Borden Chemical 等が合併して設立されたHexion Specialty Chemicals (投資会社Apollo Management の100%子会社)が、2007年7月、借入金込みで106億ドルで Huntsman を買収する契約を締結した。Basellとの契約を破棄しての契約締結であった。
Basellは買収価格の引き上げを拒否、「Hexion は買収の認可を受けるのに長期間を要しよう」とし、「取引完了までに不確定要素もあり、Basellとしては推移を見守りたい」とした。
Basellは違約金2億ドルを受け取った。Hexion は合併が実現すれば、このうち1億ドルを負担することとなっている。
2007/7/14 Hexion、Huntsmanを106億ドルで買収
上記記事では、Hexion と Huntsman には重複事業はなく、独禁法上の問題があるとは思えない、と述べた。
しかしFTCの審査は時間がかかっており、昨年10月に両社は追加資料を求められている。
このため、 Hexion は本年4月に契約打切り期限を7月8日まで延長している。
Hexionは6月18日、この買収契約が実行不能であると宣言する訴えを裁判所に提出したと発表した。
損害賠償や違約金の義務がないという決定を求めるもの。
Huntsman の負債が増加したこと、同社の事業が悪化し収益が低下していることを理由とし、契約上の「重要な悪影響」に相当するとしている。
Huntsman の本年第1四半期の純損益は前年同期の46.6百万ドルから7.3百万ドルに下落し、EBITDA(税引前利益+支払利息・減価償却費)も242百万ドルから169.5百万ドルに下がっている。
一方、3月末の長期債務は昨年末の1,975百万ドルから2,265百万ドルに13%増加している。
両社は個別にはやっていけるが、合意した資本構造で借入金を増やして合併を行なえば立ち行かなくなるとし、銀行が必要資金の融資に応じないだろうとしている。
これに対し、Huntsmanは19日に声明を発表、Hexion の行動は契約に反するもので、同社としてはあくまで契約の実行を求めるとしている。
融資予定の Credit Suisse Group とDeutsche Bank は何も発表していない。
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合併契約には、銀行が融資をしない場合に、Huntsman は Hexion に対し銀行を訴えさせる権利を有しており、それで得た賠償金はHuntsman に与えられることとなっている。
また、契約では特定の事情の場合に違約金324百万ドルを払うこととなっている。
Hexion の今回の訴えは「重要な悪影響」を理由にこれらの免除を求めるもの。
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Huntsman の株価はHexionの発表を受け、$12.50から $8.36 に下落した。
Basell は1株 25.25ドル、負債込みで96億ドルで契約したが、Hexion は昨年7月9日に1株28ドルに引き上げ、負債込み 106億ドルでこれを奪い取った。
米国でサブプライムローンの問題が表面化し、世界的な信用収縮不安で投資家がリスク資産から資金を引き揚げる動きが始まる直前である。
アナリストは、この取引は買収ブームのピークのもので、Huntsman の価値を過大評価しているとする。今の状態なら、$13 ~$15が妥当だろうとしている。
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なお、Hexionは今回の訴えとは切り離し、FTCほかの承認を求める運動は続けるとしている。
但し、延長した契約打切り期限の7月8日までにFTCの承認が得られない場合は、契約打切りになると思われる。
(その場合の条件は不明)
付記
Huntsman は6月23日、Hexion の親会社を合併を邪魔したとして訴えた。
損害賠償として30億ドルに、Basell に払った違約金の半分1億ドル及び企業価値に与えた損害に対する賠償(金額不明)を求めている。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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