EU、カルテルで示談制度導入

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EU の欧州委員会は6月30日、企業の価格カルテルに絡んで新たに「示談制度 (settlement procedure)」の導入を決めたと発表した。
昨年10月に提案し、各方面からの意見を求めていた。

捜査の終了段階で欧州委は対象企業にカルテルの証拠を示す。
企業がカルテルへの参加を認め、責任を認めた場合、制裁金の10%を減額する。

法的手続きの簡素化・迅速化や訴訟の負担軽減が目的で、米国の “plea bargaining system” とは異なり、証拠の利用や罰則に関して交渉も取引もせず、協力した企業に決まった見返りを与えるだけである。

また、情報提供などで協力的な企業に制裁金の免除や減額を認めるLeniency 制度とは別。
Leniency による減額と示談での減額は重複して受けられる。

 

EUはカルテルに対して巨額制裁金を課しており、この結果、欧州司法裁判所に提訴するケースが相次いでいる。

日本企業については以下の通り。(詳細 2008/2/12 欧州カルテル制裁金への対応     

対象分野 主な対象企業 制裁金
(百万ユーロ)
日本企業対応
送電設備 三菱電機、東芝、日立製作所、独・シーメンス   751 提訴
エレベーター 三菱電機、米・オーチス   992 受諾(少額)
ファスナー YKKグループ、独・プリム   329 提訴
業務用ビデオテープ ソニー、富士フィルム、日立マクセル    75 受諾(少額)
建築用板ガラス 旭硝子、日本板硝子、仏・サンゴバン   487 受諾(裁判費用などを考慮)
クロロプレンゴム ENIDuPont Dow Elastomers電気化学、東ソー    243 電化提訴、東ソー受諾(少額)
NBR  (2008/1) Bayer日本ゼオン    34 受諾(少額)

示談制度により法的手続きの簡素化や訴訟案件の減少を狙う。

欧州委のNeelie Kroes 委員競争政策担当は、「示談制度によりカルテル事件を迅速に処理し、新たな案件の調査が出来る。企業側も早く決着でき、制裁金も減るというメリットがある」としている。

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これに対して、10%の減額では少なすぎるとの意見が多い。10%では企業側は司法裁判所に提訴する権利を放棄しないだろうと見られている。
これでやってみて効果がなければ、減額率を見直すのではないかとのコメントもある。

これまでは提訴すれば必ず制裁金が減額されていた。大幅な減額の例もあり、10%程度の減額で権利を放棄するかどうかは疑問である。
但し、昨年12月に(手続上の問題で)初めて増額例が出た。今後は必ずしも減額されるとは限らない。

2007/12/14 欧州第一審裁判所がカルテルの制裁金を増額 

英国では独自の示談制度があり、いろいろな段階での示談が行なわれるが、最近では乳製品関連で early resolution agreements”が行なわれた。
英国では2530%の減額が行なわれる。

このほか、オランダとフランスに示談制度がある。


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


 

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