ジェネリック医薬品の世界最大手、日本進出

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ジェネリック医薬品の世界最大手のイスラエルのTeva Pharmaceutical Industries Ltd. が日本市場に本格参入する。

Teva Pharmaceutical 924日、日本で興和との折半出資会社を設立して、日本市場に本格参入すると発表した。
合弁会社は興和テバ(Teva-Kowa Pharma Co., Ltd.)で、両社の研究開発、製造、物流、マーケティングの力を合わせ、日本市場で高品質のジェネリック医薬品の供給を行なう。
2009年から営業を開始し、2015年に売上高10億ドル(約1000億円)を目指す。

Teva Pharmaceutical 2007年の売上高は 9,408 百万ドル(約1兆円)。
うち、北米が
5,428百万ドル、欧州が2,645百万ドル、その他が1,335百万ドルとなっている。
世界中に
28千人の従業員を抱え、イスラエル、北米、南米、欧州で生産している。
同社は更に
20087月に、米国のBarr Pharmaceuticals を買収している。

因みに、日本のジェネリック最大手の沢井製薬の20083月期の業績は、売上高が376億円、営業損益が40億円、当期損益が17億円となっている。

興和は多種類の事業を行っている。
  医用関連機器
  繊維・ファッション
  生活材・産業用素材
  医薬品・ヘルスケア品
  レンズ・望遠鏡 
  医用関連機器
  IT・映像・放送

医薬品では、キャベジンコーワ、コルゲンコーワ、キューピーコーワゴールドなどが知られている。

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2006年の世界のジェネリック企業ランキングは以下の通りで、Teva は圧倒的首位である。(単位:百万ドル)
2007年以降、これら各社にも大きな動きがある。

順位 企業 売上高 備考
1 Teva Pharmaceutical イスラエル 8,410 Barr Pharmaceuticals を買収
2 Sandoz ドイツ 5,960 Novartis generic 部門 
3 Merck ドイツ 2,400 Mylan generic 部門を買収
4 Ratiopharm ドイツ 2,210
5 Watson Pharmaceuticals アメリカ 2,000 Andrx を買収 
6 Actavis Group アイスランド 1,850
7 Stada Pharm ドイツ 1,620
8 Mylan アメリカ 1,600 ドイツMerck のgeneric部門買収
インド Matrix Laboratories 71.5%を買収
9 (Barr Pharmaceuticals) アメリカ 1,590 Teva Pharmaceutical が買収
10 Dr. Reddy's Laboratories インド 1,510
11 Ranbaxy Laboratories インド 1,340 第一三共が買収

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日本では2008年4月に処方箋様式の再変更が行なわれるなど、医療費削減のためのジェネリック医薬品使用促進策が打ち出されており、普及が急速に進む可能性がある。

現在、後発薬の金額シェアは約5%で市場規模は年間4千億円前後だが、今後4、5年で1兆円超にまで拡大する見通し。

日本でもジェネリック医薬品分野で動きが出始めた。

1)2007年4月 インド Zydus Cadila が日本ユニバーサルを買収

Zydus Cadila は日本ユニバーサル薬品の全株式を買収した。
日本ユニバーサルと取引がある医薬品卸を通じて全国に4千カ所ある製品納入先の医療機関に販路を広げ、ザイダスの後発薬を売り込む。

2)2007年10月 インド Lupin Limited共和薬品工業の株式の過半数を取得

Lupin は研究注力型のジェネリック企業で、プネ市に最先端の研究所を有し、抗結核薬及びセファロスポリン(抗感染症)、CVS(心血管系)のグローバル・リーダー。
両社は2005年8月か
らジェネリック医薬品に関する協力契約を締結し、共同開発を推進してきたが、より密接な関係を構築する。
共和薬品では、日本市場における主導的立場を担うために邁進すると共に、Lupinと共に
グローバル戦略を積極的に推進するとしている。

3)2008年5月、田辺三菱製薬が長生堂製薬と資本業務提携

田辺三菱製薬は、2008年4月にジェネリック医薬品のプロモーション及び販売会社として田辺製薬販売を設立した。

今回、長生堂製薬の株式の過半数を取得し、包括的な業務提携を行なって、この分野で豊富な事業経験と基盤を有する同社の製品ラインナップ、営業・生産基盤と、田辺三菱製薬の事業基盤を融合し、この分野のリーディング企業を目指す。

4)2008年6月、第一三共がインドRanbaxy Laboratories を買収へ

第一三共はインドのRanbaxy Laboratories Limited 50.1%以上を取得する契約を締結し、TOBを実施した。

同社の狙いは以下の通り。

売上高の増大と今後の成長機会の確保
 「先進国市場+新興国市場」「イノベーティブ+ロングセラー」の双方を視野に入れた「複眼経営」へ
新興市場への足がかりの獲得
コスト競争力
研究開発力

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インドではジェネリック医薬品が主要産業の一つとなっている。

インドでは1971年以降、「物質特許」がなく、「製法特許」のみであったことも影響している。
(2005年にWTOの要請を入れて特許法を改正し、物質特許を35年ぶりに復活した)

世界大手がインドに進出すると同時に、インド勢は海外に進出している。

Dr. Reddy's Laboratories は2006年にドイツの betapharm を買収、
20084には BASFが米国ルイジアナ州に保有する委託製造事業部門および関連施設を買収した。

Ranbaxy も2006年3月にルーマニアのTerapia  324 百万ドルで買収、欧州進出への足がかりとしている。


* 総合目次、項目別目次は
 http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。

  各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。


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