双日は8日、高機能樹脂や合成ゴムの原料として需要が拡大しているDCPD(ジシクロペンタジエン)を製造するアメリカのCymetech, LLCを買収し、完全子会社化したと発表した。Cymetech Corporationに社名変更する。
Cymetechは、独自の技術でCalvert City (KY)でDCPDを製造しており、25,000トンの生産能力を持つ。
DCPDは、液晶フィルム、光学レンズの原料の環状オレフィン・コポリマーや、EPDM の原料として需要が拡大している。
EPDMの第3成分はDCPDのほかに、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン(1,4-HD)などがある。
また、DCPDは、双日の子会社のMetton America が製造・販売しているメトン樹脂(DCPD-RIM成形法用配合液)の原料であり、両社のシナジーが期待できる。
双日は、米国、欧州に加えて、経済成長が著しいアジアでの化学品事業の拡大を図っていくとしている。
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RIM(Reaction-Injection-Molding) は反応射出成型方式で、DCPD-RIM成形法の特長は、極めて短時間で大型形状の成型物や複雑形状の成型物が経済的なコストで得られることにあり、主要用途は以下の通り。
・建機、農機、大型トラックなどのボディーパーツ
・合併浄化槽筐体
・ユニットバス周りのプラスチックパーツ
・量水器ボックス、パイプ継ぎ手などの土木資材
米国にはDCPD-RIM成形法用配合液のメーカーが2社あった。
1社は Hercules のMetton で、現在は上記の通り、双日の子会社Metton America である。
他の1社はBFGoodrich が開発したTelene で、Cymetech LLC が製造していたが、日本ゼオンと帝人化成のJVのRIMTEC(株)が事業を買収し、全額出資のフランス子会社 Telene SAS となっている。
また、Metton America が双日の連結子会社となったのは、RIMTEC設立に際してEUから条件を付けられ、帝人が手放したためで、これらの事業の間には複雑な関係がある。
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Cymetech:
2000年4月、BFGoodrich のPerformance Materials 部門と、ポリウレタンメーカーの Advanced Polymer Technologiesが合弁会社Cymetech を設立し、DCPDとTelene の製造を開始した。
2001年2月、BFGoodrich はPerformance Materials 部門を投資家に売却、同部門はPMD Group Inc.となったが、同年7月に Noveon Inc と改称した。コーティング材料、ポリウレタン材料等を製造・販売した。
2002年、Noveon 所有のCymetech 株を投資会社Sterling JA, LLC が買収した。
但し、Telene 事業はNoveon が引き取り、Cymetech はDCPD製造会社となった。
(Noveon はTelene の自社製造を止め、日本ゼオンからのOEM供給品に切り替えた。)
2004年、Lubrizol が低成長の潤滑油添加物事業の多角化のため、18.4億ドルでNoveon を買収した。
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Metton America:
Hercules, Inc. のMetton 事業を1995 に帝人、丸善石油化学、ニチメン(現双日)の3社が買収し、Metton America を設立した。
3社で投資会社 MTN Chemicals (帝人化成 60%)を設立してMetton America の60%を出資。
日本では帝人化成が100%子会社・帝人メトンを設立した。(帝人メトンもMetton America に25%を出資した)
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日本ゼオン:
日本ゼオンはGPI法(イソプレン抽出技術)を開発、ジシクロペンタジエンを主原料としてRIM(反応射出成形)方式によって得られる大形成形品「PENTAM(R)」を販売した。
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RIMTEC:
2003年8月、日本ゼオンと帝人化成はDCPD-RIM配合液および各種RIM成型品の製造、販売のため、合弁会社 RIMTEC(ゼオン 60%、帝人化成 40%)を設立した。
両社はDCPDを主原料とし、RIM方式により成型される新規の熱硬化性樹脂として日本ゼオンはPENTAMを、帝人メトンはMETTONを販売していたが、両事業を統合することとした。
Metton America:
EUはこの合併に関して、欧州市場でのDCPD-RIM成形法用配合液の販売で懸念を示した(帝人:Metton America とゼオン)。その結果、帝人がMetton America の直接・間接出資を処分することを提示、2003年8月、合併が承認された。
2003年9月、ニチメンは帝人化成のMetton America への直接・間接出資分を買取り、85.11%を取得して傘下に収めた。
2005年11月、RIMTEC はLubrizol との間で、Noveon のDCPD-RIM成形法用配合液(Telene)事業の買収について基本契約を締結した。
買収にあたり、RIMTECの全額出資の子会社Telene SASをフランスに設立し、新会社がNoveon より従業員、研究開発設備などを含む全てのTelene事業を引き継ぐ。
Noveon はDCPD-RIM成形法用配合液(Telene)をRIMTEC社からのOEM供給品に切り替えており、両社は良好な協力関係を構築してきた。
RIMTECの販売拡大の速度を上げる為に直接EU市場を開拓したいという意向と、Noveonの親会社Lubrizol のコア事業集中方針とが合致し、Telene事業買収の合意に至った。
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当初の各社の現状は以下の通りとなる。
DCPD | DCPD-RIM成形法用 配合液 |
現所有者 |
Metton America (帝人→双日) |
双日 | |
Cymetech (→双日) |
Cymetech(Telene) (→Noveon→RIMTEC) |
RIMTEC (ゼオン/帝人) |
当初、DCPDと配合液の一貫メーカーであったCymetech は、BFGoodrich の離脱でTelene との縁が切れたが、今回、双日の下で、別系列のMetton にDCPDを供給することとなる。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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