2007年7月、Hexion Specialty Chemicals (投資会社Apollo Management の100%子会社)が、借入金込みで106億ドルで Huntsman を買収する契約を締結したが、Hexionは本年6月18日、この買収契約が実行不能であると宣言する訴えをDelaware の裁判所に提出したと発表した。損害賠償や違約金(325百万ドル)の支払義務がないという決定を求めるもの。
これに対して、Huntsman は、合併を邪魔したとしてHexionの親会社のApollo Management をテキサス州法廷に訴えた。
2008/9/2 Hexion によるHuntsmanの買収問題、新展開
Hexion が買収契約を破棄できるかどうかを決める裁判が9月8日から始まった。
Huntsman のCEOは裁判で、以下の通り主張した。 | |
・ | 買収によるこの合併は両社にとりメリットがあるもので、合併会社は負債は増えるものの、十分やっていける。 世界最大のスペシャルティケミカル企業の一つとなり、グローバルな存在で、購買力も増える。 |
・ | (Hexion 側が、シナジー効果は250百万ドル程度に過ぎないとしたのに対し、)個別で運営するよりも400百万ドル以上のメリットがある。 |
・ | Huntsmanの業績悪化は原料価格高騰と外貨の交換比率のためであり、ポリウレタンなどのコア事業は非常に強いポジションにある。 |
9月29日、デラウエア州裁判所は、Huntsman 勝訴の決定を下した。 | |
・ | 買収を取り止める根拠はない。 |
・ | Apollo とHexionが求めていた損害賠償や違約金(325百万ドル)の義務免除を否定。 Hexion が契約を実行しなければ、325百万ドルの違約金以上の賠償義務を負う。 |
・ | Hexionに対して最善の努力をして合併契約を遂行するよう命じ、Hexion が義務を果たしたと裁判所が認めるまで、契約の終息期日を延長。 |
・ | 更に、Hexionが契約のなかの多くの義務を意図的に果たしていないと認定。 |
Huntsmanは30億ドルを超える損害賠償を求めたテキサス州での裁判を継続するとしている。
この結果を受け、同社の株価は72%上昇した。
Hexion は判決を検討するとしているが、合併を専門とする法律家は控訴しても逆転は難しいだろうとしている。
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Huntsman は9月30日、買収資金を供給する契約を結んでいたCredit Suisse とDeutsche Bank を訴えた。
両行が Apollo と組んで、Huntsmanがその前にBasell と締結した買収契約を邪魔し、更にHexion との間の買収契約も邪魔して、自らの利益のためにHuntsman の権利を侵害したというもの。
同日午後テキサス地裁は、裁判の結果が出るまでに両行が融資契約を打ち切れば、取り返しのつかない害を与えるとして緊急差し止め命令を出した。
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Hexion は、Basell の買収契約(1株 25.25ドル)を破棄させ、1株28ドルで買収した。
これはサブプライムローンの問題が表面化して世界的な信用収縮不安で投資家がリスク資産から資金を引き揚げる動きが始まる直前、バブルのピークの時点での買収であった。
アナリストは、今の状態なら、$13 ~$15が妥当だろうとしている。
Huntsman の株価は本年6月のHexionの買収取止め発表を受け、$12.50から $8.36 に下落した。
今回の判決後に $12.60 になった。
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付記
Hexion Specialty Chemicals は10月2日、Huntsman との合併に関して、米国及びEUの承認を得たと発表した。
FTC はHexion が特殊エポキシ樹脂の一部をチェコのSpolchemie に売却したのを受け、承認した。
EUもこれを条件として承認していたが、今回のSpolchemieへの売却を承認した。
チェコの合成樹脂メーカーのSpolchemie は9月19日、Hexion の特殊エポキシ樹脂事業の購入契約の締結を発表した。
ドイツのStuttgart と Duisburg の製造設備、米国のArgo, Illinois とNorco, Louisiana の工場及びHouston のResearch Center を購入する。
Hexion の会長兼CEO は「合併に必要な独禁法上の承認が取れて喜ばしい」と述べた。
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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