2008年3月期には、三菱ケミカルホールディングスにはいろいろなことが起こった。
2007年10月に田辺製薬と三菱ウエルファーマが合併して田辺三菱製薬となり、三菱化学、三菱樹脂、田辺三菱製薬の3社体制となった。(三菱樹脂は更に本年4月に再編)
三菱化学では鹿島で火災事故が発生、長期間操業を停止した。
田辺三菱製薬では薬害肝炎問題で補償の交渉を続けている。
三菱樹脂が塩ビ管・継手のカルテル問題で公取委の強制調査を受けた。
(決算短信の「追加情報」で、本件により排除措置命令、課徴金納付命令等を受ける可能性があるとしている。)
決算では売上高は大きく増加、営業損益、経常損益は減少したが、当期損益は大幅増となっている。配当も増やした。
しかし、これにはいろいろの要素がある。
特別利益に田辺製薬との合併による持分変動利益が1,181億円含まれており、これを除くと実質は減益である。
連結決算 単位:百万円(配当:円)
売上高
営業損益
経常損益
当期損益
年間配当 07/3
2,622,820
128,589
141,296
100,338
14.00 08/3
2,929,810
125,046
128,885
164,064
16.00 増減
306,990
-3,543
-12,411
63,726
2.00 09/3予
3,340,000
158,000
166,000
70,000
16.00 増減
410,190
32,954
37,115
-94,064
0.00
法人税法の改正に伴う影響:
有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 30億円減少
償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 88億円減少
部門別営業損益は以下の通りとなっている。(単位:億円)
07/3 | 08/3 | 増減 | |
石化 | 282 | 92 | -190 |
機能化学 | 350 | 361 | 11 |
機能材料 | 243 | 192 | -51 |
ヘルスケア | 396 | 572 | 176 |
サービス | 106 | 131 | 26 |
全社 | -92 | -99 | -7 |
営業損益合計 | 1,286 | 1,250 | -35 |
1)石化
原材料価格高騰によるスプレッドの縮小が160億円、償却制度変更が40億円と、悪化要因となっている。
このほか、鹿島の事故の影響を営業損益に82億円折り込んでいる。
同社は2008年度を含めた事故の影響額を-47億円とみている。(損失 -187億円、保険金 140億円)
2008年3月期には営業損益で -82億円、特別損失で -30億円、合計 -112億円を計上している。
鹿島事故損失予想(億円)
2008/3 2009/3 合計 科目 減産、減販、代替品調達 - 82 -55 -137 営業損益 プラント停止・低稼働 -20 - 20 営業外費用 - 30 - 30 特別損失 合計 -112 -75 -187 保険金 140 140 営業外収入 差引合計 -112 65 - 47
なお、運休している鹿島の第2エチレンプラントの第6ナフサ分解炉の稼動が間もなく再開できる見通しとなった。
これが再稼動すると合計8炉のうちの6炉が復帰、第2エチレンプラントのの82%までカバーされる計算となる。
第7号炉(分解能力は年7万トン)の稼動再開が認められるのは、今年秋から年末までの間となる見通しで、最新の第8炉はダメージが大きく再稼動のめどは立っていない。
2)ヘルスケアでは2007年10月から田辺三菱製薬が発足し、旧田辺製薬分が加わった。
三菱ケミカルの連結損益には、上期はウエルファーマ分、下期は合併した田辺三菱製薬の分が入っている。
連結調整前では営業損益は 540億円となり、前年比では141億円の増となる。
比較のため、田辺製薬の上期分を加えると725億円となり、前年と余り変わらない。(2009/3月期はこれがベースとなる。)
田辺三菱製薬 営業損益(億円)
07/3 08/3 増減 上期 下期 田辺製薬 305 184 ー ウエルファーマ
→田辺三菱400 540 141 合計 704 725 21
ーーー
当期損益の内訳は以下の通りとなっている。(億円)
07/3 08/3 増減 経常損益 1,413 1,289 -124 特別利益 114 1,233 1,119 特別損失 -149 -344 -195 税引前損益 1,378 2,178 800 当期損益 1,003 1,641 637
特別利益のうち、田辺製薬との合併による持分変動利益が1,181億円と大半を占めるが、これは連結決算作成上の計算手続である。
特別損失には上記の鹿島事故損失 30億円、田辺三菱製薬の合併関連費用 49億円が含まれている。
なお、田辺三菱製薬では、薬害肝炎被害者を救済するための救済法が施行されたことを踏まえ、同社負担の見積り額 91億円を特別損失に計上した。
本件では被害者と政府の和解は順次行なわれているが、メーカーとの間は依然交渉中である。
費用のメーカー負担額については政府との交渉で決定することとなっているが、まだ決まっておらず、見積り額は今後の協議の結果で変動の可能性があるとしている。
舛添厚生労働相は1月の薬害肝炎救済法成立時点で、費用負担については、これまでの薬害事例などを参考に「国が3分の1、企業が3分の2という比率になる」と説明している。
サリドマイド訴訟、キノホルム(スモン)訴訟、薬害ヤコブ訴訟での和解では国が1/3、企業が2/3(66.7%)となっている。
但し、田辺三菱製薬の元のミドリ十字が係わったHIV訴訟では国が40%、企業が60%となっている。2008/1/24 資料 薬害エイズ事件
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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