揺れる韓国サムスングループ

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4月22日、三星(サムスン)グループの李健煕会長が退陣を発表した。
息子の李在鎔・三星電子専務はCOO
の席を退き、海外勤務で白衣従軍(一兵卒に格下げ後、功を積んで元の地位を目指すという意味)する。
戦略企画室は解体し、李鶴洙副会長と金仁宙戦略企画室社長は、残務処理を終えた後、辞任して経営一線から退く。

今後はサムスン生命保険の会長がグループ代表となり系列企業社長団によるグループ合議制となるが、グループ司令塔の戦略企画室が廃止され、成長戦略が描けるかどうかが焦点となる。

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200710三星グループの法務チーム長を3年前に退職した金勇澈弁護士が「自分が知らない間に開設された銀行口座に50億ウォン(約6億3200万円)を超える現金や株式が預けられていた」と証言し、同グループが借名口座を使って裏金をプールしている疑惑が浮上した。
金弁護士はさらに三星グループが1兆ウォンもの裏金をプールし、2002年の大統領選の資金を提供したり政治家や判事・検事などに特別手当を支給するといったロビー工作を行っていたとも証言した。

これを受けて「三星グループの裏金疑惑に関する特別検事任命法案」が国会で大多数の賛成で可決成立され、特別検事による捜査が2008年初めから開始された。

News Week 2007年12月10日号は、Dark Days For The Empire」というタイトルで、Republic of Samsung を解体し、Korea Inc. の姿を変えようとしていると伝えた。

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特別検察官チームは4月17日、李健熙・三星グループ会長を背任と脱税など3つの容疑で起訴するなど、前・現職の三星幹部10人を書類送検した。

第一の容疑 経営権継承疑惑

李健熙会長が長男の李在鎔に経営権を継承する過程で、三星エバーランド(ソウル南方の龍仁市にあるテーマパーク運営:事実上の三星グループ持株会社)の転換社債の97%を長男に配分し、不当に安い価格で引渡し、エバーランド側に少なくとも969億ウォンの損害を与えたというもの。これにより、李在鎔はエバーランドの25.1%を所有し筆頭株主となった。

李健煕会長と副会長ほかに特定経済犯罪加重処罰法上の背任が適用された。

第二の容疑  裏資金疑惑

李会長ほかが、三星生命の2兆3000億ウォンを含め、4兆5000億ウォンの資金を隠し、1,199の借名口座を利用して、系列会社の株を売買して得た差益5,643億ウォンに対する譲渡所得税1,128億ウォンを脱税した容疑で特定犯罪加重処罰法上の脱税が適用された。

第三の容疑  不法ロビー疑惑

政官界および法曹界を対象にした疑惑については、金勇澈弁護士の供述に信憑性がないか、または嫌疑が発見できなかったなどの理由で、内部捜査を終結させた。
また、三星の債券が2002年の大統領選挙資金や最高権力層に提供されたという疑惑を立証する証拠も発見できず、三星重工業などの粉飾会計疑惑も嫌疑をつかめずに終結させた。

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特別検察官は書類送検とした理由として、「この事件は、財閥グループの経営および支配構造を維持する過程で長期間内在し黙認されていた不法行為を、現時点で厳格な法規定で裁断し、犯罪として処断するものであり、典型的な背任および脱税犯罪とは異なる面がある」、と述べた。
  「大株主が株式を一定以上保有することができないように規定されている。そのため経営権を守るためには、借名口座をつくるほかない状況が生じる」と、三星に同情的である。

三星側も李会長の脱税容疑について、「今回、問題になった部分は、基本的に経営権の保護と防御のための持分分散の必要性から起ったことであり、一般的な脱税事件の動機や過程、内容とは異なる」と釈明した。

財界にも、「1987年に李健煕会長が三星グループ会長に就任した当時は、社会全般に大企業に対する否定的な見方が多かったうえ、とくに大株主の持分に対する規制継続して強化されていた状況だった」、「李会長が脆弱な持分構造のもとで、経営権保護や防御のために借名ででも持分を確保することが切実な状況であったという事情もあった」とする見方がある。

財界では、今回の事件を契機に「経営権問題」に対する企業側の現実的な苦慮を理解し、関連法令の見直しを求める声が強まっており、特に、「相続税を納めるためには相続を受けた株や不動産を売却しなければならない場合が多く、経営権の維持さえも脅かされている」として、相続税の改正求める声も出ている。

韓国の相続税率は世界で最も高い50%で、大企業の支配株主の経営権に対する割増税率を含めると、最高65%に達する。

なお三星は、李会長の4兆5千億ウォン規模の借名口座の財産を実名に転換し、未払いの税金を納付後、残額は社会貢献などに充てる方針を打ち出した。


 総合目次、項目別目次は
   
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


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