第一三共は5月21日、癌及び抗体事業の強化の一環として、ドイツのU3 Pharma AG の全株式を取得すると発表した。
取得額は150 百万ユーロ(約245 億円)で、買収後は完全子会社とする。
U3 Pharma は2001年設立で、ドイツの有力研究機関であるMax Planck 研究所と提携し、2 つの有望な癌領域抗体(抗HER-3 抗体:Amgen との共同開発、及び抗HB-EGF 抗体)を開発中である。
第一三共は癌領域において画期的な治療薬を提供することを中長期な目標の一つとしている。
同社はパイプラインに3つのモノクローナル抗体を持ち、また、本年3月にはドイツ MorphoSys社との抗体ライブラリーに関する共同研究を拡大している。
今回の買収で、臨床試験入り間近の2つの有望な癌領域抗体を獲得すること、および、Max Planck 研究所との提携を通じて癌領域の創薬研究力を強化することにより、当社の癌領域ポートフォリオの拡充を図る。
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国内製薬大手は抗体医薬技術の取り込みを狙うM&Aを加速している。
抗体医薬をめぐる各社の動きは以下の通り。
2007/3 エーザイが米Morphotek Inc.を買収
買収価額は純現預金差し引き後で 325百万ドル。
Morphotek は、抗体医薬の研究開発を専門とするバイオベンチャー企業で、独自の完全ヒトモノクローナル抗体産生と最適化技術を使用し、各種がん、関節リウマチ、感染症などの疾患に対する抗体治療薬の開発に取り組んでいる。
現在、卵巣がんと膵臓がんを対象とした臨床試験に入っているほか、前臨床段階にある候補品目を複数保有している。
2007/7 第一三共が米Amgenから骨粗鬆症薬の国内開発販売権を取得
完全ヒト型モノクローナル抗体Denosumab の日本国内での開発・販売のライセンス契約を締結した。
Denosumab は骨粗鬆症や癌の骨転移を含むさまざまな骨関連疾患の治療・予防薬として開発されている。
条件は①一時金 2,000万ドル、②日本国内で自社が行う開発費用をすべて負担、③2009年までAmgenが実施するグローバル開発費用のうち、およそ1.5 億ドルを負担、④国内純売上高に対するロイヤリティ支払い、となっている。
2007/10 キリンの医薬品事業と協和発酵が統合
2007/10/25 協和発酵とキリンファーマの統合
協和発酵とキリンファーマは、ともに抗体医薬技術などを中心としたバイオテクノロジーを強みを持っている。
2007/11 アステラス製薬が米Agencys, Inc.を買収
Agencys, Inc.は癌領域の抗体医薬を専門とするバイオベンチャーで、買収価格は 387百万ドル(純現預金 30百万ドル含む)。株主は他に、milestone 達成に伴い最大150百万ドルを受け取る。
2008/2 武田薬品が米Amgenの日本法人、抗がん剤の国内開発販売権取得
2008/2/11 武田薬品、アムジェンとの提携を発表
抗癌剤の Motesanib diphosphate と、Panitumumabを含む 12品目の抗体医薬などのバイオ医薬品(うち1品目は、今後、最終的に契約対象とするかどうかを決定)の合計13の品目が契約対象となっている。
同時に日本の100%子会社であるアムジェンK.K.の株式譲渡契約を締結した。
2008/5 第一三共がドイツ U3Pharma を買収 (上記)
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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