電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルの日本での扱い

| コメント(0)

2007年1月にEUの欧州委員会は、電力用ガス絶縁開閉装置で国際カルテルを結んでいたとして日欧10社に7億5千万ユーロの制裁金支払いを命じた。日本企業は取り決めに従って欧州で応札せず、直接的に欧州での競争を制限したとして、「欧州でほとんど売っていないのを理由に多額の制裁金を課せられる」という珍しいケースである。

   2007/1/26 EU、電力用ガス絶縁開閉装置のカルテルで1200億円の制裁金 
           

   対象企業と制裁金の額は以下の通り。(単位:千ユーロ)

  免責額 制裁金
Siemens(ドイツ)     396,563
Siemens(オーストリア)      22,050
ABB(スイス)  215,156       0
三菱電機     118,575
東芝      90,900
Alstom(フランス)      65,025
Areva(フランス)      53,550
日立製作所      51,750
Schneider(フランス)      8,100
富士電機システムズ      3,750
日本AEパワーシステムズ      1,350
合計  215,156   750,713

日本AEパワーシステムズ 富士電機システムズ、日立、明電舎のJV。
三菱電機、東芝、日立製作所、富士電機ホールディングスは、それぞれ欧州第一審裁判所へ提訴した。

各社が連絡をとりあって割当数量比率で受注できるよう調整し、最低価格を決めていた。また、日本企業は欧州で販売せず、欧州企業は日本で販売しないことも決めていたという。

これが事実なら、日本国内でも、日本の各社は勿論、欧州委の理屈では欧州企業も、独禁法に違反することとなるが、公取委はこれを取りあげていない。
不思議に思っていたところ、4月15日の読売新聞がこれを報道した。

それによると、欧州委からの通報がなかったために、公正取引委員会がカルテルの調査に入れなかったとのことである。

日本とEUは2003年7月に、カルテルや企業合併の調査で連携することを定めた「独占禁止協力協定」を締結しており、相手の利益に影響する違反行為の調査などを相互に通報する規定が設けられている。
しかし、欧州委が通報を忘れ、公取委は制裁金の発表で、初めてカルテルの存在を把握した。

欧州委は、スイスのメーカーABBから2004年3月にカルテルを結んでいたとする申告を受理。同年5月に立ち入り検査に着手している。
このため、2007年1月の欧州委による制裁金発表時点では、既に排除勧告の時効は過ぎ、課徴金納付命令の時効も約4か月後に迫っていた。

課徴金納付命令の時効(除斥期間)は現在は3年となっている。
今回の独禁法改正案ではこれを欧米並みの5年に延長している。

  2008/3/18 独禁法改正案 

また、排除勧告については、独禁法で行政処分の期限として「談合行為から1年以内」となっている。

2003年の長野市の浅川ダム談合事件でも、第三者機関が「談合」と認定したが、公取委はこの理由で「独占禁止法上の措置は取らない」とした。

 

公取委は京都市で14日に開会した「国際競争ネットワーク」年次総会出席のために来日した欧州委幹部に通報態勢の改善を求めた。

なお、EUのクルス欧州委員(競争政策担当)は京都市で記者会見し、英豪資源大手BHPビリトンによる同リオ・ティントの買収計画の取り扱いについて「日本の公正取引委員会と緊密な連絡をとっていく」と述べた。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


コメントする

月別 アーカイブ