三菱商事と三井物産は6月30日、西豪州LNG事業に関し移転価格税制に基づく更正通知を東京国税局より受領したと発表した。
両社は2005年に、2000年3月期から2005年3月期の6事業年度について東京国税局から移転価格税制に係る調査を受け、2006年6月に除斥期限(時効)が到来する2000年3月期の更正通知を受けた。
両社は東京国税局に対して異議申立を行なうと共に、日豪租税条約に基づき相互協議の申立を行なった。
日豪両当局は二重課税の排除を目指し、2006年9月から二国間協議を継続しているが、現時点では合意に達っしていない。
このため、両社は昨年6月に2001年3月期分、今回2002年3月期分の更正通知を受けた。残る3年度分も順次通知を受けることとなる。
通知を受けた所得増差額と追徴税額(法人税、事業税及び住民税:本税及び付帯税を含む)は以下の通り。
三井物産 | 三菱商事 | |||
所得 | 追徴税 | 所得 | 追徴税 | |
2008/6(2002/3月期) | 100億円 | 47億円 | 116億円 | 48億円 |
2007/6(2001/3月期) | 82億円 | 39億円 | 89億円 | 36億円 |
2006/6(2000/3月期) | 49億円 | 25億円 | 不明 | 22億円 |
なお、三菱商事は2006年3月期決算に6事業年度分として法人税等234億円を見積もり計上している。
問題になっているのは、両社が共同出資したオーストラリアの合弁会社に対する情報提供や経営指導などに関する取引。
三菱商事と三井物産は、西豪州沖合のNorth West Shelf のLNGプロジェクトにおける6分の1の権益保有者で、1985年に各々50%の出資により豪州法人 Japan Australia LNG (MIMI) Pty. Ltd.を設立した。
MIMIはほか5社のパートナー、豪BHP Billiton Petroleum、豪BP Developments Australia、豪ChevronTexaco Australia、豪Shell Development、豪Woodside Energyと共に天然ガス・コンデンセート・原油・LPGの開発、生産、輸送、販売に参画している。
North West Shelf プロジェクトは1970年代初頭に西豪州北西部沖合い約130kmにある鉱区で発見された天然ガスの開発案件。LNGの他、原油・コンデンセート・LPG等を生産・販売する豪州最大の総合エネルギープロジェクト。
参画比率は各社1/6(16.67%)。
1984年にコンデンセート販売を開始、1989年からは日本の電力・ガス会社向けにLNG供給を開始、1989年にはWanaea油田、Cossack油田が発見され同油田からの原油及びLPG生産が1995年から開始された。2004年8月に完工した第四液化系列と併せ、LNG生産能力は年間1,170万トンとなったが、需要旺盛なアジア市場への供給に向け、2008年央の立上げを目指し、約1,600億円を投じて年間420万トンの生産規模を有す第五系列を建設している。
第五系列により生産能力は約4割増の計年間約1,590万トンとなる。
MIMIは日本の買主10社へのLNG販売(年間約1,100万トン)を柱とする一方、豪州国内向けに天然ガスを、また国際市場にコンデンセート、原油、ならびにLPGを販売している。
販売損益そのものは豪州に帰属し、日本には(配当送金があるまでは)課税権がないため、情報提供や経営指導料を査定して課税するものと思われる。
参考
2006/6/29 武田薬品、移転価格税制に基づく更正
2008/2/7 信越化学の移転価格課税
2008/5/1 ホンダの中国四輪車事業の移転価格税制問題
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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