イグ・ノーベル賞(The Ig Nobel )の第18回授賞式が10月2日夜、米ハーバード大学サンダース・シアターで催された。
Cognitive Science Prize(認知科学賞)に北海道大学の中垣俊之准教授、広島大学の小林亮教授、東北大学の石黒章夫教授ほかが受賞した。
2000年9月のNature に掲載された "Intelligence: Maze-Solving by an Amoeboid Organism" が受賞の対象。
北大のホームページに中垣准教授の研究アクティビティーとして
「不思議なアメーバ生物粘菌に学ぶ賢い計算法~ネットワークの設計を例題として~」
が載っている。これが受賞対象。
粘菌類である「モジホコリ(Physarum polycephalum)」の変形体(アメーバ状の原形質の塊で多核である)を小さく分けて、3cm四方の迷路に置くと、広がって互いに合体し、入り込める空間すべてを埋める。(図の左)
しかし、迷路の入口と出口に食物を置くと、モジホコリの変形体は「体」を行き止まりから離して、入口と出口を結ぶ最短の道をつなぐ形になる。(図の右)
真正粘菌変形体という巨大なアメーバ様生物は、単細胞生物にもかかわらず迷路の最短経路を探し当てることができるのだ。粘菌の賢さは果たしてどれほどだろうか? 脳も神経もないのにどうやって答えを導き出しているのだろうか? 私たちは、この不思議な生物粘菌の底知れぬ計算能力を解き明かし、さらにその計算方法を学ぶことを目指している。 <p><p><p>HTML clipboard</p></p></p>
最終的には粘菌に学んだ計算方法を利用して現代社会のインフラ基盤である通信網・道路網・上下水道網などのネットワークの新しいデザインに役立てたい。
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受賞あいさつで、中垣氏が「日本の辞書で単細胞は頭が悪いと書かれているが、単細胞はわれわれが考えてきたよりずっと賢い」と話すと、数百人の観客から拍手と歓声を浴びた。
2008年の他の受賞者は以下の通り。
○栄養学賞:「同じ食べ物でも、名前の聞こえが良い方がおいしく感じる」ことを示したイタリア・トレント大学のMassimiliano
Zampini と英オックスフォード大学のCharles Spence。
論文:"The
Role of Auditory Cues in Modulating the Perceived Crispness and
Staleness of Potato Chips"
○平和賞:「植物にも人間と同様に尊厳がある」ことを法的に定めた、スイスの人間以外の生物工学に関する連邦倫理委員会とスイス国民。
○考古学賞:考古学の発掘現場付近に生息するアルマジロが、発掘品をより深く埋めたり持ち去ったりすることで、発掘現場がメチャクチャになるだけではな
く、歴史が変わってしまう可能性があることを示した、ブラジル・サンパウロ大学のAstolfo
G. Mello AraujoとJosé Carlos Marcelino。
論文:
"The Role of Armadillos in the Movement of Archaeological
Materials: An Experimental Approach"
○生物学賞:「イヌに寄生するノミは、ネコに寄生する個体よりも、より高く飛ぶことができる」ことを発見した、フランス国立トゥールーズ獣医大学のMarie-Christine
Cadiergues、Christel Joubert、Michel Francの3氏。
論文:"A
Comparison of Jump Performances of the Dog Flea, Ctenocephalides
canis and the Cat Flea, Ctenocephalides felis felis"
○医学賞:「高価な偽薬(プラセボ)は安価な偽薬よりも効果が高い」ことを確認した米デューク大学のDan
Ariely行動経済学教授。
「何かを期待すれば、人間の脳はそれを実現させるよう働く」と述べ、価格が安い後発医薬品「ジェネリック医薬品」も、名前と値段を変えれば高い効果が上がると主張している。
論文:
"Commercial Features of Placebo and Therapeutic
Efficacy"
○経済学賞:プロのストリッパーの排卵周期が、チップ収入に影響を与えることを発見した米ニューメキシコ大学のGeoffrey
Miller、Joshua Tybur、Brent Jordanの3氏。
ストリッパーが最も稼ぐのは、生殖能力が最も高い時期であるという。
論文:
"Ovulatory Cycle Effects on Tip Earnings by Lap Dancers:
Economic Evidence for Human Estrus?"
○物理学賞:大量の糸や髪の毛は、外部要因がなくとも必ず絡まることを数学的に証明した、スクリップス海洋研究所のDorian
Raymerと、米カリフォルニア大学サンディエゴ校のDouglas
Smith。
論文:"Spontaneous
Knotting of an Agitated String"
○化学賞:「コカ・コーラの避妊効果」についての研究で、ボストン大学医学部のDeborah
J. Anderson 教授ほか、ならびに台湾の台北医科大学の研究グルー
プ。
アンダーソン教授らはコーラが避妊薬として利用されていたことから研究に着手。その後、エイズウイルスの感染を防ぐ効果もあることも突き止めたと
している。特にダイエット・コークの避妊効果が最も高かったという。
論文: "Effect of 'Coke' on Sperm Motility"
台北医科大学の研究は「効果がない」と、全く正反対の結果となっている。
論文:
"The Spermicidal Potency of Coca-Cola and Pepsi-Cola"
○文学賞:「バカ野郎:物語的手法を用いた、組織内で経験した憤慨についての分析」研究で、英カス・ビジネス・スクールのDavid
Sims。
論文:
"You Bastard: A Narrative Exploration of the Experience of
Indignation within Organizations"
参考 2006/10/13 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞
2007/10/8 2007年イグ・ノーベル賞
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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