今年上期(1―6月)の合成樹脂の国内出荷量は、ポリエチレンなど主要5製品すべてが前年同期比マイナスとなった。
5製品の前年実績割れは1998年上期以来、10年ぶり。
国内景気の減速による需要減に加え、原油高に伴う石化製品の値上げが響いた。
輸出も、以前とくらべ数量が減少しているPSを除き、大幅減となっている。
輸出の場合は、三菱化学のエチレンプラントの火災事故の影響で、輸出をカットしたことも響いている。(特にPVC)
出荷数量(千トン) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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PVCの場合は、昨年6月の改正建築基準法施行の影響で住宅着工件数が激減したが、そこからの回復は未だに見られない。
(前年比マイナス幅は縮小しているが、前年下期のマイナスを取り戻せていない。)
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1ー6月のエチレン累計生産量は、3,570.5千トンで、前年同期比 8.2%(319千トン)の減少となった。
1月以降毎月前年割れの状態が続いている。3月以降は 4カ月連続で60万トン割れとなっている。
昨年12月の三菱化学鹿島第2エチレンの火災事故で全国能力の6.4%に相当する516千トン/年が停止した。
3月下旬に約2/3の能力部分が生産を再開したが、これによる減産が大きい。
また、今年は定期修理が多い。
しかし、本年の生産量の前年比減は生産面の理由だけではない。
本年は3月中旬から山陽石油化学と東ソーが定期修理を行なったが、5月から三菱化学・鹿島の第1エチレン、三菱化学・水島、丸善石油化学・千葉が定修を行なった。
更に、大阪石油化学・堺、三菱化学・鹿島の第2エチレン(保安検査認定取り消しで毎年定修が必要)、新日本石油化学・川崎が6月末から8月末までの間に順次定修を実施する。
このため、本来なら石油化学品全体の需給は非常に窮屈な状態が続くことになる。
その中で、各社がエチレンの減産に入る。
原料が高騰しているなか価格への転嫁が十分に行なえず、採算状況を勘案したもの。
三井化学は、市原工場で8~9月の2カ月間、10%程度稼働を落とす。
EGやPEの需要減退で、それぞれエチレン減産見合いの生産減を実施する。
旭化成は水島工場で7月上旬から稼働率を5%減の95%にした。
住友化学も7月上旬から千葉工場の稼働率を4%減の96%にしている。
両社はSMの減産を行なっている。
3社がそろって減産するのは、アジア通貨危機による需要急減に見舞われた1998年以来10年ぶりで、他社も追随する可能性がある。
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三菱化学は18日、黒崎事業所で試運転を行なっているポリカーボネート樹脂製造設備(年産6万トン)の稼動を当初の予定の7月から当面の間延期すると発表した。
原油高騰を背景とした原燃料費上昇に加えて、ポリカーボネート樹脂の市況低迷が続き、事業の採算性が悪化しているためで、稼動開始時期については、今後の原燃料、市場及び価格の動向を勘案しながら、総合的に判断するとしている。
三菱化学(ヴイテック)は又、PVCの輸出を停止し、水島工場の年産11万トンのプラントを5月末で停止した。
2008/4/15 ヴイテック、PVC生産体制見直し
三井化学は収益が悪化している高純度テレフタル酸の輸出を停止し、岩国大竹工場の古い設備を廃棄し、国内能力を47%落として年40万トンにする。3基のうち、1基は既に停止、もう1基も2011年までに停止する。
同社は又、ポリカーボネート需要の低迷を受け、原料のビスフェノール-Aの減産を行なっている。
シンガポールと大阪工場の定期修理に加え、市原工場の設備の稼働率を6月から70%に抑制しており、生産量は少なくとも7月末までは従来の規模を大きく下回る形で推移することになる。
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業界紙によると、中国でも石油化学製品の減産が広がっている。
原燃料価格高騰分を製品価格に転嫁できないためで、エチレンでは7月に入り、ほとんどのセンターが稼動を90%に落としており、ポリオレフィンの場合は20%程度の減産企業も少なくないという。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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