三菱化学が主体のヴイテックは10日、5月末でPVCの輸出を停止するとともに、水島のPVCプラントを停止し、国内販売に集中した体制に移行すると発表した。
同社は国内需要減少を補うため、2006年に 3万トン、2007年に5万トンの輸出を行なってきた。
しかし、輸出価格はドル価格では着実に上昇しているものの、コストアップやフレートの高騰、更には円高のため採算面では一向に改善が見られず、今後更にナフサや重油・石炭の価格上昇は避けられないうえ、これまで比較的安定していた工業塩も4月以降大幅な値上がりが確実な情勢となった。
このため、輸出を停止し、国内販売に合わせた生産体制に変更する。なお、川崎工場では7月の定期修理時に一部手直し増強を行なう。
塩ビ業界では、新第一塩ビが3月末で高岡工場を停止しており、これに次ぐ動き。
工場別能力は以下の通りとなる。(単位:トン)
2000/4/1 (設立時) |
2006年末 | 2007年末 | 新体制 | |
川崎(東亞合成内) | 180,000 | 115,000 | 95,000 | 121,000 |
四日市(三菱化学内) | 110,000 | 104,000 | 99,000 | 99,000 |
水島(三菱化学内) | 100,000 | 115,000 | 110,000 | 0 |
計 | (390,000) | (334,000) | (304,000) | (220,000) |
なお水島工場の電解プラント、VCMプラントについても新生産体制を踏まえ、若干の生産調整を行う予定。
よく分からないのは、今回、四日市工場を残して水島工場を停めることだ。
水島は1996年末に建設したもので、四日市より新しく、かつ、同社が開発した内部ジャケット様式の温調エレメント方式を使った第1号である。(川崎が第2号)
なによりも水島にはVCMがあるが、四日市の場合は水島からVCMを輸送する必要がある。
需要家の立地を考えても、川崎と水島の方が良さそうである。
その他のなんらかの理由があるようだ。
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三菱化学と東亜合成は1996年に塩ビ事業で業務提携を行なった。
・ | 三菱化学は1996年末にS&Bにより水島で100千トンプラントを建設した。 (その後、老朽設備を停止し、これのみが残っていた。今回はこれを停止する。) |
・ | 東亜合成はセントラル硝子、東燃化学とのJV・川崎有機で年産100千トン設備を稼働させているほか、徳島工場に同20千トン設備を持っていたが、徳島の老朽化した20千トン設備を廃棄し、川崎に三菱化学の技術で100千トン設備を新設した。 (その後、旧川崎有機のPVCプラントは停止した。) |
その後の業績悪化を受け、両社は事業統合を決め、2000年4月1日、統合会社がスタートした。
会社名 | ヴイテック㈱ | |
資本金 | 60億円 出資比率 三菱化学 60%、東亞合成 40% | |
事業 | 電解製品(水島)の製造、VCM(水島)及びPVCの製造・販売及び研究開発 電解製品の販売は三菱化学100%のダイアケミカルに委託 | |
能力 | 電解(水島) 135千トン(苛性ソーダ97%換算) | |
VCM(水島) 300千トン *セントラル化学はVCM(132千トン)生産を継続、ヴイテックに供給→その後停止 | ||
PVC 合計 390千トン(川崎 180、四日市 110、水島 100) |
同社は設立以来、大幅赤字が続き、その結果、2005年3月、ヴイテックは再編を行い、出資比率を三菱化学 85.1%、東亜合成 14.9%に変更した。
2006/9/14 日本のPVC業界の変遷と現状-2
その後、国際市況の高騰のなかで、ナフサ価格アップ分の転嫁が可能となり、2004年12月期以降は黒字となっていた。
しかし、2007年12月期は再度赤字に転落している。
(資本金60億円に対し、2007年12月末の累積損失は139億円に達している。)
他の塩ビメーカーは全て3月決算のため、現時点では不明。
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このブログではこの数年の石化の好況は、中国バブルによるもので、いつまでも続かないだろうと主張してきた。
残念ながら、この懸念がその通りになりそうな気配である。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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