石油化学各社は原料価格高騰分をフルに価格転嫁できず、旭化成を除き、減益となっている。
今後更にナフサ価格の高騰が続けば、一層厳しくなる。
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三菱化学 2008/5/12記事参照
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住友化学
増収だが、損益面では石油化学部門の落ち込みが大きく、減益となった。
経常損益が652億円減益となったのに対し、当期損益が308億円の減に止まっているのは、特別損益にサウジのペトロラービグの新規株式公開に伴う持分変動利益288億円があったため。(住友化学とアラムコの出資比率はそれぞれ 50%から37.5%になる)
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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法人税法の改正に伴う影響:
有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 21億円減少
償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 17億円減少
セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)
06/3 | 07/3 | 08/3 | 増減 | 増減理由 | |
基礎化学 | 100 | 135 | 106 | -29 | 原料価格高騰の影響、固定費増 |
石油化学 | 179 | 236 | 45 | -191 | 原料価格高騰、4年に一度の大型定期修繕の影響 |
精密化学 | 98 | 131 | 114 | -17 | 原料価格高騰の影響 |
情報電子化学 | 217 | 35 | 63 | 28 | 偏光フィルム価格の大幅減(中間決算赤字)、生産能力の向上でカバー |
農業化学 | 166 | 233 | 209 | -23 | 住化武田農薬との統合に伴う一時的な費用の発生 |
医薬品 | 383 | 562 | 465 | -98 | 研究開発費増大(来期も)* |
その他 | 58 | 80 | 37 | -43 | |
全社 | 7 | -15 | -15 | 0 | |
合計 | 1,208 | 1,396 | 1,024 | -372 |
* 大日本住友製薬 研究開発費
2007/3 409億円
2008/3 473億円(+64億円)
2009/3予想 565億円(+92億円)
情報電子化学部門の2006/3月期からの損益の落ち込みは非常に大きい。
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三井化学
増収減益となった。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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法人税法の改正に伴う影響:
有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 18億円減少
償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 10億円減少
なお、同社は2006年3月期に建物を除き定率法に変更している。
セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)
2007/3 | 2008/3 | 増減 | 売価差 | 変動費差 | 差引 | 数量差 | 固定費差他 | |
機能材料 | 259 | 359 | 100 | 299 | -165 | 134 | 11 | -45 |
先端化学品 | 117 | 108 | -9 | -4 | -39 | -43 | -46 | -12 |
基礎化学品 | 531 | 334 | -197 | 1,059 | -1,205 | -146 | -21 | -30 |
その他 | 36 | 34 | -2 | -1 | -1 | |||
全社 | -26 | -63 | -37 | -37 | ||||
合計 | 917 | 772 | -145 | 1,354 | -1,409 | -55 | 35 | -125 |
なお特別損失は、
・固定資産整理損・売却損 54億円、
・関連事業損失等 32億円(GEMPCなど)
・事業撤退損失 26億円(プラズマディスプレイパネル用光学フィルター事業終息)
・環境対策費用 117億円(三西化学工業 農薬製剤工場跡地環境対策等)
などにより 244億円となっている。
(特別利益は 29億円)
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東ソー
増収減益となった。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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法人税法の改正に伴う影響:
有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 15億円減少
償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 34億円減少
セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)
2005/3 | 2006/3 | 2007/3 | 2008/3 | 増減 | |
石油化学 | 107 | 128 | 140 | 150 | 10 |
基礎原料 | 204 | 56 | 61 | 27 | -34 |
機能商品 | 227 | 266 | 372 | 380 | 9 |
サービス | 30 | 24 | 30 | 34 | 4 |
合計 | 569 | 475 | 603 | 591 | -12 |
オレフィン、PE、クロロプレンゴム等の石油化学部門は増益となったが、VCMやPVCが中心の基礎原料部門は減益となった。
基礎原料部門のうち自社分が19億円の悪化、関係会社分(大洋塩ビ等)が18億円の悪化(調整が+3億円)となっており、おそらくVCMとPVCがともに減益となっているとみられる。
同部門の最盛期(2005/3)からの損益の落ち込みは非常に大きい。
なお、同社は2009年3月期の営業損益を当期比 111億円減の 480億円とみている。
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旭化成
増収で、損益面ではほぼ前期並みとなった。
連結決算 単位:億円(配当:円) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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法人税法の改正に伴う影響:
有形固定資産の減価償却方法の変更 営業損益 21億円減少
償却済固定資産の備忘価額との差額を5年均等償却 営業損益 19億円減少
セグメント別営業損益は以下の通り(単位:億円)
2007/3 | 2008/3 | 増減 | 増減内訳 | 2009/3 予想 |
増減 | |||
数量差 | 売価差 | コスト差 | ||||||
ケミカルズ | 520 | 652 | 87 | 24 | 484 | -422 | 600 | -52 |
(Life & Living) | 46 | |||||||
ホームズ | 275 | 214 | -61 | -74 | 154 | -141 | 260 | 46 |
ファーマ | 139 | 127 | -12 | 56 | -16 | -52 | 160 | 33 |
せんい | 42 | 72 | 31 | 9 | 52 | -30 | 60 | -12 |
エレクトロニクス | 226 | 222 | -4 | 24 | -55 | 27 | 205 | -17 |
建材 | 50 | 28 | -23 | -23 | 5 | -5 | 40 | 12 |
Service & Eng. | 39 | 52 | 13 | 15 | ー | -2 | 45 | -7 |
全社 | -58 | -90 | -32 | ー | ー | -32 | -90 | 0 |
合計 | 1,278 | 1,277 | -1 | 31 | 625 | -657 | 1,280 | 3 |
ケミカルズ:
<モノマー系事業>
原燃料価格高騰の影響を受けたが、堅調な需要を背景に市況が高騰したアクリロニトリル(AN)などを中心に、前期比増収、増益となった。
<ポリマー系事業>
合成ゴムなどが堅調に推移し前期比増収となったが、原燃料価格高騰の影響を受け、営業利益は前期並となった。
<高付加価値系事業>
リチウムイオン2次電池用微多孔膜が旺盛な需要を背景に販売量を伸ばしたことや、イオン交換膜法食塩電解プラント及びイオン交換膜の販売が好調に推移したことなどから、前期比増収、増益となった。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
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