英国のMMAメーカーのLucite International の売却が噂に挙がっている。
同社は投資会社のCharterhouse Development Capital が78%、Ineos が残り22%を出資している。
同社筋によると、同社の取締役会は戦略的レビューを行なっており、Deutsche BankとMerrill Lynch が、売却や上場など、いろいろなオプションを検討する。
同社は以前にも事業売却を検討したが、価格が折り合わなかった。年末にシンガポールのAlpha technology (下記)の新工場がうまく立ち上がるのを待って、希望価額での売却か、又は上場を狙うもの。
銀行筋は売却先の最有力候補はLucite と提携関係にある三菱レイヨンとしている。同社は以前に買収の打診を行なったとされる。
そのほか、MMA事業を持つRohm & Haas を買収したDow Chemical や、BASF、MMA事業を持つ旭化成も噂に挙がっている。
売却価額は13億英ポンド(25億米ドル)程度とされる。
付記
9月7日のFinancial Times はLucite が三菱レイヨンとサウジのSipchem から20億ドルでの買収提案を受け取ったと伝えた。
Lucite はシンガポールのアルファ法プラント完成を待って売却する意向であったが、2社はそれを待たずに提案した。三菱レイヨンは下記の通り、Lucite と提携している。
Sipchem は第三段階の計画で、いずれもLucite技術を導入して、
ANM 200千トン、MMA 250千トンを事業化する。
(エチレン、PE、PPは取り止め)2008/2/29 サウジ Sipchem の石油化学計画
付記
10月31日の英紙は、三菱レイヨンが近く10億ポンドで買収する模様と伝えた。
2008年7月初めには210円/ポンドであったが、11月上旬には155円/ポンド程度となっており、2100億円が1550億円に下がることとなる。
付記
三菱レイヨンは11月11日、ルーサイト買収を発表した。
Ineos 持分を含め 100%を、16億米ドル(外部借入金引受を含む)で買収する。
Lucite の前身はICIのMMA事業である。
ICIは1934年に世界で初めてMMAの商業生産を行なった。
ICIは1993年にDuPont のMMA事業をナイロン事業との交換で取得した。
ICIは1997年に事業の転換を決定、Unileverの特殊化学品4社を買収するとともに、既存事業を次々に売却した。
その一環でMMA事業はCharterhouse Development Capital と Ineos の連合に 960百万ドルで売却された。
2006/3/7 ICIの抜本的構造改革
新しいMMA会社は当初 Ineos Acrylics として発足したが、その後2002年に、現在のLucite International に改称した。
Lucite は世界のMMAの25%のシェアを持ち、売上高は15億ドル。
MMAの生産方法は昔からのACH法(アセトン+青酸)、日本メーカーの開発した直酸法(イソブチレン+メタノール)が中心だが、Lucite はエチレンを原料とするAlpha technology を開発した。
同社は上海にACH法で10万トンのプラントを建設したが、下記の通り、シンガポールで新法による能力12万トンのプラント建設を行なっている。2008年末に稼動の予定。
2006/4/13 MMA事業の拡大
(日本のメーカーの動きも上記参照)
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2005年6月、Lucite と三菱レイヨンはMMA事業での提携契約を締結した。
両社は投資を分担し、相互に製品を供給すること、将来両社工場をJVとするための検討を行なうこととした。
1. 北米 建設: 三菱レイヨン
場所: テキサス
規模: MMA及びMAA(メタクリル酸)14万トン
製造法: C4法
時期: 2009年末完工、2010年商業運転
2. アセアン 建設: Lucite International
場所: シンガポール
規模: MMA12万トン
製造法: アルファ法(C2法)
時期: 2007年末完工、2008年商業運転
付記 MMAモノマー能力 (三菱レイヨン 第6次中期経営計画より)
全世界シェア
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