BASFがCiba買収へ

| コメント(0)

BASFは9月15日、スイスの特殊化学薬品メーカー Ciba を買収する意向だと発表した。
Cibaの経営陣は株主に対して、この買収提案を受け入れるよう要請している。臨時株主総会を開催する。

買収価格は1株につき50フランで、この価格は12日の終値の32%増しで、発表前30日間の平均の60%のプレミアムとなる。
負債などを含め、61億フラン (約5700億円) の買収となる。

BASFでは、買収によりスペシャリティケミカル分野を拡大し、主導的地位を高めるとしている。

プラスチック分野ではCibaの添加剤は、特にUV安定剤や酸化防止剤でBASFの事業を強化する。
Cibaのコーティング機能材もBASFの既存事業を拡張する。
製紙化学品では両社が事業を行っているが、Cibaの事業は収益性維持に苦労しており、両事業を統合し、マーケットリーダーになるとともに、抜本的リストラが可能となる。
水処理剤ではCibaは強い立場にたっており、BASFの事業を強化する。

また、特に水処理剤ではCibaの事業により開発途上国での活動を拡大できる。
研究開発面でも補完効果が期待できる。

買収提案に当たり、BASFスイスの製造基地とR&D を維持することを約束している。

Cibaは長年にわたって経営難にあり、その将来をめぐりさまざまな噂が立っていた。ここ数日は、マイヤー会長の辞任の噂が流れていた。

Ciba取締役会と経営委員会は、スペシャリティケミカル分野での構造変化、特に業界再編の動き、及び事業展開のシフトとそれに伴うリスクを勘案して、買収提案に賛成するとしている。

Cibaは、「プラスチック添加剤、コーティング機能材、製紙・水処理剤における卓越したイノベーション能力とアプリケーションの専門的知見を通して、スペシャライズド・ケミカル・エンジニアリングの分野で、BASFの戦略とオペレーションを強化する。」とし、「同時に、BASFのグローバルな研究、生産、マーケティング基盤とともに、重要な原材料および中間体についての統合は、Cibaにとって大きなメリットとなる。両社は、これまで長期にわたり、広範囲なサプライヤーと顧客の関係を維持してきた。」と述べている。

ーーー

BASFは昨年来、買収を検討している。

新聞報道では、買収相手として、W. R. Grace や、米国のスペシャルティケミカルのRockwood、ドイツのスペシャルティケミカルの Cognis も候補に上がっているとされていた。

    2008/8/1 BASFがW. R. Grace 買収? 

ーーー

Cibaは旧称 Ciba Specialty Chemicals で、2007年に改称した。
Specialty Chemicals メーカーの枠を超え、その周辺の技術や専門知識、サービスを含めて、顧客に「Value beyond chemistry(化学を超えた価値)」を届けるという、設立当時からのスローガンに近づくことを目指した。

Ciba は合成染料を中心に発展、医薬品、合成樹脂、農薬、写真機材などで事業を拡大した。
Geigy はコールタール染料、医薬品、さらにDDTの発明を機に農薬にも進出した。

CibaとGeigy は1970年に合併してCiba Geigy となり、1992年にCibaと改称、1997年1月にSandozと合併し、生命科学分野に特化したNovartis となった。
同年3月、Specialty chemical 分野(添加剤、コンシューマーケア、ポリマー、顔料、染料)は独立し、Ciba Specialty Chemicals として発足した。

Sandozから分離したClariant とCiba Specialty Chemicals は1998年11月に合併の合意をしたが、同年末までに破談した。

なお、Novartis は2000年に種子事業を分離、AstraZeneca の農薬部門と統合し、Syngenta を設立している。

 

Ciba の2007年の部門別損益は以下の通り。(単位:百万スイスフラン)

  売上高 営業損益
Plastic Additives  2,161  306
Coating Effects  1,837  195
Water&Paper Treatment  2,525  90
全社    -157
Total  6,523  434

  1スイスフランは約95円


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


コメントする

月別 アーカイブ