台湾プラスチック、寧波エチレン計画取り止めか

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台湾プラスチック(FPC)は台湾の麦寮に石化コンプレックスを持つとともに、米国に Formosa Plastics Corporation, U.S.A. を有している。

    
2006/4/15 台湾の石油化学  

FPCは早くも2001年に、中国にエチレン年産100万-120万トン規模の石油化学コンプレックスを建設する方向で検討に入った。

2004年後半にFPCは中国国務院に対し、石化コンプレックス建設の申請を行なった。立地は浙江省寧波市の北崙経済技術特区で、エチレン年産120万トン規模のコンプレックスを建設するもの。

台湾政府はエチレンの対中投資を開放していないため、台湾と中国の両政府の承認が必要となる。
その後、両国の関係が変転し、まだ承認が得られていない。中国では中国の石化企業からの反対も出ていた。

2007年1月にはFPCのオーナーの王永慶が本件で中国の国家発展計画委員会(NDRC)の副委員長と会談している。

現在の計画は、浙江省寧波市の北崙経済技術特区で石油精製10百万トンとエチレン120万トン、プロピレン60万トン、及び各種誘導品を建設するというもの。

寧波市には鎮海地区、北崙地区、大謝島の3つの石化基地がある。
鎮海地区にはシノペック子会社の鎮海煉油化工(ZRCC)の石油精製基地がある。
三菱化学は投資会社・寧波PTA投資(三菱化学/伊藤忠/三菱商事)と中国中信集団(CITIC) の90%/10%の合弁会社 寧波三菱化学有限公司を設立、大謝島に60万トン/年の工場を建設した。

FPCは北崙経済技術特区の梅山島に2,000ヘクタール、寧波市沿海デルタ2,000ヘクタールを確保しており、寧波市部分に精油所を、梅山島にナフサ分解工場と川下工場を集める計画。

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報道によると、FPCはこの計画を取り止める可能性が強まった。

3月22日の台湾の総統選挙で最大野党・国民党の候補、馬英九(Ma Ying-jeou)氏が当選したが、このたび、馬氏が台湾経済の発展について意見を聞くという名目で、FPCの王永慶、台湾セミコンダクターのMorris Chang 会長、鴻海グループのTerry Guo会長の3人が面会した。

席上、馬氏から麦寮港からの台湾海峡横断の直接輸送を認めるとの約束が得られたことから、FPCとしては麦寮のコンプレックスからエチレン、プロピレンほかを本土に輸送できるため、中国の石化メーカーの反対を受ける中で寧波市に巨額の投資をしないでも済むこととなる。

台湾と本土との台湾海峡横断の直接輸送は1949年以降、禁止となっている。

最近では「3通」(中台間の交通、通商、通信の直接交流)を目指す動きが出ている。
2005年の春節(旧正月)チャーター便運行を成功モデルとし、自由化を逐次進めることとなっているが、これまでは特に台湾政府が安全保障上の問題で消極的であった。
現在、直行チャーター便は旧正月などに限定され、台湾住民しか乗れず、香港上空を経由する必要がある。

福建省社会科学研究院によると(2006/9)、「福建省は台湾に一番近い省ですが、台湾当局の方針によって、人的往来や物的交流が直接出来ず、香港を経由しなければなりません。これは経営コストを大幅に高くしてしまいます。そのため、台湾企業は投資先を広東省に移したのです。」 (その後、台湾企業は上海周辺に移った)

現実には下記の通り、FPCは寧波のプラントに原料を送っているが、正式に認められない限り、中国で生産する製品の主原料を台湾から送るという体制は取れない。
(2001年には直接輸送をした船会社が罰金を取られるという事態もあった)

4月12日に台湾の蕭万長・次期副総統が胡錦濤国家主席と短時間会談し、中台間の経済関係を強化していく方針を確認した。

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FPCの寧波エチレン計画は停滞しているが、誘導品計画はドンドン進展している。

FPCは間もなく、寧波市の北崙経済技術特区で45万トンのPPプラントの商業生産を開始する。
このたび、同社は政府から原料プロピレンの荷揚げの認可を受けた。プロピレンは
麦寮コンプレックスから運ぶ。

同プラントは2007年6月に完成していたが、中国政府から原料プロピレンの荷揚げの認可待ちで本格稼動できない状況にあった。
同社は
同地区に加圧プロピレンを9,000トン、冷却プロピレンを48,000トン貯蔵する能力を持つが、冷却プロピレンの荷揚げの許可が下りていなかった。

本計画は当初は能力 30万トンで、2006年第4四半期スタートの予定であった。
中国の需要の急速な伸びに対応するため、45万トンとした。

FPCの子会社のFormosa Chemical and Fibre Corp も同地で間もなく 年産 60万トンのPTAプラントの生産を開始する。
同プラントも昨年前半に完成していたが、本年
3月にようやく、中国政府から生産開始の承認を得た。
原料パラキシレンは麦寮コンプレックスから運ぶ。

このほか、FPCは既に北崙経済技術特区の梅山島でPVC 30万トン、ABS 24万トン、アクリル酸 16万トン、アクリル酸エステル 30万トンを操業している。 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


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