米国の燃料用エタノール事業の話題

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1.米国西海岸の燃料用エタノールのメーカーであるPacific Ethanol が話題になっている。

Microsoft Bill Gates の個人投資会社 Cascade Investment が、Pacific Ethanol 2005年11月に西海岸に工場を建設するのを手助けするため、84百万ドルを投資、優先株を所有していたが、昨年11月に優先株を普通株式 1050万株に転換し、順次売却すると発表した。

本年55日のSECへの報告では1050万株から950万株に(持株比率は21%から18.5%)減ったが、その後、516日のPlatts記事では、140万株まで減少した。

米国の燃料用エタノールは急激な能力増加による供給増加で価格が25%ダウンした上、コーンの価格が高騰しているため、採算が悪化、各社の株価は下がっている。

2007年の米国の生産量は6,499百万ガロン、それに対し2008年4月時点の能力は8,522百万ガロン、建設中・拡張中の能力が5,084百万ガロンで、合計 13,606百万ガロンもある。

参考 2007年の燃料用エタノール生産量

   米国     6,499百万ガロン  
   ブラジル     5,019百万ガロン  
    EU      570百万ガロン  
   中国      486百万ガロン  
   世界計    13,102百万ガロン  

 

Pacific Ethanol の業績は以下の通り。(単位:千ドル)

  2005 2006 2007
売上高   87,599  226,356  461,513
当期損益   -9,923    -142  -14,400

Pacific Ethanol の株価は20065月には40ドルをつけたが、1年前は15ドル、最近はそれが 3ドル程度となっている。昨年11月の売却発表で20%以上下落した。
(同社は
519日に第1四半期の結果を発表したが、一時的な徐却損を除くと黒字になったため、株価は反転し、5ドル強に上がった。)

Cascade Investment は同社に84百万ドルを投資したが、昨年8月以降で60百万ドルを失ったと言われている。

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Pacific Ethanol の能力は以下の通り。(単位:百万ガロン/年)

  立地 能力 建設中
Pacific Ethanol Madera, Calif.    40  
Boardman, Oregon    40  
Burley, Idaho    60    
Stockton, Calif.       50
(Total)   (140)    (50)
Front Range Energy Windsor, Colorado    48  

* Burley, Idaho は本年4月末に操業開始
 Front Range Energy Pacific Ethanol 42%を保有

参考:ほとんどの工場はトウモロコシ産地の中西部にある。
 No.1メーカー POET  能力1,253百万ガロン、建設中
282
 No.2メーカー Archer Daniels Midland 能力1,070、建設中 550

資料:Renewable Fuels Association
     統計 http://www.ethanolrfa.org/industry/statistics/
     能力 http://www.ethanolrfa.org/industry/locations/

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2.米国エネルギー省は2008年1月、Pacific Ethanol を含む4社の小規模バイオリファイナリー計画に、4年間で最大 114百万ドルの助成を行うことを発表した。

2012年までにコスト競争力のあるセルロース系エタノールを製造するというブッシュ大統領の目標を達成するため、商業規模の1/10 サイズのバイオリファイナリーで様々な原料を使用して新規変換技術をテストする。

1)Pacific Ethanol :助成予定額 最大2,430万ドル
 Boardman, Oregon のコーンベース工場に、BioGasol 社が独自開発した変換プロセスを用いて農業残渣物と森林残渣物をエタノールに変換する設備を増設。

2)ICMColwich, Kansas):DOE の助成予定額 最大3,000 万ドル
 St.Joseph Missouri に農業残渣物(トウモロコシの繊維や茎葉、スイッチグラス、ソルガムなど)原料の工場を建設。

3)Lignol InnovationsBerwyn, Pennsylvania):DOE の助成予定額 最大3,000 万ドル
 
Commerce City, Coloradoの石油精製工場に、「biochem-organisolve」と呼ばれる溶剤を使用して、硬木や軟木の廃材をエタノールや市販製品に変換する工場を併設。

4)Stora Enso North America(Wisconsin Rapids, WI):DOEの助成予定額 最大3,000 万ドル
 Wisconsin Rapids, WIで、森林廃棄物を用いて Fischer-Tropsch 法によるディーゼル燃料への変換を計画。

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3.米国のEd Schafer 農務長官は5月19日の会見で、食糧高騰に対してエタノール増産を擁護した。

世界中で穀物の価格が高騰し、暴動まで起こっている。米国は世界一のトウモロコシ生産国だが、本年のトウモロコシの収穫の1/3がエタノール生産に使われる予想で(昨年は25%)、これによるトウモロコシの値上がりが食糧高騰の要因の一つという批判が出ている。

これに対し長官は、バイオ燃料エタノール増産でトウモロコシの価格が5割アップしても、国内の食糧高騰に与える影響は1%未満、と語り、「エしタノール悪玉論」やバイオ燃料促進計画の変更を求める動きに反論した。

農務長官の発言: 
・バイオ燃料の需要は食糧価格に影響は与えるが、重要な要素ではない。
・再生可能燃料基準の変更、エタノール生産減税、エタノール輸入関税撤廃にはメリットはほとんどない。

 これらは食糧品の価格に影響を与えない。
・バイオ燃料政策は、短期的には少々のデメリットはあっても、長期的にメリットがある。

農務省では本年の食糧価格は、エネルギー価格を含むコストアップ分の転嫁で、1990年の5.8%アップに続く、5%の値上がりになると予測している。

欧州委員会は5月20日、食糧・農産品価格の高騰を受け、減反政策(耕作地の10%が対象)を廃止するとともに、バイオ燃料用作物に支払われていた1ヘクタール当たり45ユーロの奨励金を2010年までに廃止するなどの共通農業政策改革案を加盟27カ国に提示した。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。


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