報告書の骨子と経団連の見解は以下の通り。

懇談会の報告書 経団連の見解
主犯格の課徴金を引き上げ、調査協力企業の課徴金を引き下げ おおむね賛成。
ただ、法令順守対策を講じている企業の課徴金は引き下げを。
課徴金の対象を不当廉売などを理由とする「排除型私的独占」に拡大 課徴金を科すには違反行為とそうでない行為の境界があいまい。
課徴金を科す違反行為の「時効」(3年)を欧米(510年)を視野に見直し 「時効」の論議は、前回(05年)改正時に決着済み
現在の公取委の審判制度は当面、維持 反対。訴訟手続きに委ねるべき
課徴金と刑事罰の併科は維持 法人制裁は課徴金に一本化。または、公取委がどちらかを選択する制度に。

特に、審判制度については経済界などからは「公取委は検事と裁判官を兼ねている」という強い批判があった。
公取委はこれに対し、問題なしとして審判制度の維持を主張したが、政界からの反対も強く、審判制度を大幅に見直す方針を固めた。

今回の改正案では、付則に、「
審判手続に係る規定について、全面にわたって見直すものとし、平成20年度中に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるもの」とした。

 

改正案の概要は以下の通り。

1 課徴金・排除措置命令関係
(1) 課徴金の適用範囲の拡大

 従来のカルテルに加え、以下のものについても課徴金を科す。

  (ア) 排除型私的独占

他の事業者の事業活動を排除することによる私的独占

  (イ) 不当廉売,差別対価,共同の取引拒絶,再販売価格の拘束
    (同一の違反類型を繰り返した場合)

正当な理由がないのに、競争者と共同して、ある事業者に対し供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限する等の行為

不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品又は役務を継続して供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

正当な理由がないのに、自己の供給する商品を購入する相手方に対し、その販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させること、その他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束する条件をつけて当該商品を供給する等

  (ウ) 優越的地位の濫用

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、継続して取引する相手方に対し当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させる等の行為
・押し付け販売,経済上の利益を提供させる行為(協賛金・従業員派遣),受領拒否,不当返品等

  (エ) 不当表示【景品表示法の改正】

・違反行為の対象商品等につき1億円以上の売上げ
・ただし,一定の注意義務を果たしていた場合は除く。

  これらに対する課徴金(違反行為に係る売上額に対する率)は以下の通り。

  製造業等 小売業 卸売業
不当な取引制限
 (中小企業)
 10%
 (4%)
 3%
1.2%
 2%
(1%)
支配型私的独占  10%  3%  2%
(ア)排除型私的独占   6%  2%  1%
(イ) 不当廉売等
  (繰り返し)
  3%  2%  1%
(ウ)優越的地位の濫用       1%
(エ)不当表示       3%

(2) 主導的役割を果たした事業者に対する課徴金の割増算定率

   対象:カルテル・入札談合等
   
課徴金:5割増(大企業・製造業等の場合10%⇒15%)

   「主導的役割を果たした事業者」:

単独で又は共同して、当該違反行為をすることを企て、かつ、他の事業者に対し当該違反行為をすること若しくはやめないことを要求し、依頼し、又は唆し、当該違反行為をさせ、又はやめさせなかった者

(3) 課徴金減免制度の拡充

   現行は最大3社、改正後は最大5社(但し、調査開始後の対象は最大3社) 
     例)調査開始前2社+開始後3社(計5社)
       調査開始前1社+開始後3社(計4社)  

   減額率は①100%、②50%、③~⑤30% (但し、調査開始後は全て 30%)

   一定の要件を満たす場合に、同一企業グループ内の複数の事業者による共同申請を認め、
   すべての共同申請者に同一の順位を割り当てる。(1社として扱う)   

(4) 事業譲渡等が行われた場合の課徴金納付命令等に係る名宛人の取扱い(事業を承継した一定の企業に対しても命令)

(5) 課徴金納付命令等に係る除斥期間の延長(3年⇒5年)

(参考)

法令等 国税通則法
(過少申告,無申告,不納付)
米国・反トラスト法
(カルテル等)
EU・競争法
(カルテル等)
除斥期間 加算税:5年
重加算税:7年
刑事罰:5年 制裁金:5年
(最長10年)

このほか、以下の規定がある。

2 企業結合関係
(1) 株式取得の事前届出制の導入
(2) 届出基準の見直し等(総資産⇒売上高,届出閾値の簡素化等)

3 その他
(1) 海外当局との情報交換に関する規定の整備
  (情報交換を行う場合の条件等を法定化)
(2) 利害関係人による審判の事件記録の閲覧・謄写規定の整備
  (正当な理由がある場合には開示を制限)
(3) 民事救済制度の拡充
  (差止訴訟における文書提出命令の特則の導入)
(4) 事業者団体届出制度の廃止
(5) 公正取引委員会職員等の秘密保持義務違反に係る罰則の引上げ
  (10万円以下⇒100万円以下)


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


 

 

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