競泳用水着の闘い

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北京オリンピックを目前にして日本の競泳界で水着が大問題となっている。

英国のSpeedo 社が今年2月発表した水着 LZR RACER (レーザー・レーサー) の着用選手が世界新記録を相次ぎ樹立している。

しかし、日本水泳連盟は、国内メーカー3社(ミズノ、デサント、アシックス)から多大の協力を得てきたことから、2017年3月までの12年間の五輪での水着提供契約を結んでおり、日本選手は Speedo 社の水着を着用できない。
(ミズノはSpeedo社と1965年から契約を結んでいたが、昨年5月末に関係を解消した。)

これに対して、大阪の山本化学工業が同社のバイオラバースイムの採用を3社に呼びかけた。
山本社長は、「絶対的に英国製より優れていると確信している。ぜひオリンピックの選手にこの素材の水着を着てもらいたい」と語っている。

今回、連盟は3社に対して水着の改良を求めた。バイオラバースイムが採用される可能性も出てきた。

付記

日本水連は5月30日、ミズノ、デサント、アシックスから改良水着の説明を受けた。
スピード社製も含めて代表選手が試し、日本水連は6月10日に着用水着の結論を出す。

ミズノは従来と比べて2~4倍締め付ける素材を使った。東レとの共同開発素材。
山本化学工業の素材は、デサントとアシックスが部分的に使用したタイプをつくった。

付記

6月3日、アシックスとデサントの2社の五輪用水着に素材が採用された山本化学工業が報道各社に直筆のファクスを送付。(1)2社に意見や提案を聞いてもらえない(2)素材を全身に使用した水着(ニュージーランド製)を試してほしいが、どの選手が試着を希望しているか情報がもらえない-と打ち明けた。

6月6日のジャパン・オープンで決勝10種目中5種目で日本新が出たが、全てLZR RACER 着用であった。
7日もLZR RACER 着用で 5種目で日本新。
8日には北島康介が男子200m平泳ぎでLZR RACER 着用で 、2分7秒51の世界新記録をマークした。他に4人がLZR RACER 着用で 日本新を出した。

なお、男子50メートル背泳ぎ予選で古賀淳也が日本記録をマークした。ミズノ社製の従来品で、今大会、LZR RACER以外の日本記録達成は初めて。

日本水泳連盟は8日、日本代表が北京五輪で着用する水着について、英スピード社を含むすべてのメーカーの製品を選べるようにする方針を決めた。 契約するミズノ、デサント、アシックスの国内3社以外の水着着用を認める日本水連の方針を、3社側からも同意を得た。

ジャパンオープンで、世界記録連発で注目された英スピード社製水着を着た日本選手が世界新記録1、日本新記録延べ15をマーク。選手から「スピード社製水着を着たい」との声が強まり、国内メーカー側も認めざるを得ない状況となった。

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Speedo社は世界最大の売り上げシェアを誇る水着ブランド。オーストラリアが発祥で、90年代に英国に本社を置いた。

LZR RACER (レーザー・レーサー)は米航空宇宙局(NASA)をはじめとする国際的な研究開発期間の専門家や技術協力を経て、3年以上の歳月をかけて開発した水着。

新素材「LZR Pulse」をベースとし、抵抗の大きい胸、腹、尻には水を吸わないポリウレタン皮膜の「LZR Panels」 を組み合わせ、抵抗の少ないストリームラインを維持し、全身が圧縮された形になる。

LZR Pulseは耐塩素加工を施したスパン繊維と超極細ナイロン繊維で織られた特殊素材。強い着圧で、筋肉の振動と肌の波打ちを抑制する。

LZR Panelsは超薄型でパワフル、かつ抵抗が少ないポリウレタン素材で、分析結果に基づいた最適なポジションに配置することにより、理想的なストリームラインを形成し抵抗を軽減する。

水着1枚分の生地パーツが3つしかなく、継ぎ目を超音波で溶着した縫い目がない世界初の無縫製競泳水着で、スリーピースの3D構造と共に、第2の肌の様にぴったりとスイマーのボディーにフィットする。

国内メーカーの水着は、最大20を超える生地パーツを縫い合わせており、継ぎ目が微妙な抵抗を生む。
Speedo社によると、無縫製設計よって、従来のステッチ型水着に比べ表面摩擦抵抗が6%低下する。1日70着しか生産できないという。

国際水泳連盟もいったん「浮力」の疑念を抱いて調査に乗り出したが、問題なしとした。

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山本化学工業

社名 山本化学工業株式会社 YAMAMOTO CORPORATION
設立年月日 昭和39年5月1日
本社 大阪市生野区
業種 複合特殊ゴム製品製造
資本金 1,000万円
従業員 60名
取扱品目 ダイビング及びウィンドサーフィン用ウエットスーツ素材
メディカル用及びスポーツ用サポーター素材
バイオラバー素材
サバイバルスーツ用素材(米国UL認定)
耐放射線防護用素材(厚生省認可)
誘電性発泡体ゴム素材
各種超軽量発泡体グリップ
独立発泡体化粧用パフ

同社の前身は戦後、国産原料からできるラバーの研究を開始。1956年には消しゴム付き鉛筆を開発し、特許を取得、ヒット商品となった。
1964年に山本化学工業として会社を設立。もっと自在に動ける水着が欲しいという海女たちの要望に応えてウエットスーツを開発した。
トライアスロンやオープンウオーター(遠泳)の世界では知られている。

1995年にS.C.S(スーパーコンポジットスキン)素材を開発した。

バイオラバースイムS.C.S(スーパーコンポジットスキン)素材を使用するもの。

S.C.S独立気泡のネオプレン・ラバーに特殊表面加工(表面に水分子を集めるミクロ単位のくぼみをつくった半球状の構造を採用)を施したもので、ラバー表面のミセル構造が、空気中では水をはじき、水中では水になじんで流水抵抗を限りなくゼロに近付ける。
表面抵抗値は従来スキンの1/10以下、水中では1/100の超低抵抗になる。

水が全く浸透しないため、水中でも重さが変わらない。

ミセル構造:
界面活性剤のような疎水性基と親水性基の両方をもつ溶質分子が水に溶けたとき、溶質分子が疎水性基同士をつきあわせて親水部のみを外側にした微粒子を形成する。

空気中では疎水性を示し、水を弾く。

既にニュージーランドの水着メーカー Blue Seventyが使用して商品化。国際水連(FINA)の認可も受けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


コメント(1)

こんにちは、はじめまして
私も「マテュース スーパー BRS」ってのがあります。

何かルールを元に改良されたみたいですねー
http://www.matuse-japan.com/super_brs.html

でもやっぱり値段は…

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