鉄鋼原料価格 急騰

| コメント(0)

2008年度の鉄鉱石価格が2月に大幅値上げで決まったが、原料炭価格が2007年度に比べ約3倍となる見通しとなった。

鉄鉱石

鉄鋼大手各社は2月に、2008年度の鉄鉱石について、資源最大手Vale do Rio Doce との間で前年度比65%の値上げで合意した。
1トン当たりの価格は
80ドル弱となり、07年度と比べ約30ドル上昇する。鉄鉱石の値上げは6年連続。

インドから中国向けなどのスポット価格は今年に入り、約140ドルに高騰しており、今回の妥結額は想定(70~80%アップ)より低いと見る向きもある。

鉄鉱石の需要は中国を中心に急拡大しており、2007年の世界の鉄鉱石貿易量(海上のみ)は2000年から8割増えたが、輸入の増加分の9割を中国が占めている。

他方、供給面では鉄鉱石の海上貿易量はValeが33%で1位、2位Rio Tinto、3位BHP Billliton で、3社で71%を占める寡占状態となっている。

原料炭

新日本製鉄はこのたび、豪英系資源大手BHP Billliton と2008年度の鉄鋼原料用石炭の価格を2007年度に比べて約3倍に引き上げることで合意する見通しとなった。

原料炭(豪州の強粘結炭でGoonyella炭)の価格は現行の1トンあたり98ドルから300ドル前後に上がる。
両社の合意価格は業界標準となっており、他の鉄鋼大手も同額で決着する見通し。

石炭は大きく分けて原料炭及び、一般炭に分類される。
原料炭は製鉄の原料、一般炭は主に発電用に利用されている。

原料炭は国産はなく、全量を輸入に依存しており、輸入の6割を豪州から輸入している。

石炭の状況は
 エネルギー白書(2007年)参照
 
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2007energyhtml/html/2-2-2-3.html

付記 

中部電力は4月8日、スイスの
Xstrata との間で、発電用の豪州産一般炭の2008年度価格を前年度の55-56ドルの2.3倍の1トン125ドルに引き上げることで合意した。他の電力会社も同じ上げ幅で決着する見込み。

原料業界は既に寡占状態になっているが、更にBHP Billliton がRio Tinto の買収に動いている。

    2008/3/29 資源戦争激化 


これに対して、鉄鋼連盟では3月13日に、以下の通り、「適切な措置の実施」を公取委に要請している。

近年、世界の鉄鉱石・原料炭市場では、供給側の著しい寡占化が進み、中国等新興国における鉄鋼生産増とも相俟って、急激な価格上昇をみています。

今般のBHPビリトン社によるリオ・ティント社買収が実現すると、鉄鉱石・原料炭両市場での一層の寡占化が進展し、特に鉄鉱石については、他に大きな代替ソースがないことから上位二社に供給を依存せざるを得ず、供給側における競争が実質的に制限され、公正な価格形成を損なうものと懸念しています。原料価格の更なる高騰は、鉄鋼業界のみならず、需要産業ひいては消費者にも深刻な影響を及ぼしかねません。

このような状況を踏まえ、日本鉄鋼連盟は本日、公正取引委員会に対して、本件の精査および、鉄鉱石・原料炭各市場における公正な競争を確保するための適切な措置の実施を正式に要請いたしました。

ーーー

鉄鉱石価格は以前に比し約4倍、原料炭は約6倍となる。

ナフサも2001年11月の安値が159$/t、現在が約900$強で、約6倍となっている。原油も同様。
 (ナフサ・原油価格グラフ  
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/new.htm ) 

鉄鋼業界の原料高によるコストアップは2兆5000億円に達する。 

  ・石炭(3倍前後に値上げ)   1兆5000億円
  ・鉄鉱石(65%値上げ)     5000億円
  ・非鉄・燃料など    5000億円
   合計  2兆5000億円

これを受け、鉄鋼メーカーでは鋼材値上げ交渉を本格化させる。

これまでに鋼材1トン当たり2万円程度の値上げを提示しているが、その場合、ユーザー業界の負担は次ぎの通りとなる。(石炭の値上がりは予想以上であり、更なる値上げも必要となる)

 ・自動車   4000億円強
 ・造船     2000億円弱
 ・機械・電機 2000億円弱
 ・建設     4000億円弱

 (影響の試算はいずれも日本経済新聞 2008/4/5)


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


コメントする

月別 アーカイブ