2007年7月、Hexion Specialty Chemicals (投資会社Apollo Management の100%子会社)が、借入金込みで106億ドルで Huntsman を買収する契約を締結した。Basellとの契約を破棄しての契約締結であった。
Hexionは本年6月18日、この買収契約が実行不能であると宣言する訴えを裁判所に提出したと発表した。損害賠償や違約金の義務がないという決定を求めるもの。
Hexion は、Basell の買収契約(1株 25.25ドル)を破棄させ、1株28ドルで買収したが、これはサブプライムローンの問題が表面化して世界的な信用収縮不安で投資家がリスク資産から資金を引き揚げる動きが始まる直前、バブルのピークの時点での買収であった。
アナリストは、今の状態なら、$13 ~$15が妥当だろうとしている。
Huntsman の株価はHexionの発表を受け、$12.50から $8.36 に下落した。
これに対して、Huntsman は、合併を邪魔したとしてHexionの親会社のApollo Management をテキサス州法廷に訴えた。
2008/6/28 ニュースのその後
Hexion が買収契約を破棄できるかどうかを決める裁判の日程が9月8日に決まった。
この裁判を前に、ヘッジファンドがこの買収を助ける動きに出た。
Citadel Investment Group、D.E. Shaw & Co.、Matlin Patterson Global Advisors、Pentwater Growth Capital Management Citadel が共同でHexion Specialty Chemicals と親会社のApollo Management に以下の提案を行なった。
・ Huntsman のオーナー一族と共同でHexion に 5億ドルの融資を行なう。 ・ 融資はContingent Value Rights (CVRs:不確定価額受領権)の形で行なう。
これは合併会社が一定のハードルを超えた場合にのみ、返済義務が生じる。
今回は累積年間利益率を20%に設定する。これ以下の場合は返済は不要となり、結果として買収金額の一部の無償補填となる。 ・ 5億ドルのうち、各社は合計で245百万ドルを、Huntsman 一族が186百万ドルを、残り69百万ドルを他の株主が拠出する。 ・ Hexion はこの提案を9月15日までに受諾するのが条件。 また、合併が当初の条件で成立するのが条件となる。 http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1294704/000095012308010363/y66919exv99w4.htm
Citadel はHuntsman 株を18.6 百万株、D.E. Shaw は21.7 百万株、Pentwater は1.9 百万株を所有している。
Citadel とD.E. Shaw は本年8月に株価が下がってから購入している。
Matlin Patterson は投資会社で、Hexionとの取引でHuntsman 側で働いた。
Huntsman 一族を含め、本買収が成立すれば、Huntsman 株主として大きな利益が得られる。
仮に合併会社がうまくいかず、ハードルを超えられずに5億ドルの返済が受けられなくとも、元は取れるという算段である。
これに対して、Hexion は8月28日、以下のコメントを出した。
Hexion としては、これら株主の努力には感謝するが、昨年7月の買収合意以降のHuntsman の借入金の増加と収益の低下のため、この提案を受けても、合併会社としては破産を避けられない状況にある。
Hexion がDuff & Phelps に依頼して作成した合併会社の分析では倒産必至であるが、Huntsman がこの情報を株主に公開するのを2ヶ月も拒否している。これを見てもらえれば、理解が得られると思う。
我々は買収契約の修正を求めているのではなく、契約の終了を求めている。
おそらく裁判での決着となろう。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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