新第一塩ビ、高岡工場を停止

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新第一塩ビは3月末で高岡工場を停止した。

同社の2007年12月末の能力は292千トンとなっているが、高岡工場(ペースト)の40千トンが停止、逆に愛媛工場(ペースト)を7千トン増強したため、3月末の能力は259千トンとなる。(他に、愛媛にMETI発表能力に含まれない特殊塩ビ3千トンがあり、公称能力は262千トン)

新第一塩ビは1995年7月に、日本ゼオン(水島、高岡工場)、住友化学(千葉、愛媛工場)、サンアロー化学(現トクヤマ、徳山工場)のPVC事業を統合してスタートした。当時の能力は430千トンであった。

その後、1999年に決めた再構築計画で経営権がトクヤマに移り、2000年3月末に水島工場を停止した。

今回の高岡工場停止で、新第一塩ビの工場は汎用PVCが徳山(145千トン)と千葉(80千トン)、ペースト・特殊塩ビが愛媛(37千トン)の3工場体制となる。

1950年に古河グループの日本軽金属、古河電工、横浜護謨の3社がPVCの製造販売のために米国Goodrich Chemical とのJVで設立した日本ゼオンのPVC工場はこれで全てなくなる。
(日本ゼオンの新第一塩ビへの出資 14.5% は残っている)

戦前(1941年)に水俣でPVC製造を開始し、戦後1949年に水俣で生産を再開した老舗のチッソも2000年に五井、水俣工場を、2003年に水島工場を停止し、完全撤退している。

2006/9/14 日本のPVC業界の変遷と現状-2 

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古河グループでは横浜ゴムが戦前に電線用不燃材料として1942年からPVCの生産を開始し、戦後1946年から生産を再開したが、戦前からの技術の延長では困難との判断から1948年に製造を中止、関係のあったGoodrich Chemical との提携に動いた。

日本軽金属はカーバイド、か性ソーダの関連で、1950年から蒲原工場でPVC生産を開始した。

古河電工は、戦前に電線の難燃性被覆材料として塩化ビニル樹脂、およびその加工研究を行っていたが、1949年に電線用押出機を輸入して塩化ビニル電線の生産体制を整えた。

横浜ゴムはGoodrich Chemicalからの技術導入を前提に、原料メーカーの日本軽金属と大口需要家の古河電工に対し共同による工業化を呼びかけた。

Goodrich Chemical との交渉の結果、1950年に3社とGoodrich (35%出資)とのJVで日本ゼオンが設立された。

社名の「ゼオン」はGoodrichの商標 Geon から取った。
(当時の英語社名はNippon Geon で、1970年のGoodrich 離脱後にNippon Zeon に変更した。)

国産既存メーカー18社は、外国技術導入に強く反発し、連名で「日本ジェオン社設立反対陳情書」を政府に提出した。

これに対して加工業界は、輸入スクラップを加工した経験から、国産品がすべて乳化重合法によるのに対して、米国の懸濁重合法によるPVC品質の優位性を認め、懸濁重合法の技術導入による新会社の設立を歓迎した。

通産省は最終的には、「表面的には反対の理由はない。むしろ各社が新しい技術の導入を図ったらどうか」との見解を示した。

日本ゼオンは1952年に蒲原で懸濁重合法により新鋭プラントで生産を開始した。

これに続いて日本化成(現三菱化学)はMonsanto との合弁で、三菱モンサント化成を設立、懸濁重合法による生産を開始した。

この後、国産各社も順次、懸濁重合法に切り替えた。

 

日本ゼオンは第二工場の立地に高岡を選んだ。
日本曹達がか性ソーダ食塩電解設備を持ち、増設する方針であったこと、近くにカーバイド工場が散在することが理由である。
水力発電の電源地帯で、電炉を使う力ーバイドや電解の苛性ソーダなど電力多消費型の工場が集まっていた。

1956年に高岡でPVC生産を開始した。1967年には蒲原工場を閉鎖し、高岡に集中した。

日本ゼオンはナフサからのエチレン、アセチレンと塩素を反応させてVCMを生産するGPA法を開発、1967年に高岡で生産を開始した。 

    2006/9/18 日本のVCM業界の変遷-1 

1968年に日本ゼオンはPVCで水島に進出、Goodrich からオキシ法VCM技術を導入して旭化成、チッソと合弁で山陽モノマーを設立した。

石油価格高騰のなかで、1979年に高岡のGPA法VCMを停止、1982年には汎用PVCの生産を中止して水島に集中した。
この結果、高岡工場は水島からのVCM(2000年の山陽モノマー停止後はトクヤマのVCM)によりペースト塩ビを生産するのみとなっていた。

日本ゼオンは塩ビ事業を連結対象から外して以降、Goodrich からの技術導入でスタートしたもう一つの事業のエラストマー事業(合成ゴム、ラテックス)のほか、高機能材料部門を拡大している。

決算推移              (億円)
    売上高 営業損益
06/3 07/3 06/3 07/3
エラストマー素材  1,561  1,762   152   195
高機能材料 418 472 102 97
その他 652 582 14 9
合計 2,631 2,816 268 302

 

(資料 「ゼオン50年の歩み」ほか)

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なお、Goodrich は20%の筆頭株主となっていたが、1970年に持株を売却し撤退した。

事業上の関与がないこと、技術援助契約が終了したこと、資金を有効に使いたいなどの理由で同社から提案があったもの。

なお、Goodrich は1993年塩ビ部門を分離し、Geon とした。
1999年にGeon
Occidental Chemical はVCM とPVC部門を分離して24/76%のJVのOxy Vinyls を設立した。

Geon(本体は塩ビコンパウンド)とコンパウンドメーカーの M.A. Hanna は2000年に合併してPolyOne となったが、PolyOne は2007年7月にOxy Vinyls 持分をOccidental Chemical に売却、PVCレジン事業から撤退した。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


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