公取委、「レジ袋一律5円」 一転して「問題なし」に

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新潟県佐渡市は2007年、トキの放鳥を控え、「美しい島づくり」を目指し、「レジ袋ゼロ運動」のPRを始め、市内全域の店に4月からレジ袋を1枚5円に有料化するよう要請した。レジ袋の代金の5円は、買い物袋「マイバッグ」の製作費に充てる計画だった。

しかし、公正取引委員会が「行政が価格を一律にするよう指導するのは好ましくない」と指摘したため、市は「一律1枚5円」を撤回し、店舗が袋代を自由に決められるよう変更した。「5円」をうたって作製したポスターも廃棄した。
公取委は、「値段は各社が自由に決めるもの。目的は別にして、強制したり、離脱が困難だったりする価格設定には問題がある」とした。

安井至先生の「市民のための環境学ガイド」がこれを取りあげている。
  2007/3/18 「公正取引委員会とレジ袋」 
http://www.yasuienv.net/JFTCvsSado.htm

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公正取引委員会は10日、「独占禁止法に関する相談事例集(平成19 年度)」を公表した。
    
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.july/080710.pdf

事業者又は事業者団体がこれから行おうとする具体的な行為に係る独占禁止法上の問題の有無等について相談を受け付けており、併せて独占禁止法違反行為の未然防止の観点から、寄せられた相談のうち他の事業者等にも参考になると思われる事案について、その概要を事例集にまとめ公表するもの。

その中に、「レジ袋の利用抑制のための有料化の取組」がある。

公取委は、「市、住民団体及び小売事業者が、平成19 年×月△日以降、市内の小売店舗での商品の販売に際して、レジ袋の提供を有料化するとともに、提供するレジ袋の単価を1枚5円とする内容の協定を締結することは、直ちに独占禁止法上問題となるものではない」と回答している。

その理由として、以下の通り述べている。

(1) 本件は、参加小売事業者らが共同してレジ袋の有料化及び単価を取り決めているものとして検討する必要がある。
   
(2) 本件取決めの対象となっている事業活動は、参加小売事業者各社が、レジ袋を1枚5円で提供するというものであるが、レジ袋は、一般的に、その購入を目的として顧客が来店するものではないといえ、小売事業者の事業活動という観点からすれば、レジ袋の提供は商品提供というよりも副次的なサービスの一つと捉えられる。
よって、参加小売事業者間の競争が行われている場は、レジ袋の取引ではなく、当該小売事業者が販売する商品全体の取引と捉えられる。
   
(3) A市においては、ほとんどすべての小売事業者が本件取組に参加することになるため、レジ袋が必要な顧客にとっては、レジ袋を無償提供又は安値で提供する小売事業者を選択する余地がほとんどなくなることになる。
  しかし、
  ア. 本件取決めによって、小売事業者間での商品の販売についての競争は制限されないこと
  イ. レジ袋は、顧客にとって小売店舗での商品購入に当たり必要不可欠なものとはいえず、また、顧客はその購入を目的として来店するものではないこと
  ウ. レジ袋の利用抑制の必要性について社会的理解が進展しており、正当な目的に基づく取組であるといえること
  エ. 本件取決め内容は、
(ア) レジ袋の利用の抑制という目的達成のための手段として、以前から行われてきたポイント制等の手段ではその効果に限界がみられる一方、レジ袋の有料化は、ポイント制等に比べて効果が高いと認められること
(イ) 単価を取り決めなければ、レジ袋の利用の抑制という目的を達成できないような安価な提供に陥る可能性があること
(ウ) 取り決められる単価の水準として、単価5円は、目的達成のために顧客が受忍すべき範囲を超えるものとは考えられないことから、目的に照らして合理的に必要とされる範囲内であること
   
から、直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
   

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「相談事例集」には次のようなものが記載されている。

競合する建築資材メーカー同士が、運送コスト削減のため、遠隔地販売先向け製品について、毎月一定量を相互にOEM供給を行うことについて。

   ーーー 直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答

  
原油価格及び穀物価格の高騰に伴う原材料費等の値上がりを受けて、製造コストが大幅に上昇し、業界が困窮していることから、事業者団体が会員事業者の取引先事業者に対して、業界の窮状を訴える文書を発出することについて。

   ーーー 直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答

但し、文面上特段の問題がない場合であっても、本件文書の作成等を契機として、価格の引上げ等について、会員事業者間で共通の意思が形成されるなど、競争制限的な行為が行われるような場合には、独占禁止法上問題となるおそれがある。

 


* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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