新日本製鐵は7月29日、連結子会社の日本スチレンモノマーを6月30日に解散したと発表した。
日本スチレンモノマーは1988年に新日鐵化学(65%)、東ソー(35%)のJVとして設立された。
新日鐵化学大分製造所内に1990年9月に能力200千トンのSMプラントをスタートさせ、1995年8月に現在の232千トンに増設した。
原料エチレンは昭和電工から供給を受け、ベンゼンは新日鐵化学が供給している。
製品は出資比率で引き取っており、損益ゼロで運営していた。
業績推移(単位:百万円)
'06/3 '07/3 '08/3 売上高 28,838 33,954 38,886 経常利益 1 1 0 当期純利益 0 0 0
新日鐵化学と東ソーは本年3月5日、合弁事業を3月末で解消すると発表した。
東ソーは1998年10月に四日市のSMプラントを停止後、日本スチレンモノマーからの引取りのみでSM事業を行ってきたが、原料は全て他社品で(東ソーとしてはエチレンは購入ポジションで、立地は別として供給余力はない)、数量も年間8万トン程度のため、「選択と集中」を進める中で、SM事業からの撤退を決めた。
新日鐵化学は東ソー保有株式を買取り、100%子会社とした。
大分製造所には自社の190千トンプラントがあり、合計2系列422千トン(業界4位)となる。
「中国市場に近いというプラント立地条件も最大限いかした事業展開で、今後も強固な事業基盤の構築を目指す」とした。
新日鐵化学はその後、グループ一体運営による業務効率化を図るため、4 月に設備等資産を取得し、6月末をもって同社を解散することとした。
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新日鐵化学は当初、戸畑に18千トンのSMプラント及びPSプラントを持っていた。(その後、SMを停止)
1982年に新日鐵大分に150千トンのSMプラントを稼動させた。(のち190千トンに拡大)
一方、東ソーのSM事業は、1971年に中部ケミカル(新大協和石化、大日本インキ化学、協和発酵、日立化成のJV)が 四日市に 80千トンプラントを建設したのに始まり、中部ケミカルの新大協和石化への吸収、90年の新大協和石化の東ソーへの吸収合併で東ソー事業となった。
自社で誘導品を持たない唯一のメーカーで、大日本インキ化学のPS向けに供給していた。
産構法終了に伴い、両社はそれぞれSM の増強を計画、1988年に合弁で日本スチレンモノマーを設立した。
(当時は大型化のため、共同生産するのが一般的であった。)
工場は1990年に生産を開始したが、1992年に昭和電工が参加した。
昭和電工は住友化学との合弁の日本ポリスチレン工業でPS事業を行っていたが、原料のSMは同社が5.24%出資する日本オキシランから購入していた。(当時の日本オキシランの他の株主はARC0 50%、住友化学 44.76%)
昭和電工は工場が隣接し、エチレンを供給している日本スチレンモノマーに出資し、自社枠のSMを日本ポリスチレン工業に供給することとしたもの。
注)日本ポリスチレン工業は住友化学と昭和電工のJVで、1995年に実質解散
現在の日本ポリスチレン㈱は住友化学と三井化学(当時は三井東圧)の事業統合会社で、1997年設立。
しかし、昭和電工は1994年にPS事業を旭化成に譲渡し、SM事業(日本スチレンモノマー、日本オキシラン)からも撤退した。
東ソーは1998年9月末に四日市事業所のスチレンモノマープラント(130千トン)の操業を停止した。
アジア各国でSMプラントの新増設が相次ぎ、また、経済混乱の影響などで需給バランスが崩れ、市況は大幅に下落しており、事業収益改善の可能性が極めて困難であると判断した。
しかし、日本スチレンモノマーでの事業を引き続き継続するとした。
本年3月の日本スチレンモノマー株式売却で、SM事業から完全に撤退する。
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日本の会社別 SM能力(2007年12月末時点)は以下の通りとなる。(単位:千トン/年)
会社名 | 能力 | 備考 |
旭化成 | 678 | 水島 |
出光興産 | 550 | 千葉 210、徳山 340 |
日本オキシラン(住友化学) | 520 | 千葉412、千葉スチレンモノマー 270x40% |
新日鐵化学 | 422 | 大分2系列 |
電気化学工業 | 402 | 千葉 240、千葉スチレンモノマー 270x60% |
三菱化学 | 371 | 鹿島 |
太陽石油化学 | 335 | 宇部(三井化学から買収) |
合計 | 3,278 |
過去の能力推移グラフ 2008/3/26 主要石油化学製品生産能力調査
スチレンモノマー業界の変遷 2006/4/22 スチレンモノマー業界
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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