政府は10月23日、メーカーや商社が、化学物質を一定量以上を製造、輸入した場合、量や用途届け出を義務付けることを決めた。
産業構造審議会、厚生科学審議会、中央環境審議会のそれぞれの下部組織で編成する「化審法見直し合同委員会」は23日に合同会合を開いて意見を交わした結果、《2010年に向けた化審法の新体系》と題する政府に対する報告書案をまとめた。
経済産業、環境、厚生労働の3省では10月下旬~11月上旬に関係者や一般市民から同案についてのパブリック・コメントを求め、そこで得られた意見も踏まえて最終報告書を取りまとめ、化学物質審査規制法(化審法)改正案を来年の通常国会に提出し、2010年度からの導入を目指す。
現在、届け出義務のある化学物質は約1000種だが、新たな規制では、有害な影響を最小化する「予防原則」の考え方を取り入れ、監視対象を約2万種あるすべての化学物質に拡大する。
一定量以上の化学物質を製造・輸入する企業に対し、製造・輸入量や用途を記録し、毎年度末に報告する義務を課す。
その上で、環境中への排出が多いものや、長期的な安全性などが確認されていない物質を「優先評価化学物質」に指定し、さらに詳細な安全性評価を求める。
新たな規制の導入で、報告が義務づけられる企業は、化学メーカーや商社、自動車、電機など大幅に増える見込みで、経産省の試算では、手続きなどで企業に新たにかかる費用は、2020年までに少なくとも総額40億円という。特に中小企業にとっては負担となる。
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2002年8月26日から9月4日まで、南アフリカ共和国のヨハネスブルグで国際連合により「地球環境問題に関する国際会議」(World Summit on Sustainable Development :WSSD)が開催された。
ここで、化学物質管理に関する世界共通の中長期的目標として、「2020年までに、全ての化学物質を健康や環境への影響を最小化する方法で生産・消費する」ことが決議された。
更に、そのための行動の一つとして、「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ」(Strategic Approach to International Chemicals Management:SAICM)を取りまとめ、2006年に国連環境計画(UNEP)において承認された。
化審法改正はこの合意を受けたもので、EUは2007年6月、「REACH」による新規制をスタートさせ、すべての化学物質の有害性調査を企業が行うことを義務付けた。
化学物質規制
法律 | 規制対象化学物質 | 安全性評価主体 | |
EU | REACH | 新たに製造される新規物質と 既に使用されている既存物質 |
企業 |
米国 | 有害物質規制法 (TSCA) |
新規物質 必要に応じ既存物質 |
国 |
日本 | 化審法 | 原則として新規物質のみ | 国 |
改正 | 新規物質と 既存物質 |
国 |
日本の化学物質審査規正法(化審法)は1973年にカネミ油症事件をきっかけとして制定された世界に先駆けた化学物質規制の枠組みで、 | |
・ | PCB等の有害な化学物質による環境汚染の防止を目的 PCBと同様、難分解であり高蓄積性を有し、長期毒性を有する化学物質を特定化学物質(第一種特定化学物質)に指定 |
・ | 化学物質に関する事前審査と規制の2本柱 新規化学物質の事前審査制度、製造、輸入の許可制、使用に係る規制 |
・ | 農薬・医薬品等の特殊な化学物質は対象外(他法令に基づく規制との整理) |
となっている。 |
その後、難分解性及び長期毒性を有するにもかかわらず蓄積性を有さない物質についても、環境中での残留の状況によっては規制の必要性が生じたことから、1986年改正で、第二種特定化学物質の制度が導入された。
さらに2003年改正で、動植物への影響に着目した審査・規制制度や環境中への放出可能性を考慮した審査制度が新たに導入された。
現在の対象は、化審法の公布以後、新たに製造・輸入される新規化学物質(年間300~400物質、延べ1120種)で、製造、輸入、使用に関する国への届け出を義務付け、企業が被害情報を得た場合も報告するよう定めている。
化審法の公布時(1973)に既に製造・輸入が行われていた化学物質(約2万物質)については同法の附帯決議により、国が安全性の点検を実施することとしており、これまで以下の点検を実施した。
分解性・蓄積性:1455物質(経済産業省)
人毒性:275物質(厚生省)
生態毒性:438物質(環境省)
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REACHについては、
2006/12/18 EU、化学物質新規制「REACH」施行へ
2007/6/4 REACH 発効
* 総合目次、項目別目次は
http://kaznak.web.infoseek.co.jp/blog/zenpan-1.htm にあります。
各記事の「その後」については、上記目次から入るバックナンバーに付記します。
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