米国住宅着工、依然低迷

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米国商務省が17日に発表した6月の住宅着工件数は、季節調整済みで年換算1,066千戸となり、前月(修正後)の977千戸を 9.1%上回った。

しかし、商務省は同時に異例の Special Note を発表した。

6月の住宅建設許可と建設着工はそれぞれ前月比 11.6%、9.1%の大幅増加となった。
特に北東部の集合住宅が増加している。
北東部の集合住宅を除くと6月の住宅着工は4%のマイナスとなっている。

ニューヨーク市の新しい建築基準が7月1日に施行された。
このため、ニューヨーク市で6月に多数の集合住宅の建設許可が出された。

北東部で 6月に前月と比べ11,000戸増の集合住宅が着工されている。
これを季節調整すると年率で126千戸となり、これを除くと6月の着工は前月比4%減となる。

実質ベースでは2008年1-6月の平均は年換算で 1,013千戸で、2007年平均を大きく下回っており、依然として回復の兆しは見えていない。

サブプライム問題はまだ収まらず、拡大し続けている。

住宅金融大手のファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の融資・保証残高は3月末に5兆ドルに達している(全米の住宅金融残高は約12兆ドルの40%)が、両社の株価が先週、約半値に下がった。

ポールソン米財務長官は13日、両社の株式を上限を設けずに取得し、必要時に貸し付けを行う権限の付与を議会に求める方針を発表した。
米連邦準備制度理事会(FRB)も同日、必要と認められた場合に資金を直接貸し出す権限をニューヨーク連銀に付与するとの声明を発表した。

Fannie Mae は正式名は連邦住宅抵当公庫(Federal National Mortgage Association)、Freddie Mac 連邦住宅金融抵当金庫Federal Home Loan Mortgage Corporation)で、政府支援法人GSE(Government Sponsored Enterprises)と呼ばれる。
債券発行で調達した資金で民間金融機関から住宅ローン債権を買取り、住宅ローン担保証券に仕立て直して投資家に販売している。

Fannie Mae1938年に米国の法律に基づいて設立されたが、1968年に民営化された。
Freddie Mac は1970年に米国連邦議会の公認のもと、Fannie Mae
が十分カバーしていなかった部分に資金を供給するために設立された。
いずれもNYSEに上場している。

両社には政府保証はないが、「暗黙の政府保証」がついているとみられてきた。

このため日本の金融機関も大量の投資をしており、毎日新聞によると、2社発行債券保有額は3月末時点で、農林中金の5.5兆円、三菱UFGの3.3兆円、日本生命の2.6兆円、みずほの1.2兆円など、合計15兆円を超える。

メリルリンチは17日、4-6月期決算を発表したが、サブプライムローンの赤字は97.5億ドルで、同赤字は昨年7月からの1年間で 419.5億ドル(4兆4500億円)に膨れ上がった。

18日、シティグループは4-6月決算を発表した。サブプライムローン関連の評価損を72億ドル計上した。1年間の累計損失額は582億ドル(6兆2000億円)で欧米金融機関では最大規模となった。

サブプライムローンを組み込んだ住宅ローン担保証券は、昨年秋以降、買い手不在で売買の成立しない状況が続いており、今後も評価損は増えると思われる。米国経済への影響がますます深刻になってきた。

付記

7月20日の毎日新聞の「時代の風」に浜矩子・同志社大教授が「ファニーとフレディ」を書いている。

本質的な問題は、このような事態に至るまで、民業であって民業でないような、官業でないのに官業であるような巨大な金融機関の存在を放置してきたことだ。そのことの矛盾と不合理を、サブプライム問題が顕在化させた。--どう安らかにご退場願うかが次の課題だ。
ここで、ふと日本のかつての巨大な官製金融機関が頭に浮かぶ。2017年9月末の完全民営化を目指している。---

 

付記

7月26日(土)に米上院は住宅公社支援法を可決した。

骨格は以下の通り。

米住宅公社支援
 緊急融資と公的支援による資本注入の枠組みを整備。発動は財務長官に一任する。
米住宅公社の監督強化
 経営健全化を厳しく点検するため新たな監督機関を発足
3千億ドルの債務保証
 米連邦住宅局を通じて低利への借り換えを促進
初めての住宅購入を支援
 ローンの一部について税金を払い戻す優遇制度を創設
州への助成
 差押さえに直面した物件買取りや修繕に40億ドルの補助金を計上

* 総合目次、項目別目次は
   http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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